あらゆる外部を内部へと引き込みそのシステムの中で差異なき差異の増殖をし続ける資本主義機械。気がついてみればそのシステムの中にがんじがらめになっているオレがいる。資本主義機械の王として振る舞う貨幣。価値の体系を全体から吊り下げるこの絶対者は決して磨耗することはない。幸福が欲しければ金を稼げ――一体この強迫観念はどこからやってくるのだ?
稼いだ金は一時商品に変わるが、オレが使った貨幣はどのみちどこか別の場所で遊泳し続けている。そして、その余剰はオレと同じ病気にかかっているどこぞのバカの労働と結びつき再び商品の流れに合流されてくる。外部は常に内部に接続され出口のない閉回路の中でオレとおまえの欲望は貨幣として増刷されていく。そんなオレとどこぞのバカがいる限りこの貨幣の絶対王制は揺るぐことがない。
ショーウィンドウに並ぶ商品の数々。つきつめられればこれといって欲しいのものはない。しかし、オレの中の資本主義機械はつねに勃起状態だ。薬づけならぬ消費づけの日々。金は使いたくないが、金を使うこと以外に何もやることがない何とも情けのないオレ。コンビニで食料を買い込み、電気代は今日も銀行口座から自動的に引き落とされる。一体生きているのはオレか?それとも金か?
消費の代償に退屈きわまりない労働が待っていようとも、オレは金を使うこと以外にやることがないから働かざるを得ない。ひたすらコキまくる哀れな独身機械よ。このルーティンワークからこぼれ落ちれば、さびた部品となって朽ち果てるしかない。監視する者などどこにもいないのに、自らが監視者となって無益な幻想をオレに押し付ける。
どこぞのバカに追い付き追い越せ。あいつらよりも金を使え。それだけがオレの自尊心を満足させるのだ。ところで、あいつらって誰だ。そんなやつがどこにいる?いやしないじゃないか………。そうは分かっていても、今日もまた労働と消費の反復を続けるオレ。判で押したような毎日。スタートもゴールも見えないこの乾ききったトラックの上でやがて朽ち果てて死ぬことは火を見るよりも明らかだ。いや、すでにオマエは死んでいる。今頃気づいたか愚かなやつめ………。
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