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  GM、目覚める 作者:ミケ
プロローグ
  夢を見た。夢の中の自分の、仕事の夢だ。
 異形をたたっ斬る夢だ。罪状は、セクシャルハラスメント。
 夢の中の自分にとっては、許されざる罪だった。
 だが、それは夢のはずだった。夢以外の、なんでもないはずだった。
 朝、いつも以上に気怠い体を起こす。
 随分と奇妙な夢を見たものだ。
起きると同時に、頭の中で、何かが自分に語りかける。
 それははっきりとしていて、だが、全く意味がわからない異国の言葉。
 随分と酷い幻聴。聞きたくないと思った途端、それは止む。
 さて、今日も政務が始まる。
 起きて支度をしている途中、火急の要件ということで側近が息を切らせて現れた。
 発言を許すと、震える声音で告げる。

「隣国の首都に、ブラックドラゴンが現れたとのことです!」

 また面倒な。どうせ、「あの者達」のマッチポンプだということぐらいわかっている。
 「あの者達」。どこからか現れた、異形の集団。彼らはとても強い力を有している。そして、時折こういった事をする。自ら魔物を放ち、自ら退治して名声を集めようとする。
 恐ろしいから言わないだけで、誰もが真相を知っている。
 「あの者達」の配下以外で、かように強力な魔物が存在するはずはないのだ。
 だが、討伐は頼まねばなるまい。
 「あの者達」のうち一人、アマクト。鬼族の彼は、最近現れた新参で、この国の侯爵に収まっている。今のところは。「あの者達」は、神や王となる事が多い。だから、いずれはこの国を食い荒らすだろう。何より、アマクトの部下がアマクトが誰かの下につく事を許さない。
 どう頼むか悩んでいると、頭の中に、自然に文字が並んだ。

 討伐クエスト 金貨300
 アカネイシア王国の首都がブラックドラゴンに襲撃を受けています。
 街に被害の出ないようにドラゴンの討伐を行なって下さい。
 先着一名です。

 クエスト、という字に首を傾げる。
 そしてそれはすぐに受諾された。
 何だったんだろうか? ともかく、詳しい事情を聞く為、アカネイシア王国の大使に会う。
 会談の準備を初めてわずか半刻。
 その間に、クエストは達成となった。
 使者との会談の最中、竜が討伐されたと連絡が来る。
 討伐したのはやはり、「あの者達」だった。というか、討伐できるのは「あの者達」以外にない。まさか、本人が出てくるなど思いもしなかったが。部下に任せるとばかり思っていた。
 しかし、クエスト。クエストという言葉は覚えがある。
 夢の中の自分が発布していたものだ。
 これは夢なのでは? 思わず、思う。
 あの頭に響く他国の言葉は何だったのか。
 そう思った途端、謎の声は再開した。

『GM! GM! 討伐クエストがこの世界の言葉ってことは、GMもこの世界基準なのか!?』

『答えてくれ、GM!』

『討伐クエストが出たってことは、いるんだろ!?』

 他国の言葉ではなく、自国の言葉で問われたそれと、知った声。それに、思わずベルトリアスは反応した。

「アマクト?」

 思わず聞き返すと、アマクトは驚いたように告げた。

『ベルトリアス?』

 まずい事をしてしまった気がして、黙った。
 アマクトはしばしベルトリアスに呼びかけていたが、それからすぐに向かうと告げた。
 あれは幻聴だと自分に言い聞かせながら朝食を取っていると、他国の王、神、侯爵と、超豪華な面々、すなわち「あの者達」から面会の要請が入る。面会の要請と言うよりは、それはほとんど命令だ。彼ら異形の者に人間が抵抗できるはずがない。

「ベルトリアス陛下。お会いできて光栄です。単刀直入にお伺いしますが、貴方様はGMですか」

 ベルトリアスは戸惑っていた。
 彼ら異形の頭の上に、名前が見えるからだ。
 その名前に注目すれば、彼らの所持魔法や性質が並べられた四角い羊皮紙が空中に現れれ、ベルトリアスは目を疑った。
 
「ベルトリアス陛下?」

「あ、い、いや。GMというのは、私は知らない」

「しかし、我等の呼びかける声にお答えになった」

「幻聴だと思っていたが……GMとはなにか、聞いてもいいだろうか」

 問いかけると、彼らは視線を交わした。
 そして、一人の女性の異形の胸を、一人の男の異形が揉む。考える間もなく、ベルトリアスは黒騎士へと姿を変えて、胸をもんだ相手を切り倒していた。
 やってしまった事実に、そして人間でありながら、異形を切り倒せてしまった異常に動揺する。
 それと同時に、セクシャルハラスメントは許しがたい罪だ、殺されて当然だ、という謎の意識がベルトリアスにあった。
 元の場所に元の姿で戻ったベルトリアスは大いに慌てたが、むしろ異形の者は歓喜した。
 さりげなく、切り倒された相手も即座に異形の手によって復活させられており、ベルトリアスは細やかな絶望を感じていた。
 こんなに簡単に生き返るのであれば、討伐の作戦が万一成功しても無駄である。

「やはり、GMだ!」

「GMが現れた!」

「転生、か?」

「確かに、GMは普段体を持たないから……」

ベルトリアスの頭に、警報が鳴り響く。
 ひとしきり話し合った異形達は、ベルトリアスに、任せろというように胸を叩いた。

「俺達が立派なGMにしてみせるから、ベルトリアスは大船に乗った気でいてくれ! とりあえず、場所を移動しようか」

 今ここに、どうどうと王族誘拐が行われようとしているが、咎めるものは誰もいない。


 

VRMMOからのトリップ者が多数現れる

それぞれに国を作ったり仕官したり神様になったり。

好き勝手やっている所で、突如GMが現れてセクハラ制裁

GMを探し始める

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