学校現場に今も残る東日本大震災の影響を宮城県教職員組合(宮教組)が調べた。放射能汚染への心配や壊れたままの校舎、間借り先での遠慮と不自由……。子どもたちの心身の成長に気をもむ先生たちの姿も浮かび上がる。
調査は6月下旬、県内の公立小中学校631校を対象に実施。約4割にあたる250校から回答があり、宮教組は今月、そのうち156校のコメントによる回答内容を明らかにした。
東京電力福島第一原発の放射能汚染を心配する声は県内全域から寄せられた。「放射能は依然高い。早急に校庭の除染を」と仙南地区の小学校は訴える。放射能を独自に測定している学校もあれば、市町村側に「全学校で測定して欲しい」と求める学校もある。
古川地区には「ホットスポットになっている」という小学校がいくつかあった。校庭に立ち入り禁止区域を設けて対処したり、校庭や花壇の除草をできるだけ児童にさせないようにしたりしているという。
だが、子どもを預かるだけに不安は拭いきれない。仙台地区の小学校は「児童が育てている野菜を食べても大丈夫か多少不安」。給食やプール授業を心配する親がおり、「指導が難しい」とこぼす学校もあった。
震災で校舎が壊れた学校には、不自由さが残る。石巻地区では「体育館が使えず、卒業式や入学式などを音楽室で開いている」という小学校や、「校舎内の雨漏りがひどく、常にバケツを置いておかなければならない。カビが発生し、天井の一部がはがれている」という学校もあった。
さらに津波などで校舎を失い、遠くにある別の学校に「間借り」している学校はもっと不自由さを感じていて、間借り先の学校にも気をつかっている様子がうかがえる。
2学年で一つの教室を使っている仙台地区の小学校は「体育館の使用にも気をつかう。いつまでこの状態が続くか分からない」と不安がる。児童の8割が学区外の仮設住宅からバスで通学している小学校では「学校生活が制限される」。石巻地区の小学校は「一つの教室を段ボールのついたてで区切っている」状態が続いているという。
震災の恐ろしく、悲しい記憶が、なお子どもたちに影響を残していると指摘する学校も多い。
仙台地区の小学校では、津波の記憶から「プールの水しぶきが大きいと固まってしまう」児童がいた。石巻地区の中学校では震災後に体調不良を訴える生徒が多くなり、「『荒れ』が野火のように広がりつつある」という。また気仙沼地区の中学校からは「震災直後は学習意欲が減退した。今は頑張っているが、2、3年後が心配」と悩みを訴える声が上がった。
調査結果を踏まえ、宮教組は、それぞれの問題について改善するよう県教育委員会に求めている。(鈴木剛志)