2012年09月11日
4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる(2012年9月発表分)
2012年09月11日06:45
【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる】や【「mixi自社広減少!?」をもう少し考えてみる】で触れているように、経済産業省では毎月主要業態の売上高推移を公開している。そこで【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる(2009年6月発表分)】で掲載した2009年6月発表分・同年4月分データ以降、メディアと深い関わりのある広告業の売上について、今サイトでは定点観測を行っている。今記事はその2012年7月分データ(公開は2012年9月)の速報値を反映させたもの。なおそれより前のデータについては、速報値の後に発表される確定値で修正された値を用いている。
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2012年6月-2012年7月)
比較しやすいように先月発表データと並列して図にした。今回月では「雑誌」が前回のプラスから転じてマイナスを示しているのをはじめ、「ラジオ」以外すべての項目で悪化の動きを示している。唯一改善した「ラジオ」にしても、マイナス値の値縮小でしかなく、前年同月比で減っていることに違いはない。なお雑誌は前年同月(2011年7月分)では(震災起因による下落で)マイナス10%。そこからさらにマイナス7.3%をつけているあたり、相当の下降ぶりがうかがえる。
先月に続き、「前年同月」が震災起因で大きく下げた値の反動値となり、状況を正しくつかめないリスクを回避するため、「前々年同月比」も算出し、グラフを作成する。今回の場合は2010年7月の値との比較となる。
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前々年同月比(2010年7月→2012年7月)
「インターネット広告」の伸びは順当として、「テレビ」もかろうじてプラスを維持しているのが目に留まる。4マスの中では唯一のプラスであり、昨今の状況とも符合する動きといえる。さらに直上の通り、「雑誌」が危機的な状況にあることも見て取れる。
今回も該当月における各区分の具体的売上高をグラフ化しておく。電通や博報堂の区分とは違うため、該当同月の両社データとの違和感を覚える部分もあるだろうが、参考値の一つとしてとらえてほしい。
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2012年7月、億円)
金額面で見ると昨今では何度か「新聞」を抜き、主要5項目では「テレビ」に次ぐポジションを得る機会を持つようになった「インターネット広告」(【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(月次・〜2011年12月版)】)。今月発表分は先月分に続き「インターネット広告」が「新聞」に競り勝つ形となった。
次に、公開されているデータの中期的推移をグラフ化する。インターネット広告のデータが掲載されたのは2007年1月からなので、それ以降の値について生成したのが次の図。
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2012年7月分まで)
大勢としては「インターネットは激しい起伏の中で2009年後半以降は回復、プラス圏を維持」「テレビは2010年あたりから戻しの雰囲気」「ラジオはマイナス圏で低迷〜やや下げ幅を縮小」「雑誌はかなり厳しいレベルの下げ幅を継続していたが、ここしばらくは復調の雰囲気も」という傾向を見せてい”た”。そして東日本大地震・震災による影響で2011年3月分から、グラフは大きなうねり・変移を起こしている。
今回月は前回月に続き、数か月前に生じた「震災後の下落との比較による結果で生じた、反動の伸び」の勢いがしぼみ、急速に下落している様子が分かる。現時点で「雑誌」のように「まだ震災の影響が色濃く出ていた1年前の値」との比較で、反動の影響があるにも関わらず、今回月でマイナス値を示す項目が複数生じてしまっている。対象項目の足場のもろさ、状況の切迫感が見て取れる。
一方で東日本大地震・震災とそれに伴う各種震災・人災、そしてその後の消費者の中に芽生えた心理変化は、広告出稿側のコスト意識の変化(多くは費用対効果の厳粛・厳密化)、地震報道などで一部ながらも露呈した各媒体の「真の価値」への、視聴者・広告主による意識の移り変わりのきっかけとなった。そして広告業界ですらも一部軌道修正の上で、全体における変化の「時計の針」を押し進めている。
今後も電通・博報堂の月次レポートの分析と共に、特定サービス産業動態統計調査の結果の追跡に傾注し、メディアと広告の状況変化の移り変わりのチェックをお勧めしたい。単月ではつかみとれないことが、数か月、数年の流れを見て行くうちに、頭にイメージされるに違いない。
■関連記事:
【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(月次・〜2011年12月版)】
【電通と博報堂の種目別売上高前年同月比をグラフ化してみる(2012年7月分)】
これらの書籍が参考になります
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