妊婦の血液から、胎児のダウン症など三つの染色体異常がほぼ確実に分かる新しい出生前診断の臨床研究が、国内の十施設程度で始まる。妊娠十週から検査可能で、三十五歳以上の高齢妊婦などが対象。ダウン症の場合、99・1%の精度で検出する。従来の検査法と違い、妊娠初期に採血だけで診断できるため、中絶という「命の選別」につながる懸念がある。
臨床研究は、国立成育医療研究センター(東京)や昭和大(同)、名古屋市立大、北海道大などが、十月中にも実施する。高齢出産や、以前に染色体異常の子どもを出産した妊婦などが対象で、費用は二十一万円。
新型出生前診断は、米国の検査会社「シーケノム」が開発。既に米国やドイツ、フランスなどで行われている。採血した妊婦の血液は同社に送られ、遺伝子解析して二週間程度で結果が出る。
妊婦の血液の血漿(けっしょう)成分には、胎盤の絨毛(じゅうもう)細胞から入り込んだ胎児のDNAが、わずかに浮かんでいる。この胎児のDNAが、二十三対四十六本ある染色体のどれに由来するかを分類。ダウン症の場合、二十一番染色体に由来するDNAの割合が通常より多くなると、「陽性」と判定される。心臓病などの可能性がある十三番、十八番の染色体異常についても高精度で分かる。
従来の母体血清マーカー検査は、染色体異常が何十分の一、何百分の一という確率のみで示される。確定診断に使われる羊水検査は、妊婦の腹に針を刺して羊水を採取し、三百回に一回の割合で流産の可能性がある。昭和大の関沢明彦准教授は、「(新型出生前診断が)羊水検査の代わりに使われれば、検査による流産は確実に減る」と話す。
この診断が注目される背景には、急速な晩婚、晩産化がある。二〇一一年の人口動態統計では、初産の平均年齢が初めて三十歳を超えた。同年に生まれた子のうち、三十五歳以上の高齢出産は約四分の一を占める。
ただ実施に当たっては、妊婦が検査を深く理解し、結果をどう受け止めるかサポートする体制が重要となる。臨床研究に参加する施設は、遺伝や小児科の専門医が所属し、専門外来で三十分以上のカウンセリングを行うことなどが求められる。だが、国内で認定遺伝カウンセラーは百二十五人と少なく、体制の充実が急務だ。
日本産科婦人科学会は、新型出生前診断について「検査が広範囲に実施された場合、社会に大きな混乱を招くことが懸念され、マススクリーニング(集団検診)としての安易な実施は厳に慎むべきである」との声明を発表。医療者や妊婦には「胎児の生命にかかわる社会的および倫理的に留意すべき多くの課題が含まれている」として、慎重な姿勢を求めている。
日本ダウン症協会は、新型出生前診断が「安易に行われたり、義務化されたりすることには反対」の立場だ。一般の血液検査の延長や、産科以外での実施につながる可能性があることにも懸念を示している。同協会の水戸川真由美理事は「ダウン症のある人と家族が今の社会をどう生きるのか、さらにサポートの必要性を感じている」と話した。
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