'12/9/26
「街の顔が消えてしまう…」
「15万人都市から街の顔が消えてしまう」―。周南市唯一の百貨店、近鉄松下百貨店の閉店が明らかになった25日、開店から50年間連れ添ってきた市民や商工関係者は大きなショックに包まれた。突然の閉店方針を知らされた従業員には雇用への不安も広がった。
「子どものころから買い物はこの店。結婚後はお歳暮を選びに来ていたのに…」。周南市橋本町の主婦村上宣子さん(66)は店舗前で閉店の知らせを聞き、肩を落とした。「この袋と包装紙は特別。なくなるのはさびしい」
1962年に「松下百貨店」としてオープン。半世紀の歴史を持つ同店も、全国的な百貨店苦境の例に漏れず、近年は売り上げ不振に苦しんでいた。
同店にパート勤務する20代女性は「正直に言うと、とうとう決まったかという感じ。最近はお客様も少なく、いつかは閉店するのではと心配していた。心の整理はまだできない」と声を潜めた。
JR徳山駅周辺では大型店の撤退が相次いできた。近くで楽器店を経営する河井浩之さん(55)は「徳山の町の火が消えるよう。最近は土日も人通りが少ない。周辺の店舗が連鎖的に撤退しなければいいいが」と話した。
徳山商工会議所の藤井英雄会頭は「駅前商店街の中心的な存在。買い物の利便性が低くなり、市民の消費にも影響しかねない」と残念そう。「市とも連携して対策を考えなければ。ただ、突然のことでどう対応するべきか…」と戸惑いを隠せなかった。
周南市への連絡はこの日午後。電話で閉店を知った木村健一郎市長は「非常に残念。何とか残す方法はないのか」と厳しい表情で話した。
【写真説明】来年2月28日で閉店することが発表された周南市の近鉄松下百貨店(撮影・山本誉)