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【社説】

40周年式典中止 中国の本音を見極めよ

 日中国交正常化四十周年の式典が中止となる。治安の安定が言われるが、中国の対日圧力の一環だろう。反日デモ沈静化後、政府は対話の糸口をつかむため、十分な外交努力をしてきたのか。

 中国の国営新華社通信は、尖閣諸島の国有化が「しかるべき雰囲気を壊した」と伝えた。中国がこの問題でさらに強硬な姿勢を続ける意思を明確に示したといえる。

 満州事変のきっかけとなり、中国の「国恥日」とされる十八日の大規模デモを境に、中国は過激な活動の抑え込みに入っていた。

 その後、中国外交筋は「式典は開催する」との見通しを示していた。わずか数日で対日姿勢を一転、さらに硬化させたといえる。

 背景には、日本側から対話を求める具体的な動きがなかったことに対する不満があろう。

 中国の激しい反発について、野田佳彦首相は「一定の摩擦が起こることは考えられた。ただ、この規模は想定を超えている」と述べた。認識が甘すぎる。

 反日デモ発生から式典中止に至るまで、政府に、正確な見通しと深い考えに基づく外交戦略が欠けていることは実に残念である。

 反日デモ沈静化前後も、中国は北京での日本書籍出版禁止や港湾での税関検査の厳格化などの対抗措置を打ち出した。

 決定的な対立を避ける形で、日本側に尖閣問題での歩み寄りを迫っていたともいえる。

 民主党政権は党代表選など国内政局に振り回され、そのシグナルに敏感に反応しなかった。関係改善の好機を逃した責任は重い。

 中国も国内事情優先が露骨である。尖閣問題で中国の最高指導部九人のうち八人が強硬姿勢を鮮明にしたという。異例なことだ。

 秋の党大会を前に弱腰姿勢を示せないという事情はあろうが、対日カードの過度な利用は、日中友好を願う日本人の間にも、失望感やいらだちを強めかねない。

 中国は「日本が実際の行動で、共通認識に立ち戻り、対話による解決を」(外交筋)との姿勢だ。

 政府は、中国の揺さぶりと本音をきちんと見極め、話し合い解決へ、もっと知恵を絞るべきだ。自民党総裁選の最中でもある。対中国強硬論ばかりが高まるのは危険である。

 多くの民間団体は訪中を続ける意向だ。外務次官派遣も遅きに失した感はあるものの、政府はあらゆるパイプを総動員して、対話の糸口をつかんでほしい。

 

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