STUDIO VOICE

twitterFACEBOOKtumblr

神田恵介 インタビュー

keisuke kanda  「白の衝撃」

mainimage
予定調和を崩す、大胆な型破り。
インタビュー・文=合六美和
写真=三宅英正
  • この記事を共有

「『いつまでもあなたたちの時代じゃない』と、言いたかった」

——服ではなくて紙エプロン。まずビックリしますし、正直ギャグっぽくもあります。しかもタイトルが「白の衝撃」という。都現美の中二階でその風景に出会った時には思わず笑ってしまいました。さらには監視員の方がひとり、その紙エプロンを制服の上から着用なさっているらしいですね。不覚にも見逃してしまいましたが。

僕としては、「陰翳礼賛」のセクション(川久保玲や山本耀司らが80年代初頭に発表した無彩色の“ボロ服”を中心に展示)の監視員さんにあの紙エプロンを着用してもらうことで、川久保さんや耀司さんに挑戦する姿勢を示したかった。でも結局、この案は通りませんでした。

最終的に「平面性」のセクションの監視員さんに紙エプロンをつけてもらうことになったのですが、紙エプロンで平面性を訴えたかったわけではもちろんないので、ちょっと残念な結果でした。

もっと言うと、監視員さん着用の案よりも前に出していたプランが実はあって。それは、「陰翳礼賛」のマネキンの並びに、僕らの紙エプロンをつけたマネキンを入れて欲しい、というもの。これが当初、一番やりたかったことです。もちろん、すぐ却下されちゃいましたけど(笑)。

悪意じゃなくて、彼らに対するリスペクトがあるからこそ、「いつまでもあなたたちの時代じゃない」と、僕らの世代として言いたかったし、その心意気をあの場所で見せたかった。でも力及ばず、その願いは叶いませんでした。

——マネキンに「白の衝撃」を着せて「黒の衝撃」に挑む。神田さんが最初に描いた展示の風景を改めて伺いたいです。

今回、実は紙エプロンだけじゃなくて、マッドスネイルの藤本君と共同制作した紙ブクロも用意していたんですよ。この紙ブクロが色々と物議を醸しまして、展覧会直前になって「紙ブクロのほうは展示しちゃダメ」と言われてしまいました(笑)。

バッグって、ある意味、洋服以上にファッションの象徴じゃないですか。エルメスのバーキンとか、ヴィトンのモノグラムとか。だからこそ、洋服の未来形としての紙エプロン、バッグの未来形としての紙ブクロ、という二大キャストで本当は臨みたかった。

紙ブクロと言えば、一般的にはショッパーとしての認知ですよね。基本的に、お金を出して買うものではない。商品を買えば、タダでついてくるオマケのようなものです。その意味では紙エプロンも同じで、焼き肉屋さんで注文すれば、タダで出てくる。それ自体に価値があるとは言いがたい。そのような価値のないものに付加価値をつけるという行為こそが、まさにファッションであり、同時にそこにファッションの未来があると思った。

「白の衝撃」というタイトルをつけたのは、決して茶化したわけではなく、ファッション史における「黒の衝撃」という“伝説”と、いまこの場所で僕らが描く紙エプロンという名の“未来”とを、おこがましいけど観る側に比較してもらいたかったからなんです。

——その幻の紙ブクロ、せっかくなので、ここで初公開させていただきます(トップ写真)。商品化もしていくのですよね?

はい。僕は、「日本ファッションの未来性」展に、アート作品を出展したつもりはありません。紙エプロンも紙ブクロも、これから商品として展開していきます。その商品化は、藤本君の会社と一緒にやっていきます。これは壮大なプロジェクトになると思う。



“カゴバッグ風”の紙ブクロ(表/裏)

——新しいファッションビジネスの仕組みを構築するとか?

ファストファッションを超えるファストをやりたいと思っていて。ちまたのファストファッションって、本当は使い捨て前提なのに、それを公言できていない。僕は、それを堂々と言える新しいファッションが出てきたら面白いんじゃないかと思ったんです。で、紙エプロンと紙ブクロに辿り着いた。

使い捨てって、エコとかの流れもあって、あんまりいいイメージがないけど、それはそれでパンクな臭いがして僕は好き。商品化にあたっては一定レベルの強度は与えるけど、せいぜい使えて2〜3回と、儚い命になります。

使い捨て前提だからこそ、輝けるものもあると思っている。長く着ることのできる服の素晴らしさとか、一生モノの服の価値とか、それももちろん分かるし、「ケイスケカンダ」の服もまさにそういうものなのかもしれない。でも、それだけじゃないはず。“儚さ”の持つ“強さ”を表現してみたい、と思った。

keisuke kanda 「白の衝撃」【3/3】へ
INDEX 123