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☆★☆★2012年09月28日付 |
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26日行われた自民党総裁選で安倍晋三元首相の再登板が決まった。以前から「誰がなるべ?」と聞かれ「安倍さんだべ」と確信を持って答えていたのは、「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」という格言があるからだ▼徳望のある人には自然に信望が集まるという意味で、5人が臨んだ総裁選の顔ぶれを一瞥すれば、答えは明白だった。首相経験者ということと、在任中大型懸案を解決した力量が買われたとも言えるが逆に途中で政権を投げ出したという失点も問われたはず。地方票と議員票で評価が分かれたのはそれを物語っているが、議員たちは誰がふさわしいか肌で感じとっていたのだろう▼途中で投げ出したという行為は確かに不信に価するが、潰瘍性大腸炎という難病を抱えていた事実を無視してそれだけを責めるのは酷というものだろう。腹痛に堪えかねて1日に30回あまりもトイレに駆け込むという状況は生理的にも心理的にも大変な負担だったろうと思う▼しかしそれが仮に原因とはいえ、国政を預かる責任を放棄したに等しい事実にさいなまれ続けたという告白が問わず語りに「再チャレンジ」の動機を説明していよう。そう、その責任を果たすべく捲土重来を期していただきたいものだ▼氏が脱却すべきと説くところの「戦後レジーム(制度)」は確かに見直しの時期に来ている。外交に必要なものは力であり、国民に必要なものは誇りである。「普通の国」に戻るのが次代への要請であることを異例ずくめの過程を経た再登板は物語っている。 |
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☆★☆★2012年09月27日付 |
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「中国からの旅行者が何万人減った」といった経済損失面だけが連日のように報じられているが、それは一時的な現象面を捉えただけで、何よりも大事なのは今後の対中姿勢だろう。その大局を考えずおろおろする愚だけは避けたいものだ▼相手は昔からメンツを重んじる国だからそのメンツを潰されて平常心を失い、かっての朝貢国に対するそれのように高圧的な態度で臨んでくる。だが、一方の益が一方の益にもつながるのが経済原則であり、日本を相手にせずで同国の経済が成り立つのだろうか?▼否、である。すでにその兆候が表れ始めている。それでなくとも減速傾向にある同国だが、領土問題をめぐる摩擦が世界市場の波乱要因になったと昨日の日経が報じているように、チャイナリスクというものが改めて見直され、対中投資が下降線をたどることは疑いない▼その対中直接投資は昨年10%増だったが、うち欧州投資が4・1%減り、日本の投資だけが16%増と際立っていたように、もはや日本の存在は否定できないほど大きくなっているのだ。しかし今回の対日デモによって対中協力関係のあやうさが露呈、投資を手控える動きが加速するとそれは中国経済にとってボディブローのように効いてくるはず▼自制心を欠いた反日行動は同国にとって「天にツバする行為」と何度も書いたが、雇用一つとっても、いまや外国企業の持つ潜在可能性を無視してその維持は困難である。それが経済の疲弊につながると、国民の強い不満を一層募らせるだけだろう。 |
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☆★☆★2012年09月26日付 |
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異常に長い残暑に日本列島はいささかうんざり気味だったが、彼岸を境にして夏があとかたもなく消え去り、二十四節気という季節の暦を作った先人の知恵に脱帽させられた▼「暑さ寒さも彼岸まで」というたとえは実に的を射ていて、春分と秋分を境にがらりと気候が変わるのは驚くほど。経験則が生んだ知恵だろうが、昨日まで扇風機を回していたのに今日は上着を着用したいほど冷え込んでくしゃみをしているというこの急変はどうだろう▼それにしても9月の下旬まで残暑が続くというのは珍しく、「いつまでも暑いね」という時候のあいさつには「なぁに、暑い暑いと言っているうちが花だべもの」と答えることにしていた。