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国会トピックス

第176回臨時国会における代表質問 谷垣禎一総裁

平成22年10月6日

1.はじめに

 私は自由民主党・無所属の会を代表して、先般1日に行われました菅総理の所信表明演説について質問致します。

 一昨日、民主党・小沢元幹事長の政治資金規正法違反の疑惑に関して、起訴すべきとの検察審査会の議決がなされました。国民による2度にわたっての議決は極めて重いものがあります。菅総理、あなたが代表選で「クリーンでオープンな政治」ということを徹底して掲げたことを国民の多くは明確に記憶しております。これまでの民主党においては政治とカネをめぐる事件が頻出してきたのが実態ですが、今こそ有言実行の時です。総理は充分に指導力を発揮し、まずは小沢元幹事長が証人喚問に応じて国会で説明責任を果たすこと、併せて、鳩山前総理が国会へ資料を提出することなど、国民が納得のいく決着に向けて、全力を尽くすことが当然の責務かと考えますが、その覚悟の程を伺います。

 さて、菅総理は先般の民主党代表選により再選されました。この代表選においては、「親小沢」か「反小沢」・「脱小沢」かが最大の焦点であり、代表候補としての菅総理からは、総理の座への執念こそ感じましたが、この国をどう導きたいのかという裂帛の気合や揺るぎない信念というようなものは一切感じられませんでした。政策的にも受け売りが多く、研ぎ澄まされた内政・外交の基本方針が示されることはありませんでした。そうした菅総理の特徴は、現下の課題の論点メモとも言うべき所信表明演説でも遺憾なく発揮されています。
そもそも、菅総理は参院選の前に、為政者として苦渋の選択の最たるものであるべき国民への負担増のお願いを「自民党が消費税率10%と言っているので、それを参考にしたい」という極めて安直な思い付き、抱き付きによって済ませようとし、国民の信頼を失う結果となりましたが、そのとき見せた定見のなさこそが菅内閣の唯一一貫した姿勢です。
今回起きた尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を巡る一連の経緯は、まさにこうした菅政権の根本的な欠陥が外交面で現れたものに過ぎません。すなわち、菅政権には、日本の安全保障の根本がどういうことなのか、どういう形で国民の生命・財産を守るのかという点について確固たる信念が欠けており、このことこそが、今回、政府が無責任で筋の通らない対応に終始していることの背景にあります。信念の代わりに存在するものは、自民党政権の内政・外交、政治手法までの全てを否定すればそれで良しという民主党政権の考え方であり、無責任に他者に責任転嫁すれば全て済むという万年野党体質であります。これらの幼児性こそが、国政の混乱、停滞、後退をもたらしております。
菅改造内閣は、代表選直後こそ、「反小沢」の達成感・高揚感も手伝って、高い内閣支持率を記録されました。しかし、中身がなく雰囲気だけで作られた内閣やその支持率が持続可能なはずはなく、すでに崩壊の序曲が始まっています。そもそも、菅政権の政権としての正統性は既に崩壊しています。代表選において、昨年、国民の負託を受けて政権を獲得したマニフェストを、その党の代表たる菅総理自らが全力で否定するともとれる言動をされていたことが、その証左です。
それに加え、我々は、国の主権や国民の生命・財産をきちんと守る意思と能力のない者が為政者の座に居座り続けることほど国民にとって不幸なことはないと考え、今国会を通じて、菅総理の総理としての資質、菅改造内閣の内政・外交両面にわたる政権担当能力を厳しく問うていきます。

2.尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件

 まず、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件についてお伺いします。

 那覇地検は、さる9月24日、海上保安庁の巡視船に衝突したとして公務執行妨害で逮捕・勾留していた中国人船長を処分保留のまま釈放を決定いたしました。那覇地検次席検事は、「国民への影響や今後の日中関係を考慮した」とその理由を説明していますが、こうした日中関係への配慮については那覇地検が判断できる能力も判断すべき権限もないことは明らかであり、この発言は、むしろ地検として、政治判断が背景にあったことを暗に示唆したものと受け止める方が自然です。
しかし、政府は、釈放の際に行われた「今後の日中関係への考慮」という判断は、あくまで那覇地検なり上級庁である最高検の責任において行われたものであり、そこに政治介入は一切なかったとの欺瞞的説明をされています。これが事実であるとすれば、検察官僚が重大な外交関係を含む総合的な国益の判断を、政治を排除して独自に行ったということになります。
菅政権から透けて見える態度は、検察への責任転嫁という無責任極まりない姿勢です。我々は政治介入があったらそれ自体が直ちに問題だというつもりはありません。むしろ、政治判断を行わなかったという説明それ自体が、責任回避そのものではありませんか。
もう一度申しますが、検察当局に判断・責任を本当に丸投げしたということであれば、今回日中関係の危機回避に向けて泥をかぶってまでギリギリの思案を巡らせたのは、那覇地検や最高検であるということになります。政治主導を普段はあれほど呼号する菅内閣において、国益全体に関わる本件について、検察当局に判断・責任を丸投げしたこと、あるいは丸投げしたという説明をすること自体、まったくもって無責任と考えますが、ご見解を求めます。

