ガムをかむことは顎(あご)の関節を強化するのによい、むし歯の予防になる、などという話をよく耳にします。本当のところはどうなのでしょうか。ガムにはどのような効果があるのでしょうか。
歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に詳しいお話を伺いました。
■キシリトールとは、甘味料のこと
――キシリトール入りのガムが歯の健康によいという理由を教えてください。
江上先生 「キシリトールは虫歯を予防する薬ですか?」などと聞かれることがありますが、キシリトールとは、「果実や野菜に含まれる甘味料を加工した糖アルコールの一種」です。糖アルコールとは「糖類に水素を添加した炭水化物」のことです。食品には、砂糖以外の甘味料も多く含まれますが、その一つだととらえてください。
キシリトールが砂糖と違うのは、「口の中で溶けるときに熱と反応してさわやかな冷涼感を起こす」、「甘さが砂糖と同程度」、「カロリーが砂糖の60〜75%程度」、「むし歯の原因にならない」という点です。
むし歯は、口の中の糖分が「酸」を生み出し、その酸が歯を溶かす、欠けさせることから起こりますが、キシリトールは酸を生まないため、むし歯をつくりません。
また、むし歯の原因となる歯垢(しこう・プラーク)を付きにくくします。
これらの点で、キシリトール入りのガムは歯によいものだと考えられます。しかし、キシリトールが入っているからといって、砂糖も多量に含まれた菓子を食べると、それはむし歯の原因になるので注意してください。
■かむリズム運動で精神のバランスを整える効果も
――ガムをかむことそのものは、健康によいのでしょうか。
江上先生 よいと言えます。その理由の一番は、「唾(だ)液」の分泌を促すからです。唾液はむし歯や口臭の予防をはじめ、口の中のあらゆる病気と闘うために必須で、トラブル予防にも力を発揮します。
次に、ガムをかむことで、最近増えている「ストレスによる食いしばりを防ぐ」ことができるというメリットがあります。緊張すると唾液が抑えられてしまうことを予防します。
さらに、リズミカルにかむことで、近ごろ問題になっている「かむ力の衰えを予防する」、「顎(あご)の関節の力を強化する」と同時に、「精神のバランスを整えるセロトニン神経を活性化する」という報告があります。
一説には、「ガムをかむことで足の筋肉を強化することができる」とも聞きます。例えば、「大リーグの選手がガムをかみながら打席に立つのは筋肉強化のため」というもので、ガムをかみながらウォーキングをする人も増えているとか。
欧米では、小中学校で先生も生徒もガムをかみながら授業をする風景があります。
日本では、ガムをかむ人を見てマナーが悪いと思いがちですが、咀しゃく力を重要視したい歯科医の観点としては、「口腔(こうくう。口の中)にいい影響を及ぼす成分入りのガムを日常的にかむことは健康によい」と考えています。特に、子どもや高齢者、イライラしがち、うつの症状がある、デスクワークの人には、ガムをかむことをお勧めします。
――健康効果が高いガムのかみ方はありますか。
江上先生 かみはじめの甘みなどの味が消えた時点で捨てないようにしてください。ガムをかむ効果はそこから始まります。長くかむようにしましょう。
かみ疲れたら、舌の上に丸めておいておきます。すると、唾液が出てきます。口の中では、異物を感じたら唾液が出るようになっているからです。
ガムはいつかんでもいいのですが、毎食後1日3回とデスクワーク中など、習慣付けるようにすることをお勧めします。
――ありがとうございました。
ガムをかむほど咀しゃくリズム運動を繰り返すことになり、むし歯予防に限らず、脳や精神状態にも良い影響を与えるということです。ぜひ続けたい習慣です。
監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・口腔外科の江上歯科院長。
江上歯科 大阪市北区中津3-6-6 阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分 TEL:06-6371-8902 http://www.egami.ne.jp/
(藤井空/ユンブル)