Date: 2005年4月26日
Title: 戦車の燃費
陸上交通手段で、最も燃費が悪いのはなにか。
これは、おそらく戦車である。交通手段といえるのかどうかはともかくとして。
陸上自衛隊に装備されている代表的な戦車である「90式戦車」を例にとると、エンジンは水冷2ストローク10気筒のディーゼルで、搭載燃料は1075リットル。航続距離は約390キロメートルである。計算してみると、
390km÷1075リットル=約363メートル/リットル
である。(笑)
写真は90式戦車 出所:防衛庁
少しメカに詳しい方なら、2ストロークのディーゼルエンジンというのに、まずびっくりであろう。
私なりに少々、解説させていただくと、レシプロエンジンのうち、ガソリンエンジンには1気筒あたりの排気量に限界がある。混合気を吸入し、点火プラグで燃焼するという方式では、どうしても燃え方にムラができてしまうからだ。おおざっぱに言うと、1気筒あたり700CCくらいがその限界である。
それに対して、ディーゼルエンジンには限界はない。これは空気だけを吸入して圧縮。その時に発生する熱で燃料を燃やすからだ。だから、大きなレシプロエンジンは、必ずディーゼルとなる。必ずだ。
これは言うまでもないことかもしれない。バスにしても船にしても、大きなエンジンはみんなディーゼルである。それは、そういったところに原因があったのだ。
でも、ディーゼルエンジンにも弱点がある。それは高出力、高回転のエンジンが出来にくいというものである。しかも、回転数の範囲が狭い。船や発電機のように、一定の回転数でずっと回し続けるというのが、ディーゼルエンジンは得意なのである。
しかしながら、戦車ではそんなわけにはいかない。野を越え、山を越え、道なき道をひたすら走り続け、戦うのでなければ意味がない。ということで、2ストロークのディーゼルエンジンという方式が使われるのである。
2ストロークディーゼルエンジンの原理
上の図でいうと、Aの掃気・吸気に限りなく無理があるように見える。燃焼して膨張した直後に、このようなことが出来るのだろうか。これを実現するのが過給であり、ターボチャージャーやスーパーチャージャーで、一気にシリンダー内に新鮮な空気を押し込むのである。
ということで、2ストロークのディーゼルエンジンは、4ストロークのものに比べて3倍ものパワーを出せる。現在では、戦車のほか、一部の高速船などに使われている。
1リットルあたり約363メートルという燃費に、思わず笑ってしまったが、90式戦車の燃費はむしろいい方で、ロシアなどにはガスタービンを使った戦車がある。その燃費は1リットルあたり100メートルか200メートルくらいである。(爆)
いずれにしても、戦車の燃費はきわめて悪く、納税者としては、必要性もないのにパレードなどして欲しくないなあ、と、思ってしまうのである。