多くの生物種でオスは短命な傾向があり、男性ホルモンの影響と見られている。少年の頃に去勢を施された宦官は、同時代の男性に比べて14~19歳寿命が長く、100歳以上も3人いたことがわかった。
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中国、唐時代の王族墳墓の壁画に描かれた宦官たち。Image:Wikimedia Commons
多くの生物種でオスは短命な傾向があり、男性ホルモンの影響と見られている。人間についても、少年期に去勢を施された朝鮮王朝時代の宦官は、睾丸のある男性に比べて大幅に長生きしていたことが、歴史資料の調査によって明らかになった。
「われわれの研究結果は、男性ホルモンが男性の寿命を短くしているとの主張を裏付けるものだ」。韓国の仁荷大学(Inha University)の生物学者ミン・ギョンジン率いる研究チームは、『Current Biology』誌に9月25日付けで発表した論文の中でこのように述べている。
動物を対象にした研究では、オスは若いうちに生殖活動にエネルギーを注ぐほうが種全体の進化においては有利だが、そのぶん個体としては早く死ぬ傾向がある可能性が指摘されている。
この「生き急ぎ、死に急ぐ」傾向は、テストステロンの影響によるものである可能性がある。テストステロンは、精巣の発達や筋肉の増大、攻撃性に関わる男性ホルモンだが、同時に免疫機能を抑制する働き(PDFファイル)もあると見られている。
人間においても、女性のほうが男性より長生きする傾向がある。女性ホルモン(エストロゲン)に長生き効果があることも指摘されているが、男性はハイリスクな行動をとることも多いので、男性ホルモンの影響で短命になるかどうかは明らかではなかった。
実験室の動物では去勢したオスのほうが長生きとされてきたが、人間での証拠はこれまでほとんどなかった。そこでミン氏の研究チームは、朝鮮王朝時代の宦官に関する歴史記録を用いて、テストステロンがヒトの寿命に及ぼす影響を実地に調べるという、他に類を見ない「実験」を行った。
14世紀から20世紀初頭にかけての朝鮮王朝には、宮廷に仕える、去勢された宦官が存在した(「内侍(ネシ)」と呼ばれる)。
2012年9月26日
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