 菅総理は、所信表明演説において、内閣として取り組む重要政策課題の1つとして「主体的な外交」を掲げておりますが、わが国としての外交の主体性を論ずる以前に、政府部内で政治家が主体性なく、外交を検察に丸投げしているのではお話になりません。
そもそも菅政権には、先ほどの消費税率10%発言に留まらず、定見なく相手に抱きついて責任を押し付けてくる悪癖があります。今回は、郵便不正事件で大阪地検特捜部の主任検事が証拠隠滅容疑で逮捕され、検察当局の威信が失墜したことを奇貨として、検察当局に抱き付いて責任を押し付けたのだという見方も成り立ちます。
税制や外交という重要案件において、このような責任転嫁や保身的な取り繕いが存在するところがこの政権の限界であり、信をおけぬ所以です。
いずれにせよ、真相を明らかにすることが重要であり、那覇地検次席検事及び検事総長の証人喚問を求めます。勿論、一般論としての検察捜査の独立性に十分配慮した上で、外交案件が密接に絡んだゆえの特例扱いとしてこれを要求します。総理の前向きな答えを求めます。

 また、漁船衝突時の海上保安庁のビデオについて、なぜ最初の段階で公開しなかったのでしょうか。国際世論を喚起し、中国における反日感情のヒートアップの歯止めとするために、初期の段階で公開するという必要があったはずです。公開が遅れた結果、国際社会に対して中国の不当性を明確に訴えることができていません。もちろん、刑事訴訟手続き上、公開には公益上の必要性が求められるわけですが、政府として自らの責任をもって公益性を判断し、捜査当局に公開を要請する途はあったはずです。そのような政治的な判断をひたすら先送りし、時宜を逸してきたとすれば、それもまた問題です。そうした不作為を含めて、これまでの非公開という対応について、政府部内でどなたが責任を持っておられるのか、明らかにしていただきたく存じます。なお、遅きに失した感はありますが、今からでも公開すべきと考えますので、早急の対応を求めます。ついでながら、総理はこれをご覧になっていないとのことですが、これほどの重大事案の証拠をまだ吟味しておられないとは驚くほかはないと申し添えておきます。

 次いで米国に対する外交上の努力がどのように行われたかが問題です。結局は、鳩山前内閣の普天間基地移設問題を巡るダッチロールの結果、日米の信頼関係が大きく毀損されたことが、今回の事件において米国ひいては国際世論の十分なサポートを得られなかった原因の1つとなっています。より深刻な疑問は、中国が最近の日米関係の希薄化を見て、一段と攻勢をかけてきたのではないかということです。沖縄県民の理解をどう得ていくのか等、普天間問題の早期解決への具体策と決意と併せ、この点に関する総理の見解を求めます。また、仲井眞知事は既に県外移設を求めていると承知しますが、この点についても総理の考えを示してください。

 また、11月のオバマ大統領の来日直後から、米国海軍と海上自衛隊を中心に大規模の統合演習を行うとの報道があります。尖閣諸島の事案を想定したものとされていますが、わが国がどういった形でこれに関わるのか、総理としてはこの件をどうご認識かお聞かせ下さい。

 中国との関係のあり方についても大いに疑問を禁じ得ません。昨年12月には、鳩山前政権の下で、当時の小沢幹事長が約140人の訪中団を率いて胡錦濤国家主席と面会したり、従来の慣行を破る強引なやり方で習近平国家副主席の天皇陛下との会見が設定されたという出来事がありました。あれは一体全体何だったのでしょうか。そこまでして構築したはずの中国との関係が今回の事件で生かされた形跡はまったくありません。むしろ、中国には、日本という国は圧力をかければ最後には屈服するという間違った教訓を与えたということではなかったでしょうか。小沢元幹事長が代表選で戦った相手であることは言い訳になりません。外交とは政府・与党のあらゆるルートを使って働きかけるものであり、国益を懸けた外交上の駆け引きの場面ですら一致団結できないのでは、政党の体をなしているとは言えません。その意味では、鳩山前総理が、「私だったら事件直後に、中国の温家宝首相と腹を割って話し合えた」などと語っているのはまさに噴飯ものです。訪中団の一員として胡錦濤主席と写真に収まった与党議員の方々は、今回の国家的危機においてどのような役割を果たされたのでしょうか。昨年来の経緯に鑑み、政府のみならず、党全体で責任を負うべきと考えますが、総理の御見解を伺います。

