出版甲子園に行ってきました ゲスト:岩崎夏海さん
大学生が本の企画をし、その企画の質を競う「出版甲子園」というイベントを見に行きました。その紹介と感想を書きたいと思います。
この出版甲子園の審査員はプロの編集者と書店員で、編集者の目にとまった企画は実際に書籍化のチャンスがあります。
過去には、
などが出版され、
マジでガチなボランティアは映画化までされ、同内容が別に再度映画化( 僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia. )されています。
そんな夢のある大会です。今回で7回目です。(僕が見に行ったのは初めてです。)
審査員は豪華で、角川書店、講談社、集英社、紀伊国屋書店、リブロなどと一流の出版社や書店から集まっています。
ゲストには「もしドラ」こと、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の著者である岩崎夏海さんが来ていました。
学生からの企画は12作品が登場しました。
学生本人によって企画のプレゼンが行われ、審査員からの質問、岩崎さんからの意見をいただくという形で進みました。
この中でいくつか面白いなと思ったものを紹介してみます。
※勝手に要約します。
『大日本トイレ奇譚』 藤原文味子
周りの友達が充実した大学生活を送る中、自分は何もしていないのではないか。そう焦燥感に駆られて生活していた。ふと大学のトイレに入ったとき、1つの落書きが目に入ってきた。
「トイレには神様がいるんやで」
ご存知、上村花菜のトイレの神様の一節だ。ぷっと吹き出して笑ってしまうと同時に、塞ぎ込んでいた気持ちがなぜか晴れた。そうだ、トイレには自分の居場所があるんだ。そこからトイレを徹底的に巡ることにした。
という感じで、全国の変なトイレを巡ったそうです。で、最後は実家のトイレ。実家のトイレにはお札と仏様の絵が飾ってあり、その意味をおばあちゃんに聞いて締める。
『実録!「肉食合コン」のすべて』 村瀬さつき
テーマは「ヤ○○○に光を!肉食女子大生に光を!」
「肉食合コン」とは、聖心女子大学・フェリス女学院大学・白百合女子大学の「スーパーお嬢様」女子大生と、大手広告代理店・外資系金融企業など「エリートサラリーマン」による、西麻布界隈の会員制カラオケ店や、六本木のバーで行われる、彼氏彼女関係になることを目的としない、合コンのこと。(企画発表者談)
村瀬さんは肉食合コンに約100回参加してきたそうだ。それで自分が変わったこと、それはヤ○○○になった、ということだ。周りの子も初めは、インターンシップ的な動機であったり、自己実現のためであったり、単純にエリートな人に近づきたいという気持ちな人も多かった。しかし結局はほとんどみんな単に享楽のために生きる、ヤ○○○になった。
当本人だからこそ分かる実体験をまとめる。社会に肉食女子大生の存在を知ってもらい、過剰な期待にさいなまれる肉食女子大生に勇気を与えたい。
『世界一の紙芝居屋ヤッサンの「人生を貫く7つの心」』 高田真理
高田さんは京都大学理系院生。研究に明け暮れていたある日、紙芝居屋のヤッサンに出会う。ヤッサンの紙芝居道に惹きつけられた高田さんは弟子入りを決意。休日はヤッサンに師事し、紙芝居に取り組んでいる。
師匠のヤッサンは紙芝居歴40年で、国内外で活躍する。年商は水あめで1500万円に上っている。長年培った紙芝居道から人生への鋭いメッセージを持っている。
他には、
『100年愛されたヒロインがあなたに贈る、恋の処方箋』
『しゃべくり英文法』
『初恋訳 孫子の兵法入門』
『新・現代社会の教科書 ~東大教授のアタマの中をのぞいてみよう~』
『無能の就活 ~人事に体を売らないで!資格も実績もいらない内定理論~』
『国境のはざまで生きる ~一番身近な「難民」のはなし~』
『アイディアがあふれてとまらない脳みそをつくる イスラエル式発想の練習ノート』
『性犯罪に負けない』
『目が覚める科学』
編集者や書店員、岩崎夏海さんからのコメントいろいろあったのですが、その中で抜粋・まとめて紹介します。
1.自分がすごいと思っても、それはみんなが思うすごさなのか
