尖閣諸島の国有化に端を発した緊張状態は、“日中一触即発”という最悪の事態に発展しそうな情勢だ。
「このままエスカレートすれば、中国は海軍の別動隊である海洋巡視船を派遣するでしょう。そうなれば日本も海上自衛隊を出せという話になる。最悪、軍事衝突になりかねない」（防衛省関係者）
すわ戦争……。そんな状況に右往左往しているのがＮＨＫや民放各局だ。
「イラン・イラク戦争の時と違って今度は国内の有事。さすがにフリージャーナリストに映像取材をお願いというわけにはいかない。となれば軍事衝突が起きた場合、誰を取材に行かせるのか？ 安全は保障できるのか？保険は？ と想定もしていなかった数々の難問が出てきたのです」（民放幹部）
これまで紛争地域などの危険な取材はフリーに“外注”。自局の社員記者を現場に派遣するのはレアケースだった。そのため、各局は“泥縄”ながら最悪の事態を想定したシナリオと、記者及びカメラマンの配備表を作成中だという。
しかし、「業務命令だから戦争取材に行けと言えるのか……」と自問自答を繰り返すのは某民放報道局のデスク。
「先の福島原発事故では日本テレビの現場デスクが被曝（ひばく）を恐れて現場を放棄した。この一件は各テレビ局の報道関係者に、実は一石を投じる大問題になったんです。その答えが見いだせないまま、再び記者を戦場に行かせられるのかという話です」
とはいえ、この間にも事態は進行。某キー局は戦争取材を専門とするフリージャーナリストを契約社員として採用。有事の際に局員として送り込む苦肉の策を講じたという。
一方、自局の記者派遣を決めている某局はというと、「基本は独身。万が一、命を落とした場合でも遺族が訴訟を起こさない旨を記した誓約書に一筆入れてもらうのが絶対条件になる。ただし、手当や保険、昇進などは大きく考慮する」（関係者）。
ＮＨＫをはじめ民放各局では、特派記者の志願者が後を絶たなかったという。有事は起きないに越したことはないが……。
（日刊ゲンダイ2012年9月24日掲載）