暑ければビールをうまく飲めるし、あちこち遊びにも出かけられるが、寒いと何もする気も起きない。「ビバ!サマー」なのである▼しかし国際政治の方は当分残暑が続くだろう。日本政府の尖閣諸島国有化に対する中国の反発は、これでもかこれでもかと報復の手段を選ばず、新聞の見出しは「政冷経冷」と評している。つまりこれまで政治関係は冷え込んでも経済は別だったが、いまや経済も冷却化しているというわけだ▼日本が領有権を主張しなくなるまで波状攻撃をかけるという中国の方針はしかし日本にどんどん厚着を重ねさせるだけだろう。一歩退いたら最後、取り返しのつかない事態を招くことを日本国民は十分に学習したからである。いかなるいやがらせもおどしも柳に風と受け流しておれば、やがて季節も変わろう。 |
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☆★☆★2012年09月25日付 |
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中国に進出した日本企業で働く中国人従業員が反日デモという絵踏み≠ノどう反応したか?現地からいろいろと報告があるが、これらの事例はこれから中国進出を考える企業のヒントになるだろう▼進出してきた異国企業に対して、いくら雇用主であっても現地の従業員がその企業に忠誠心を抱くかどうかは次元の異なる問題で、これは現実に直面すると微妙な陰を落としかねまい。まして本国と同じ待遇ならともかく、賃金の格差が前提にある進出は相手国の国民感情を逆なでする部分を最初から内包しているからなおさらだ▼で、中国人従業員は反日デモという同胞の動きにどう反応したか?従業員の多くがそのデモに合流してしまったため操業を停止したとか、便乗しての賃上げ要求や、職場放棄などの動きによって操業中止に追い込まれたといった実例が報じられている。雇用主よりはやはり国、人はパンのみにて生くるにあらず―なのかもしれない▼ただ、最初から巨大市場をあてに進出した大企業の多くが残留を決めたのとは異なり、暴徒化したデモの標的にされて工場を破壊されたり、破壊は免れたものの現地従業員と信頼関係を維持できるかという問題を抱えた中小企業は今後の対応に苦慮しているようだ▼なにせ領土問題はしばらく尾を引くことはまぎれもなく、だからこそ寝た子を起こさぬような操業を強いられる今後はストレスとの同居を避けられまい。経済と政治が連動する国での経営が大きなリスクを伴うことだけはまぎれもなく証明された。 |
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☆★☆★2012年09月23日付 |
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中国が日本をやりこめようとすればするほど世界は同国への警戒心を強めることになるだろう。デモのコントロールに失敗し、略奪破壊を許したマイナスイメージは大きく、その後の国家統制的報復行動もそれに輪をかけた形となるからだ▼「中国が道理をわきまえた、信頼できる国という評判を犠牲にしてまでナショナリズムを優先するなら、代償を払うのは中国だ」米・ウォール・ストリート・ジャーナルはこう論評したが、これは民主主義各国共通の見方だろう。目的のためには手段を選ばないというやり方は、グローバルの対極にある▼日本製品の不買、日本旅行や各種日中交流の禁止など、ありとあらゆる報復が政府主導の下に行われることのぜひを論じても相手には通用すまいが、日本を含む外国企業がどんどん撤退したら雇用はどうなるのか。大体、ボイコットしたくてもできない日本製の生産財も少なくないのだ▼国際常識とかけ離れた独特の国家主義に嫌気がさして中国離れする国も出てきている。中国に進出した米国企業の半数近くが自国へ生産シフトを考えているという調査結果もある。世界各国からの対中投資が今日の経済的繁栄を促した一因も顧みず、唯我独尊的態度を取ることは天にツバするに等しい▼社会主義経済が成り立たないことは改革開放前の中国や旧ソ連が証明済みであり、中国が今後とも安定した経済発展を期待するのなら、自由主義経済に不可欠な互恵共助の精神が必要なのに、これでは大同を捨てて小異につくようなものだ。 |
