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iPhone5人気の陰で…反日デモどさくさと言われた中国暴動工場の「蟹工船」

産経新聞 9月29日(土)15時26分配信

iPhone5人気の陰で…反日デモどさくさと言われた中国暴動工場の「蟹工船」
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「iPhone5」(写真:産経新聞)

 米アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)5」の部品を生産する中国内陸部の工場で9月23日、従業員ら約2000人による大規模な騒乱が発生し、約40人が負傷したと報じられた。当初は「反日デモが飛び火か」とも言われたが、欧米メディアの報道によると、反日デモというよりアイフォーン5の人気による「余波」といえるのかもしれない。

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 騒乱が起きたのは、シャープが資本提携交渉をしている台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の中国子会社、富士康科技(フォックスコン)の太原工場(従業員約7万9000人)。鴻海の説明によると、9月23日午後11時ごろ、工場近くの宿舎で従業員数人による個人的ないさかいが起き、これが2000人を超える混乱に発展した。5000人以上の武装警察隊が鎮圧に当たり、24日午前3時ごろには収拾したが、多数の従業員が身柄拘束されたという。

 ロイター通信によると、鴻海は警察の話として、40人が病院へ搬送され、多数が拘束されたとした。国営新華社通信はそのうち3人が深刻な状況だと報じた。鴻海は声明で、「工場の宿舎で複数の従業員の間に個人的ないさかいが持ち上がり、それがエスカレートして暴動に発展した」と説明した。AP通信によると、新華社は警察の広報官が「野次馬の群衆が発生し、カオス状態となった」と伝えた。ロイターによると、新華社は29歳の労働者の話として「数千人の野次馬がいて、全く制御できなかった。衝突と破壊だけがあった」と話した。

 また、BBC放送によると、太原市当局の高官は新華社に対し、「初期捜査によると、山東省出身の労働者と河南省出身の労働者の間で衝突があった」と語った。BBCによると、フォックスコン社は「いさかいは、仕事とは無関係の理由と思われる」としている。欧米の報道機関が労働者らへ取材した結果によると、事件は別の様相を見せた。ロイターによると、中国版ツイッターと呼ばれ、3億2000万人の登録者を持つミニブログ「微博(ウェイボ)」上で、あるユーザーは「4、5人の警備員が1人の労働者を殴り、瀕死の重傷を負わせた」と書き込んだ。別のユーザーは太原にいる友人の話として、「警備員らが河南省出身の労働者2人をたたいてひどい目に遭わせ、その報復として別の労働者たちがベッドの布に火を放ち、宿舎の窓から投げた」と報告した。

 APによると、ウェイボには壊れた窓や燃やされた車、ヘルメットをかぶり盾やこん棒を持った武装警察官の写真が掲載された。BBCはウェイボ上で、近くの商店が打ち壊され、警察車両が転覆させられた写真が掲載されていると報じた。BBCによると、ウェイボには「暴徒化した労働者たちは、同僚たちを殴った警備員を標的にしていた」との書き込みもあった。ロイターによると、19歳の労働者は背中と手を負傷して入院し、「荒っぽい警備員たちと、労働者をののしる経営者のやり方に腹が立った」と語った。

 ある労働者は匿名を条件にAPの取材に応じ、「フォックスコン社の監督や警備員らはわれわれを尊重しない。われわれはこうした怒りを抱えており、何かを破壊することでしかこの怒りは開放できない」と話したという。フォックスコン社をめぐっては、太原のほか広東省深センなど中国各地にある工場で3年前から従業員の自殺や事故死が相次いだ。米国のNPO法人「公正労働協会」(FLA)が今年初めに調査し、3月にはアップルとフォックスコン社から、数十万人の中国人従業員の労働時間の短縮や給与アップで改善を進めるとの回答があった。

 ロイターによると、香港の労働者人権団体「中国労工通訳」は声明で、「労働者の間に出口のない深い不満と怒りが明らかにたまっている。その不満が解消される出口は、暴力しかない状況だ」と訴えた。「中国では往々にして賃上げと労働条件の改善を求めて低賃金労働者の騒乱が持ち上がるが、太原工場での衝突は、たとえ現場の状況に直接関係するものではなかったとしても、規模と深刻さで特筆に値する」

 ロイターはこう論評した上で、フォックスコン社がどの工場でアップル製品の部品を製造しているか明らかにしていないものの、労働者の一人が「太原工場はアイフォーン5の部品を作っている」と証言したと報道。また、複数の労働者によると6月から生産目標が20%上がったという。ロイターによると、労働運動家のリー・チアン氏は、河南省の省都、鄭州市にある巨大工場がアイフォーン5を製造し、アップルやフォックスコン社が労働時間を週60時間以内に抑えるとしているのに対し、週70時間労働が一般的で、大きなプレッシャーに直面していると話した。

 アイフォーン5が9月21日から米国や日本など世界9カ国で発売され、最初の3日間で500万台が販売される中、需要に生産が追いつかず、中国国内のフォックスコン社の工場へ供給圧力が高まっているとみられる。APによると、鄭州工場の労働者たちは「最近30日間、一度も休んでいない」と話したという。フォックスコン社の工場での騒乱は今回が初めてではない。天安門事件から23年に当たる6月4日には、四川省の成都工場で従業員ら数百人が暴動を起こし、数十人が警察に拘束された。フォックスコン社は、従業員の騒ぎは工場外の飲食店でのトラブルが原因で、拘束されたのは4人としているが、中国紙「第一財経日報」は賃金トラブルが背景にあると伝えた。

 今回の騒乱があった山西省の太原工場は翌25日、操業を再開した。操業停止の長期化によるアイフォーン5などの製品供給の停滞が懸念されたが、深刻な影響はひとまず回避されたようだ。工場側は生産再開に当たり、社会の秩序を守るようスピーカーで従業員に呼びかけたという。

最終更新:9月29日(土)19時32分

産経新聞

 

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