十勝毎日新聞社ニュース
新世代クマ現る
【広尾】町野塚の住宅地でヒグマの目撃情報が相次いでいる。天候不順でクマの餌となる山の木の実類が管内各地で不作となり、冬眠前の食料を求めて人里に下りてきているとみられる。人を恐れない「新世代クマ」も現れ、関係者は注意を呼び掛けている。
クマが掘り返したとみられるコンポスト
野塚市街は104世帯が住む農村集落。21日から27日まで計7回、国道336号や庭先など民家そばでヒグマが相次ぎ目撃された。28日朝は民家庭のコンポストがクマに荒らされているのが見つかっている。
野塚小学校では10月1日から登下校時、全校児童20人にスクールバスを利用させることを決めた。
クマは1〜1.5メートルほどで、複数が徘徊(はいかい)している可能性もある。今年は薄暮時だけでなく、白昼堂々と出没するクマが多いのも特徴だ。
自宅庭でクマを目撃した同市街の男性(81)は「50年住んでいて、これほどクマが出てくるのは初めて。人間を見ても怖がる様子がなく、日中安心して外を出歩けない」と不安がる。
里に下りるクマの増加で駆除頭数も今年は9月27日までで20頭と、昨年1年間の17頭をすでに超えた。
人里にクマが近づく理由で考えられるのが山の餌不足。冬眠を前に多食期に入ったクマがデントコーンや家庭菜園などに引かれて来る。
町内のハンターは「コクワもドングリも実のなりが悪い。クマのフンを見ても木の実を食べた跡がない」と言う。春先の冷温多雨で受粉が進まなかった上、夏場の異常高温も影響した。
ヒグマに詳しいベアマウンテン(新得町)の坂出勝飼育園長は、新得などでもドングリ、コクワ、山ブドウが不作と指摘する一方、「新世代クマ」への警戒を呼び掛ける。「ハンター数の減少や高齢化で、猟師や猟犬に追われる経験のないクマが増え、人を怖がらなくなっている。これまでのクマ対策が通用しない個体が出てきた」(坂出飼育園長)。
管内ではこれからキノコ狩りが本格シーズンを迎える。町では生ごみを庭に出さないなどの注意を呼び掛ける。坂出飼育園長は「山に入る時は単独行動はせず、ヒグマの生態などにも正しい知識を持ってほしい」としている。