韓国のミサイル開発を制限してきた「韓米ミサイル指針」について、韓米両国は改正に向けた交渉を行っているが、現時点では、現在300キロに制限されている韓国の弾道ミサイルの射程距離を、800キロまで延長することで決着がつきそうだという。韓国は弾道ミサイルの射程距離について、済州島から北朝鮮全域を射程距離に入れることのできる1000キロまで伸ばすことを要求している。また、現在500キロに制限されている弾頭の重量についても、韓国各地の主要施設に照準を定めている北朝鮮のミサイル基地などを破壊するため、1000キロ前後にまで増やすことを求めている。これに対して米国は、射程距離についてのみ韓国の要求を一部受け入れ、延長を認める意向を示しているという。米国は宇宙ロケット開発に必要な固体燃料ロケットを、韓国が民間で開発することに激しく反対しているだけでなく、韓国が開発した短距離ミサイル用の軍用固体燃料ロケット技術を民間に転用することにまで反対しているという。
米国は「韓国がミサイル開発を進めると、周辺国を刺激する恐れがある」としているが、この主張には説得力がない。核弾頭を保有する北朝鮮は、16年前からすでに射程距離1300キロの「ノドン」ミサイルを、また最近は射程距離3000キロから4000キロといわれる新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」を実戦配備しており、特に「ムスダン」は弾頭の重量が650キロに達するという。さらに北朝鮮は、米国アラスカまで攻撃可能な射程距離6000キロ、弾頭重量1000キロの弾道ミサイル「テポドン」の開発も進めている。中国とロシアは射程距離1万1000キロ、弾頭重量2000キロの大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用が可能な3段の固体燃料ロケット技術をすでに保有している。
米国は、このようにミサイル大国に囲まれた韓国の手足を縛り付けておけば、東アジアに平和が訪れると主張しているが、これは正義に反することだ。また、米国は戦犯国の日本に固体燃料ロケットの開発を認めていながら、韓国にこれを認めればICBMに転用する可能性が高いとして、開発を阻止している。韓国の平和的な宇宙開発は根本から押さえ込まれているのだ。
東アジアでは核とミサイルで武装した中国と、アジア第2の軍事大国である日本が軍事力の拡張競争をしながら、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐって武力で対峙(たいじ)する危険な状況が続いている。ところが韓国だけが無防備状態のまま置かれるとすれば、これは大韓民国の生存権が脅威にさらされることを意味する。米国は韓国に対して最低限の防衛能力さえ持たせようとしないが、この状況が続けば、東アジア3カ国の軍事バランスに不均衡をもたらして危険な状況を招くだけでなく、韓米軍事同盟の維持・発展にもプラスにならないだろう。米国はこのことをしっかりと理解しなければならない。