腹壁破裂(2)大手術「よくがんばった」
長男・
手術室前の廊下。看護師が時折、無言で通り過ぎる。そのほかは水を打ったように静まりかえり、このときが永遠に続くかのように、長く感じた。心の中で何度もつぶやいていた。
「零次にはこの世に生まれてきた役割がある。それを果たすまで、絶対に死ぬはずがない」
手術室の赤いランプがフッと消えた。オペの開始から5時間が過ぎていた。
ストレッチャーに乗った零次君が扉から現れた。麻酔で眠っているようだった。顔は青白かった。
執刀医は、くたびれた表情で言った。
「成功しましたよ」
ホッとして、思わず全身の力が抜けた。
「零次、よくがんばった」
思わず天井を見上げた。あふれ出る涙が鼻の奥に流れ込んできて、ツンとした。
生後7か月目には再手術を受けた。ねじれた腸の一部を切開して、人工弁を付けるためだ。
これも生死にかかわる大手術だった。それでも、何とか乗り切ってくれた。
初めて我が子を抱いたのは生後11か月のときだ。とても軽かったが、ズシリと感じもした。
「これが、命の重さというものなのか」
(2011年11月17日 読売新聞)
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