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インターネットにおける言論の自由、47カ国中20カ国で「後退」――市民団体調査

“アラブの春”以降、中東ではインターネット規制が強まる傾向
(2012年09月26日)
Freedom Houseが公開したレポート「Freedom on the Net 2012: A Global Assessment of Internet and Digital Media」

 米国に本拠を置く民主化活動支援団体Freedom Houseは9月24日、世界47カ国を対象にインターネット上の言論規制などを調べた「インターネットの自由度(Freedom on the Net)」調査レポートを発表した。47カ国中20カ国では、昨年(2011年)1月の調査よりも自由度が悪化しているという。

 Freedom Houseでは各国在住の調査員50名を通じて、それぞれの国におけるインターネットの自由度を調査した。「情報アクセスに対する妨害」「コンテンツに対する制限」「ユーザーの権利に対する侵害」の3項目に対する評価点の合計ランキング、および「Web 2.0サイトのブロック」「検閲のための法律策定」「ブロガーやITユーザーに対する物理的攻撃、殺害」などの具体的事象があるかどうかがまとめられている。

 同レポートによると、調査対象の47カ国中、インターネット上で最も自由に行動できる国はエストニアで、それに次ぐ2位が米国だった(※訳注:日本は調査対象国に含まれていない)。一方で、幾つかの国ではブロガーに対する攻撃、政治的意図に基づく検閲、Webコンテンツに対する政府の介入、オンラインでの発言に対する制限などが行われていると指摘している。

 2011年1月の調査よりも自由度が悪化している国は20カ国で、特にバーレーン、パキスタン、エチオピアの各国では大幅に悪化しているという。

 さらに、同調査のプロジェクト・ディレクターを担当したサンジャ・ケリー(Sanja Kelly)氏は、「インターネットにおける言論の自由を制限しようとしている国の数は増えつつある」と警告している。

 ケリー氏によると、2010年から2011年にかけて起きたいわゆる“アラブの春”以降、中東の国々の多くがインターネットの自由を制限しているという。「各国の政府が、ソーシャル・メディアを通じて人々が結集することで何が起きるのかを理解したからだ」(同氏)。

 レポートによれば、調査対象国のうち14の国では、政府に都合のよいコメントをして不満の声をかき消す“インターネット工作員”を政府が雇っている。ケリー氏は、これは「憂慮すべき動向」の1つだと述べている。

 また2011年の調査以降、インターネット上での発言を制限したり、ユーザーのプライバシーを侵害したり、あるいは政府に対する批判や政府が好ましくないと考える人物を処罰したりできる、新たな法律や命令が策定された国は19カ国に上る。

 オンラインに公開した、あるいはテキスト・メッセージで送信したコンテンツが原因となって、ブロガーやインターネット・ユーザーが逮捕された国は26カ国。また19の国では、オンラインでの発言に対して拷問や暴力、あるいは誘拐(行方不明)といった物理的攻撃がなされている。そして、政府による人権侵害の告発情報をインターネットに掲載した報復として、政治活動家や市民ジャーナリストが殺害された国は5カ国あった。

 反対に、「インターネットの自由に関して前向きな動き」(ケリー氏)も報告されている。幾つかの国では、インターネット・アクティビストとテクノロジー企業が、インターネットの自由を制限する法律に対抗する動きを見せているという。

 具体的には人権擁護キャンペーン、大規模デモ、Webサイトのブラックアウト(※訳注:抗議の意を示すため自らWebサイトの背景を黒くする行動)、違憲訴訟などを通じて、検閲計画が延期されたり、有害な法案の成立が食い止められたり、拘束されていた政治活動家が釈放されたりしている。調査によれば、こうした行動の結果、23の国で何らかの変化が起きているという。

 部分的な問題はあるものの、おおむね「インターネットの自由度が高い」とされた国は英国、ブラジル、ウクライナ、イタリア、ドイツなど14カ国。「部分的に自由」な国はナイジェリア、ヨルダン、ロシア、メキシコ、エジプト。反対に「自由ではない」と指摘されたのは、中国、サウジアラビア、タイ、パキスタン、イランなど13カ国だった。

調査47カ国のランキング。スコアが少ない(リストの上にある)国のほうがインターネットの自由度が高い(同レポートより)

(Grant Gross/IDG News Serviceワシントン支局)

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