中世物映画の中にはいろいろな攻城兵器（投石器やらバリスタやら）が登場してきます。（最近ではキングダムオブへブンですね）アレは何だろ？と思った方はいらっしゃいませんか？そこで今回はこの攻城兵器について説明していきましょう。



攻城兵器の種類と用途


攻城兵器とは

　最初にまず簡単に攻城兵器について説明しよう。攻城兵器とは字のごとく城を攻める為に用いられた機械のことである。通常、城は高く頑丈な石で出来ていた城壁で守られていた為、城を攻略するにはいかに城壁を突破するかが重要であった。そこで様々な攻城兵器が生み出されていった。総じて扱うのには難しく熟練の職人がこれを操作していた。攻城兵器は恐るべき破壊力を持っており、篭城側にとっては大変な脅威だったがこれらは組み立てるのに広い場所が必要な上、大量の木材を運搬しなければならなく、また何らかの事情で運搬できなければ普通は近場の森から切り出すがこの森がなければ材料すら調達できないという制約も数多くあった。


破城槌



　　この攻城兵器は既に古代オリエントの時代から存在していた。破城槌は最もシンプルな攻城兵器なのだ。左図のように木組みをし、重い大きな丸太を鎖でぶら下げる。この丸太は約３０ｍもあり、先端にはしっかりと鋭い鉄具がついていた。これに車輪をくっつけ、城壁に近づいたときに矢で操作兵がやられないように右図のように木製の屋根をつけた。この屋根にはさらに敵の放火攻撃に耐えられるように水でぬらした皮を張る。中には３０〜５０人の操作兵が入り、この非常に重い攻城兵器を城壁まで押し、障壁の一箇所を丸太で振り子のように突いてゆくのである。
　しかし城壁の前に堀があるとき、この兵器は使用できなかった。そこでまず投石器などで堀を木や石、牛馬の死骸などで埋めてから使用したのである。また城が急勾配の上にあった場合、この兵器は使用不可能であった。城壁の前では組み立てが出来ないし、かといって非常に重いこの破城槌を押して登るのは不可能だったからである。


　カタパルト（投石器）




　この攻城兵器はローマ・ギリシア時代に登場し様々な改良を行って、城攻めに大きな威力を発揮するようになったものである。これは大砲が登場する中世後期まで使用され続けた。
　これは腕木がはねる力を利用して石等を飛ばす兵器で、腕木を反らせるには万力を回してロープをねじらせていた。そしてロープがねじれた状態から戻ろうとする力＝復元力を使って石等を飛ばしたのである。このロープは馬の毛や動物の腱をロープによりあわせた物で普通のロープよりも復元力が高かった。
　　

カウンターウェイト式天秤型投石機（トレビュシェット）




　この投石器は上記で述べたカタパルトと違って中世のフランスで発明された。天秤を応用したもので左側の籠には９０００ｋｇ以上の錘が入っており、反対側でロープをとめておく。そうすればローブを離すだけで錘は下に落ち、反対側は勢いよく跳ね上がる。攻した仕組みはカタパルトよりも単純で作りやすく、しかもカタパルトよりも重いものを飛ばせたので投石器の主役となった。石を置く部分は皿型と袋形があり、袋形のほうが主流であった。袋は片方が外れやすくなっており頂点に達した瞬間にはずれ、搭載物が飛んでゆくのである。
　上記で説明したカタパルトとこのトレビュシェットは命中精度が悪かったがそれでも数撃てば城壁や人馬に損害を与える事が出来た。また相手に恐怖感も与えるところが出来た。想像してみればわかるだろう。こちらに目掛けて大きな石が何百も降り注ぐところを！
　またこれら投石器は石だけではなく、疫病をはやらす為に牛の死骸、汚物を投げ込んだり、敵兵士を混乱させる為に蜂の巣を投げ込んだりした。また火矢を射るのに呼応して油の入ったつぼを投げ込んだりもした。投石器は構造物を破壊する目的と人馬に被害を与える目的、両方に利用されたのだ。



バリスタ




バリスタは構造はカタパルトに似ている。ロープのねじれの復元力という同じ原理を使っているのだ。ただ違うのはバリスタは大型な弓のようであったということだ。「飛ばす」のではなく、「撃ち出した」のだ。（このバリスタに鉄製のバネをつけたのがスコーピオンと呼ばれ、ローマ時代末期に考案された。）
　バリスタは投石器と比べ、命中精度が高かった為、主に人馬に被害を出すことを目的とした。丸く整形した石や専用の大型の矢、火矢なども発射した。火矢は重い鉄の矢じりを芯にして枯れた木の葉、油をたっぷり染み込ませた布、矢足をしっかりと巻きつけたもので普通の火矢よりも消火するのが大変だった。


攻城塔



　
　確かに攻城兵器は相手方の士気、兵力等を下げるのには充分すぎるほど役に立った。しかしこれだけで勝負は決まらなかった。それゆえ、城を包囲している側は最後に勝負を決する突撃を試みる。今までの攻撃で城壁が崩れていたり、突破口が開いていたのなら良かったが敵の妨害にあって、突破口を作れなかった場合、この攻城塔が登場するのである。これは移動する大きな塔で城壁よりも高くならなければならなかった。時には高さ３０ｍにも達した。この塔は何階かに分かれており、各階に弓兵が配備されていた。また最上階には突撃を待つ屈強の兵士が待機しており、うまく城壁に隣接し、最上階にある橋が城壁にうまくかかると兵士達は一気に城壁になだれ込んだ。また下の階からもはしごを伝って続々と新しい兵が城壁に乗り込んでいった。攻城塔に接岸されるということは城に入り口が出来たということと同義なのだ。攻城等の中には最下層に破城槌が内蔵されていたり、最上階にカタパルトが搭載されていることもあった。
　しかしこの巨大な攻城機を移動させるのは用意ではなく、５００人近い男たちが押したり引いたりしなければならなかった。また転倒の恐れもあり、危険でもあった。