歴史地域文化学専攻 日本史学講座

研究分野

日本中世史、東アジア海域史

研究内容

中世日本と東アジアの国際関係史・交易史、文化交流史。室町幕府の外交システムや貿易構造、各国における外交儀礼のあり方、いかなるヒト・モノ・情報(文化や技術)が海を越えたのか、といった問題を考えています。

キーワード

室町時代、国際関係、対外観、東アジア海域、唐物

Lab.letters 研究室からのメッセージ

海でつながるアジア諸国の結びつき
断片的な資料から描き出す全体像

 東アジア海域史では、文字どおり海でつながる日本、中国、朝鮮、琉球の諸地域間の関係をさまざまな角度から検証していきます。そのためのキーワードは生産・流通・消費。流通で例をあげると、15世紀に日本と明とを行き交った遣明船には朝貢品や人件費、船の修繕費などの諸経費がいくらかかったのか。こんな問題が浮上してきます。自分が貿易商人になったつもりで史料を読み込み、パズルのピースのように組み立てていった先にどんな新たな歴史像が見えてくるのかを探っています。

 歴史学など、すでに多くの事柄が明らかになっていると思われがちですが、まだまだ日の目を見ていない史実が潜んでいます。先頃、日明貿易の渡航証明書兼貿易許可証である勘合の復元に関わりました。勘合の形や大きさといった基本的問題ですら、学界では未解明のままなのです。さまざまな断片的史料を突き合わせた結果、従来考えられてきたもの以上に大きいものであることが判明しました。決定案に至るまで、まだいくつものハードルがありますが、引き続きこの謎ときを楽しんでいこうと思っています。


lab040hashimoto_02.JPG  lab040hashimoto_03.JPG
実はこんなにも大きい勘合の復元。歴史番組の資料用に作成した。これでもまだ試案の段階(2009年7月現在)。

lab040hashimoto_05.jpg
その後、恩師村井章介先生の『世界史のなかの戦国日本』(ちくま学芸文庫)のために書き下ろした復元修正案(推定法量は縦81cm×横108cm程度;2012年2月現在)。詳しくは、同書p.25の解説文を参照

lab040hashimoto_06.jpg
勘合(=勘合料紙)の作り方を想像してスケッチしてみた画像。
(クリックすると大きく表示されます)

lab040hashimoto_04.JPG

(写真左)09年に訪れた中国浙江省天台山の石梁飛瀑。かつて日本人留学僧が目指した聖地に念願かなって立つ橋本先生。

spacer.gif

大きな難題を前に
思考をズラしていく技を知る


 研究で行き詰まらないためには、次から次へと"?(ハテナ)を生み出す力"が不可欠です。初めから狙いどおりの史料が手に入ることは多くないので、自分が知りたい大きな課題を細かく分解したり、迂回路をとることが必要になるからです。授業では、学生諸君が発想を転換させる技を身につけるお手伝いをしています。
 おしなべて目を剥くような新説よりも、地に足のついた確実な論文を書く研究者を目指してほしいですね。一緒に頑張りましょう。
(聞き手・構成 佐藤優子)

<メッセージ>

 中世の日本と東アジアの関係について、一緒に研究してみませんか? さいわい、小さい所帯の研究室なので、こまめに対応、親身の指導ができます。また、伝統ある本講座には、さまざまな文献や史料が備わっているので、幅広く学ぶたい人のニーズにも応じられます。
 私自身は室町・戦国期日本の国際関係史や14〜16世紀の東アジア海域史を勉強していますが、それ以外の時代・分野も歓迎です。ああだこうだと思案しながら、問題発見能力を磨き、議論を詰め、最善の解決・結論に向かって突き進む、そんな知的冒険をともに堪能しましょう。
 そして、大学周辺は、遊ぶところが少ないので、しっかり落ち着いて勉強できます! 家賃も安く、交通至便、最近は雪も少なくて、札幌はとても住みやすいところですよ。



おすすめの本

・村井章介『中世倭人伝』(岩波新書、1993年)
「国境をまたぐ地域」や「マージナル・マン」といった概念を提示。知的興奮を誘う 内容で、引用史料の訓読がまた奥深い。私の研究テーマを決定づけてくれた本です。
・苅谷剛彦『知的複眼思考法』(講談社+α文庫、2002年)
「誰でも持っている創造力のスイッチ」という副題が示す通り、問題発見能力を開発 するためのコツを満載している。ぜひ一回は読んでみて欲しい。
・小坂井敏晶『増補 民族という虚構』(ちくま学芸文庫、2011年)
民族同一性(ナショナル・アイデンティティ)の脱構築を図る刺激的な書物。本当に面白い。その斬新な発想や平明な語り口を、われわれ歴史学徒も見習うべきだと思う。
・村井章介『世界史のなかの戦国日本』(ちくま学芸文庫、2012年)
16世紀の列島史を、世界史のなかに有機的に定置する快著。コシャマイン戦争・古琉球史・後期倭寇・朝鮮出兵(文禄・慶長役)など、実に多くのテーマを1冊に凝縮しており、お得感たっぷり! 文庫版解説は私(橋本)が執筆しています。

略歴

筑波大学附属高等学校卒、東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科(日本文化研究専攻)修了、博士(文学)、独立行政法人国立博物館・九州国立博物館(設立準備室時代を含む)研究員を経て現職。

主要業績

・『偽りの外交使節――室町時代の日朝関係』(単著、歴史文化ライブラリー、吉川弘文館、2012年)
・『中華幻想——唐物と外交の室町時代史』(単著、勉誠出版、2011年)
・『中世日本の国際関係――東アジア通交圏と偽使問題』(単著、吉川弘文館、2005年)
・『日朝交流と相克の歴史』(共編著、校倉書房、2009年)
・『前近代の日本列島と朝鮮半島』(共著、山川出版社、2007年)
・『海域アジア史研究入門』(共著、岩波書店、2008年)
・『境界から見た内と外』(共著、岩田書院、2008年)
・The East Asian Mediterranean – Crossroads of Knowledge, Commerce, and Human Migration.  Wiesbaden: Otto Harrassowitz 2008 (a joint work)

所属学会

史学会、歴史学研究会、歴史科学協議会、日本史研究会、北大史学会、九州史学研究会、古文書学会、東方学会。

兼務職

関連サイト

業績リスト等
(東京大学史料編纂所藤原重雄氏のWebsite中。ご厚意に感謝)
人文学カフェ「渡る使節はニセばかり」
(北海道大学オープンコースウェア)

研究室

513

TEL

011-706-2869

E-mail

hashi-jh*let.hokudai.ac.jp 
(*を半角@に変えて入力ください)

FAX

011-706-2869

担当授業(大学院)

日本史学特別演習、日本史学特殊講義

担当授業(文学部)

日本史学演習、日本史学概論

担当授業(全学教育)

一般教育演習(フレッシュマンセミナー)

ページ最上部へ戻る