今年1~3月期におけるスマホ・携帯電話出荷台数で、世界ナンバーワンのシェアを獲得したのが韓国のサムスン電子だ。
アップル(アメリカ)、ノキア(フィンランド)、RIM(カナダ)、HTC(台湾)などと並ぶこの分野でのトップ企業であるサムスンだが、総合電気機器メーカーとして見ても、世界有数の巨大グローバル企業として知られている。
だがそのサムスンにも“構造的な弱点”があると、家電ジャーナリストのじつはた☆くんだ氏が指摘する。
「工業製品作りに絶対欠かせない製造機械(切削工作機械)は世界の製造業の根底を支える“根”にあたる技術の部分ですが、その製造は日本とドイツの2ヵ国で約50%、さらに、猛追する中国にアメリカとイタリアを足した5ヵ国で80%を占めているのです」
かつては、白物家電やAV機器など総合電子機器メーカーとして幅広く展開していたサムスンだが、2000年代に入ってからは、半導体や液晶などIT系の先端技術に資本を集中投下。それによって現在の地位を築いたわけだが、実はそこにこそサムスンの弱点があるという。
「地道に技術を積み重ねた精密加工機械や精密測定器なくして、世界のメーカーは新製品を生産することができません。実際、iPhoneやiPadなど超高精度&高密度製品の本体加工も、日本メーカーの機械を使わないとできない。今後、スマホやIT機器などが小型化、高密度化されればされるほど、その需要は増えるでしょう。ところが、サムスンはデジタル一眼のレンズ研磨加工や放送用マイクロフォンのミクロ単位のリブ加工など、超精密加工の分野を苦手にしています」(じつはた氏)
なぜサムスンは、そういった分野での技術開発に力を入れないのか?
「企業内研究のサイクルが短いサムスンには難しいのでは。目先の利益に結びつかない研究者はさっさとクビ。研究期間は4年が限度。サムスンが特許訴訟を多く抱えるのも、成果を急がせるがゆえ、既存の発明の上塗りや、開発途中で、結論が出ないままでの出願が多いことが理由だといわれています。開発と熟成に最低でも10年単位の時間が必要な精密加工機械の分野に手を出す余裕はないと思います」(じつはた氏)
だが、現在サムスンが世界の電気機器メーカーのなかで築いている半導体や液晶での優位性は、すぐには揺らぐものではないように思えるのだが……。大手証券アナリストのA氏が、この見方を否定する。
「その優位性が薄氷にすぎないということはシャープが証明しましたよね(苦笑)。この業界は、昨日の最先端が明日の普及品となる日進月歩の世界。イノベーションをアップルと、半導体性能と価格を中国、台湾メーカーと競わねばならないサムスンは、資本勝負の“二面戦争”を強いられることになります」
構造的な弱点を抱えたサムスンは、現在アップルと係争中の多くの裁判で勝利しない限り、前途は厳しいといえる。