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'12/7/5

「難所に道を」明治の陳情書




 島根県邑南町井原の国名勝断魚渓(だんぎょけい)に道路を整備するための補助金を求めた明治時代の陳情書が、近くの民家から見つかった。区間ごとの工法や見積もりも提案。地元は陰陽を結ぶ国道の歴史や土木技術、地域の暮らしなどを知る貴重な史料とみている。

 陳情書は「土木費地方税御補助願」(1886年提出)でB5判18ページ。地区の稲積慎吾さん(75)が1月、自宅で見つけた。明治時代に全国で断魚渓の魅力を紹介した地元漢学者野田慎たち20人が、当時の籠手田(こてだ)安定知事に宛てた。

 井原では当時輸入鉄の普及でたたら製鉄が衰退。邑南町から日本海側へは馬車や荷車が通れない険しい山道しかなく、「物産繁殖ノ良薬」として、断魚渓に6・3キロ、幅3・5メートルの道路整備が必要と訴えている。費用1万700円のうち9300円の補助も求めた。周辺3村の人口や耕作面積、農産物収量も記してある。

 道路は野田慎の指揮で1899年に開通した。県の補助を受けられたかは分かっていない。郷土史家で町文化財保護審議会前会長の藤田典幸さん(84)は「地域の開発史が分かる興味深い文書。野田慎の断魚渓への熱意も伝わる」としている。

【写真説明】発見した陳情書を持つ稲積さん




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