中国では1000万元(約1.2億円)以上の資産を持つ"億万長者"が100万人を超え、そのうちの16%はすでに国外へ脱出しており、44%がこれから国外へ脱出する計画を立てているという記事がThe Economistに掲載されていた。
The balance of payments BoP until you drop(The Economist)
世界各地に華僑ネットワークを築き上げてきた中国人なので、国外脱出もさほど抵抗がないのかもしれない。国外脱出の理由は資産防衛がまず第一だと思うが、子息に高度な教育を受けさせるためというのも聞いた事がある。
数えきれないほどの革命が起こり、その度に国土が荒廃し支配層が入れ替わってきた歴史的経験が中国人のDNAに刷り込まれている。そのため心の中では政府というものの永続生を疑っているのだろうし、行動に移せるだけの資産を持つ富裕層が海外脱出に走る大きな要因になっているのだと思う。
それに比べて日本の富裕層の、果たしてどれくらいの割合が国外に脱出したり、計画しているのだろうかとふと思った。
考えてみると、日本におけるこの種の統計データを見聞きしたことが一度も無い。威勢のいい海外脱出論はよく目につくけど、はたしてどれだけの人が口だけでなく実行しているのだろうか。日本の場合、税制改正の話題がのぼるとこの種の議論が活発になる。
法人税が増税されそうになると大企業は本社を海外に移転するといい、所得税が増税されそうになると多くの高所得者が海外に脱出するだろうと言う。しかし、実際に行動を起こした人や企業はほとんどいないのではないか。
もしかして、日本人は口では不平不満は言うが、結局お上の言う通りに耐え忍ぶことを選ぶドM体質なのだろうかとも考えてみたが、すぐに違うなと思い直した。
律令時代の改革によって口分田制度ができた時も、資産防衛のため民の多くが戸籍をごまかしたり逃亡したりして脱税や使役逃れをやったり、税金のかからない貴族領や寺領に私田を寄進したりしている。結果として荘園が爆増し貴族政治全盛時代の幕が開き、民はさらに脱税のために土地の管理者と結託し武家社会の到来までアシストしている。
お上に大切な富を奪われないためにとった行為が結果的に歴史の変換点を生み出した。だとすると、日本脱出論は閉塞した現状を打破するために避けて通れない道なのかもしれないな、とふと思ったりした(嘘)。
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投資を中心に、ビジネス・ライフハックにも言及する。