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☆★☆★2012年09月22日付 |
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国民の不満をそらすために外敵をあつらえるのは独裁国家の常套手段だが、だましたつもりでいる政府と、だまされたふりをしている国民。その虚々実々のかけひきがどうなるか?そんな国の一つ、中国から当分目が離せない▼中国が日本を国内事情と国家戦略上からずっと仮想敵国としてきたのは、国内各地の反日宣伝施設、誇大な反日教育その他これでもかこれでもかという一貫した姿勢が如実に物語っている。その敵がどこまでも日本なのは過去の歴史もあるが、何も文句を言わない国だからでもあろう▼だが、中国の民衆の間にたまりにたまった不満はそんなおためごかしにだまされなくなってきており、まさに発火点≠ノ達しつつある。その証拠に最近しきりに登場するようになったのが「裸官」という言葉だ。政府高官がその地位を利用した蓄財がばれた場合に備えて、家族を海外に住まわせ危険分散≠キることを指す▼つまり、いつでも海外に逃げられるようにしておくことを「裸」にたとえたもので、こういう言葉が流行するということ自体、国民がその実態を知り憤っているという証しだろう。党官僚がいかにうまい汁を吸っているかは衆目が一致していても、それを詮議≠ナきないもどかしさは「黄門」様不在の国ならではのこと▼裸官つまり「悪代官」揃いの国だから、民衆がいつ蜂起しないとも限らない。そのためのガス抜きに格好な材料となったのが尖閣だが、そのガスが抜かれるどころかどこかに貯め込まれた様子を少しは遠望できまいか。 |
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☆★☆★2012年09月21日付 |
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毎日「センカク」料理でもなかろうと別のメニューを考えるのだが、なにせ同じ材料が毎日届くので気ままもできない。やむを得ず本日もセンカクを使っての中華丼≠ニでも参ろうか▼さすが世界第2の経済大国となっただけあって、中国が尖閣諸島の接続水域に展開し始めた漁業監視船、海洋監視船の数は19日現在16隻にも達した。陸では大量動員しての官製デモ、海ではこれまた威力誇示の艦船デモ。こうして小日本を脅して震い上がらせようという魂胆のようだが、その手はもう古い。数で押すなら対抗上こちらも20隻は出す―となるのである▼こうなるとエスカレートするのは、暴力団抗争だけではない。「メンツをつぶされた」とドスをちらせたくなるメンタリティー(精神構造)を理解できないわけではないが、それは国家間の場合、振り上げた拳のやり場に困る結果に繋がる可能性が高い▼ところが、中国海軍がフリゲート艦2隻を尖閣に向かわせたと知り、冷戦時代にもてはやされた「パワーポリティックス(力の外交)」がまた亡霊となって出現した思いにかられた。ではと、こちらも自衛艦を派遣したらどうなるか?まさにハジキ、チャカ(拳銃)の数をたのむ仁義なき戦い≠ニ変わりなくなろう▼日中間が当面する最大の課題となった尖閣の領有権問題は力によって解決する種類のものではなく、きちんと歴史を考証し、史料を精査し、法理で臨むものだ。そうすれば改めて日本の国土であることが証明され、力の誇示は徒労に終わるはず。 |
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☆★☆★2012年09月20日付 |
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柳条湖事件81年目の18日中国全土で行われた反日デモはかってないほど激しく荒れ狂い、その模様はあたかも日中一触即発の前夜を思わせるようだった。だが、中国政府の思惑とは異なって日本国民は事態を淡々として受けとめ、尖閣がわが国土であることを一層確信していくのである▼尖閣諸島の国有化は遅きに失しはしたが、日本国有の領土であることを改めて全世界に発信した意義は大きい。棚上げという先送りが時間の経過と共に問題をこじらせ、ついには双方の綱引きに至った原因を反省し、国有化ということでわが国の領有権を全面的に打ち出したのはまさに正解である▼「小日本」は圧力に弱いことを知っている同国は、デモだけでなくありとあらゆる機会を捉え、日本にとってマイナスと思われるさまざまな攻撃を加えてくるだろう。