日本企業:もろ刃の対中投資 成長市場、リスクも巨大
2012年09月28日
日本の対中直接投資の推移
国交正常化から40年を迎えた日中両国は、尖閣諸島をめぐる対立の激化を受けて経済的にも過去に例のない厳しい試練に直面している。反日暴動による直接的な被害だけでなく、日本製品への不買運動を呼びかける声が絶えず、新たな「中国リスク」が顕在化。巨大市場・中国を最重要拠点とみなす日本企業の位置付けは容易に揺るぎそうもないが、収益機会とリスクをどうはかりにかけるのか、難しい判断を迫られそうだ。【赤間清広、立山清也】
「中国はまさにゴールドラッシュ。チャンスがある」。尖閣国有化後の反日デモで「ユニクロ」の店舗が不買運動などの対象になったファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は26日の会見でこう指摘。「毎年100店舗ずつ作りたい」とも述べ、今後も中国市場重視の方針を変えないことを強調した。
日本企業による対中投資はこの数年増え続けてきた。11年の対中直接投資額は約63億ドル(約5000億円)。中国の成長に陰りが見え始めた今年以降も勢いは衰えず、1~8月の世界の対中投資が前年比で3・4%減少する一方で、日本の投資は16・2%増と拡大。中国が改革開放にかじを切った80年代後半、天安門事件後の90年代前半、世界貿易機関(WTO)加盟後の00年代前半に続く、「第4次ブーム」と言われる投資拡大期に入っていた。
一気に冷や水を浴びせたのが今回の反日デモだ。日本企業の中国進出支援に携わる大手銀担当者は「日系工場がこれだけ被害を受けたのは例がない」。大和総研の橋本政彦エコノミストも「賃金上昇など従来の課題に加え、反日リスクを日本企業は意識せざるを得なくなっている」と指摘。さらに「今回の事態は日本企業が投資先をミャンマーなどへ分散させるきっかけとなる可能性もある」と言う。
実際、イオン系のマックスバリュ西日本は27日、中国・青島に来春開業予定の新店舗の開店時期が遅れる可能性があると明らかにした。進出を検討していた自動車部品メーカーにも、当面見合わせる動きが出ている。
◇続く相互依存
貿易面でも中国は日本の輸出総額の約2割を占める最大の相手国。しかし、トヨタ自動車が完成車の対中輸出を絞ったほか、他の自動車大手や電機大手も中国で減産を余儀なくされ、事態が長期化すれば業績への影響は不可避だ。
中国にとっても日本の存在は依然として大きく、影響を受けるのは日本と同じだ。中国に進出する日系企業はすでに2万社を超え、数百万人の雇用を生み出していると推計されている。日本からの輸出や投資が鈍れば、中国経済の動きにブレーキがかかるのは確実だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の真家陽一中国北アジア課長は「日中経済は互いに補完しあう関係で、この構図は当面変わらない」と指摘する。