利益重視への転換を示す
ドコモより高いLTE
今秋からスタートする次世代高速無線通信LTEサービス。執筆時点では明らかではないが、新型iPhoneに搭載されるとみられている。
とはいえ、その価格がソフトバンクらしくない。なぜなら「月額5985円」とドコモの「月額4935円」よりも約1000円高いからだ。
ソフトバンクは、通話定額や端末代金を実質ゼロ円にするなど価格破壊によって契約数を伸ばしてきた。それを百八十度転換してきたのだ。理由を読み解くヒントは、今年2月の決算発表で掲げた「16年度に営業利益1兆円」というスローガンにありそうだ。
図(3)のように、ソフトバンクの11年度の連結営業利益は6752億円。これを1兆円にするためには、全体の約6割を占めるモバイル通信の利益を少なくとも6600億円程度にまで引き上げなければならない。
目標の実現には、契約数を伸ばしながら、契約単価を上げ通信料収入を増やす必要がある。コスト構造が今のままだとして試算すると、通信料収入は2.2兆円規模が必須。現状の契約単価であれば5年間で契約を約1500万件増やさなければならないし、契約単価を4500円にまで引き上げたとしても1000万件以上増やすことが求められる(図(4))。
となれば、LTEなど新サービスで契約単価を上げることは欠かせないものの、業界内で料金水準の高いドコモより価格を上げては訴求力が低くなるというジレンマを抱えている。
純増数で勢いを演出し、低価格路線を貫いてきたソフトバンクも、利益重視へとかじを切った今、ビジネスモデルの転換を迫られているのだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
「週刊ダイヤモンド9月22日号掲載」