すでに日本観光はキャンセルが相次ぎ、人的文化的交流も軒並み中止や延期に追い込まれている▼翌日の各紙は、進出した企業の苦悩を取り上げていたが、巨大市場の魅力をいまだ諦められない企業もあれば、他国へのシフトを決断した企業もある。それとは別に少なからずが引くも地獄進むも地獄という微妙な立場に置かれているのだろう▼日中間にある最大の紐帯は経済である。それだからこそ日本は弱みを握られ脅される。巨大市場を失うおそれ、巨大投資を回収できない悩みなど撤退を踏みとどまらせる理由、原因は確かにあるだろう。しかし現体制下における商取引はその永続性が期待できぬことは明らかだ。 |
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☆★☆★2012年09月19日付 |
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これでは世界の理解、共鳴を得るどころか逆に恥をさらす結果になるのではないか?中国青島にあるジャスコが暴徒化したデモ隊の乱入、破壊略奪によって、25億円相当の被害に遭ったというその行為のことである▼これではデモに名を借りた強奪、強盗としか言いようがなく、さすが同国内でもネットなどで非難が集まったようだから、儒教の精神いまだ廃れず、心ある国民もいるのだなとホッとした。しかし一方で人心がこれほどまで荒廃しているのかと思うと、その原因を考えずにはおられない▼この店では550人の中国人従業員が働いているが、同胞のこの無法な行動をどう捉えたであろうか?おそらくひとりとて快哉は叫ばなかったはず。いや悲しんだと思う。復旧に3カ月、品揃えにも巨費が要るだろうが、それでも撤退はしないという店側の悲痛な覚悟は、企業の利益のみ優先の結果ではあるまい▼日本製品のボイコットを掲げる一方で日本製品を強奪というのは一種の戯画だが、これがデモの一面を伝えていて参考にはなる。要するにデモの口実は尖閣でなくてもいいのである。日頃の抑圧、たまった憤懣などに対するはけ口がそこにあっただけだろう▼領土問題は領有権の根拠を互いに主張し合い、納得できなければ国際司法裁判所に委ねればいいのである。しかし中国も韓国もそれには応じず、ただこぶしを振り上げるだけだ。でも一衣帯水の距離ではあるがデモの示威などこちらにはまったく届かず、やればやるほど反発を強めるばかりだ。 |
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☆★☆★2012年09月18日付 |
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尖閣は言わずもがな沖縄にしても元々中国の領土なりと、かの「中華思想」は止まることを知らない。この調子だと、その上(昔)は日本列島だって中国の一部であったとなりかねない。だからこそ日本は一歩たりとも引いてはならないのである▼85都市で反日デモが起き、一部では暴徒化して日系のスーパーや工場、日本料理店などが餌食になった。中国進出という賭けに必ずつきまとう「チャイナリスク(危険負担)」が現実のものとなり、日本政府も進出した日本企業も大局を見据えて今後を考える必要に迫られよう▼いくら12億人以上が住む巨大マーケットでも、自由経済を採り入れて日が浅いだけに、商習慣、商道徳はおろか、一党独裁という異なる政治体制を持つ国に進出するということは、それなりの覚悟が必要にもかかわらず、バスに乗り遅れるなとばかり日本企業が競って進出する傾向は憂慮にあたいしていた▼台湾の奇美実業の創業者、許文龍氏が中国に進出し、脅かされて謝罪文を書かされた時は世界に衝撃が走ったが、それでも巨大な市場と安い人件費という魅力に抗しがたく世界の経済界は中国へ中国へとなびいた。その裏にとんでもないリスクが潜むことを承知で▼デモを利用して日本に圧力をかけるという方便は下手すると銃口が自分の方に向く危うさをはらんでいる。日本という桑を指さして本当は政府という槐をののしっているのだという「指桑罵槐」の姿がデモからうかがえるのは、暴徒化する真の動機が別に浮かぶからだ。 |
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