自分が「これはすごい!」と思っても、本当にはそれはすごいことなのか、客観的に考え直す必要があります。
例えば、「東大教授」と言われた場合、大学生はすごいと思うでしょう。しかし世間の大人から見れば、東大の先生なんてなんぼのもんじゃい、とか思っている人が多いかもしれません。さらには、出版という世界は比較される範囲に制限はありません。東大教授よりも、スティーブ・ジョブスであったり、武田信玄、ナポレオンなどといった方の思考法を知りたいと思うのが当然です。
自分が所属するグループの感性から一歩外に出ましょう。
2.とりあげたい問題は世間からどう思われているのか
自分が「これは大事だ、みんな知っておくべきだ」と思っても、それは本当に大切にすべきことなのか、客観的に考え直す必要があります。
例えば、日本に難民が来てもほとんどが認めらずに、自国に強制送還されるか、施設に閉じ込められている、という問題があります。
自分がこれはいけないことだ、もっと難民として認めるべきだ、と思っても、世間の人にはどんな意見があるのか、考えてみます。すると、外国から来た人を難民として受け入れてしまうときに起こる問題や、そもそも施設での生活費用は税金で賄われている、という着眼点もあることに気づくはずです。
もちろんもし難しいテーマの本を出す場合、こういった批判が起こるのは防ぐことできませんし、反応をコントロールすることは不可能です。でも、初めにこういった意見もあると認識してから書けば、より押し付けではない、納得しやすい論になります。
3.本は買うもの、商売のものだということを認識する
人は取り上げているテーマが大事だと分かっていても、実際に買うのには勇気がいることです。あまりにも問題を主張して、問題が重くなっていればなかなか買うことはできません。
また、主張したいテーマがあっても、本として書店に並ぶときには、「商売」という風に見られてしまいます。
印税を寄付するなどしないと、どうせ商売なんだろうと思われてしまい、誤解されてしまうこともあります。
4.本というメディアであることを考える
なぜ本でしたいのだろうか、ということを考える必要があります。紙でするということは、音声や動画にはないメリット、また反対にできないことがあります。
例えば、発音の参考書を作った場合、こちらからの発音はCDを付録すれば渡すことはできます。しかし、読者が実際に学習してもその発音が合っているかどうか調べることはできません。
岩崎夏海さんの哲学
岩崎さんの著書に難癖をつけてきたり、批判をする人もいます。よく人はそんなのを気にしてはいけないなどと言います。しかし、岩崎さんはちゃんと向き合うべきだと言っていました。
エンターテイナーとしてある作家は、お客さんを満足させるためにちゃんと向き合う必要がある。お客さんからの意見を無視してしまうことは、非常に高慢なこと。愛情の反対が無関心といわれるように、無関心であってはいけない。
また、岩崎さんはプレゼンする学生にアドバイスをしていたのですが、それが興味深かったです。
企画内容よりも、プレゼンテーションの仕方が重要である。プレゼンが上手ければ、本としてまとめる力もあるはずだと思う。また、質問に答え方が上手ければ、この人と打ち合わせしたい、と思う。
つまり、プレゼンと質問をきちんとできる人と仕事をしたいと編集者は思うのだ。
ホスピタリティのある受け答え、柔軟な受け答えをするとよいと言っていました。
そして、岩崎さんは人とのめぐり合わせが人生で重要だと言います。
人を見る目が必要だと。
ホスピタリティのある人がよいということに同じなりますが、言葉の中身・内容ではなくて、どのように非言語的なコミュニケーションをするか、そこから人を見るべし。
まあ、自分の場合は自分自身がきつい性格なので、心の狭い人は離れていってしまう、自然に周りには良い人だけになると言っていました。笑
ともかく、内容的ではなく、やはりコミュニケーションの質が何においても重要なのだと分かる日でした。
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