 それにしても、菅総理が所信表明演説で掲げた「主体的な外交」「日米同盟」「日中関係」いずれも覚束ないようでは政権を担う資格がありません。中国海軍が著しい近代化を進め、南シナ海における権益を核心的利益と位置付けている様子も見られる中、これを脅威として顕在化させないためにも、強固な日米同盟を維持していくことこそがわが国の外交戦略の根幹と考えます。民主党政権はその文脈を読み誤り、国内政治と東アジアを重視するあまりに米国との信頼関係を損ねてしまいましたが、今度は中国との関係もこじれにこじれさせました。そして何より、国家の外交の判断・説明・責任を政治が逃げて他者に押し付ける。あまりの外交音痴のために、わが国の国際社会における立ち位置は危うくなるばかりです。これはひとえに政権の構造的問題と考えます。「政治主導」の美名のもとに、各省庁に蓄積された情報やノウハウ等を活用しなかったアマチュア外交によって、確たる展望も無いまま場当たり的な対応に終始したことが、今回の失態を招いた要因ではないでしょうか。普天間問題の迷走による日米同盟の弱体化も同様であり、それが今回の中国の行動や、それに続く北方領土に対するロシアの動きまで誘発することにもなっており、わが国の外交上の損失は計りしれません。
また、突然のASEM出席にあたって、多数国の理解と支持を得て中国と対峙するという自国の外交意図を事前に明らかにしてしまっていたように思われますが、これも外交感覚の欠如を物語っています。国会日程を動かしてまで出席されたのですから、いかなる成果があったのですか。フジタ社員の残る1名の釈放についても、中国側に毅然として臨むべきでありましたが、ASEMの立ち話において温家宝首相に当然強く働きかけたのでしょうか。総理の具体的な説明を求めます。

 もはやこれ以上、国民の生命・財産、わが国の領土を危機に晒すことは許されません。自民党は政権の座こそ失いましたが、建設的な日米関係、日中関係の構築に日夜心血を注いだ先人達の知恵と人脈が脈々と受け継がれており、高い見識をもった同僚諸君が様々なレベルで交流を続け、次代を担う研鑽を着実に積んでおります。政権を担う場合には、国民の皆様に今回のような釈然としない思いを抱かせず、仮に国民にそうした思いを強いることが起きてもきちんと説明責任を果たす姿を国民にお示しすることが最低限必要と考えます。わが党としては、いつでもわが国の主権外交を担う用意も覚悟もあることをここに申し上げ、本件に関する質問を終わります。

3.経済財政運営

 次に、経済対策・補正予算についてお伺いします。
政府・与党は、補正予算について、野党との意見交換を重視する姿勢を示されています。しかしながら、中国漁船衝突事件における検察当局への抱き付き同様に、補正予算の編成まで抱きつき、責任を野党に負わせようということであれば、拒否いたします。
より端的に申し上げます。自民党は、中長期の財政健全化目標を盛り込んだ財政責任法を3月に提出しましたが、その具体的手段である税制抜本改革についても、我々が政府・与党であった時代に、23年度までに法案を提出するというスケジュールまで盛り込んだ21年度税制改正法附則第104条を成立させております。これらの事情を前提としてわが党が主張する補正予算案の規模・財源は、いわば財政責任に裏打ちされたものと自負しております。他方、政府の方は、お得意の抱きつき戦術で「財政運営戦略」においてわが党と同様の財政健全化目標を示しはしたものの、拘束力の程度に疑問があるほか、消費税を含む税制抜本改革に対するスタンスが曖昧であるが故に、達成手段のない目標に堕している印象が否めません。そうした状況のままでは、仮に政府・与党が我々の提案する補正予算の内容・規模・財源を丸呑みしていただいたとしても、政府で実行される段階では財政規律に欠けたバラマキと言わざるを得ず、しかも我々がそのバラマキの片棒を担がされた格好になり、到底耐え難いことです。
そこで我々は、補正予算の協議の大前提として、まず財政について共通の認識に立つ必要があると考えており、前国会で店晒しにされた財政責任法の速やかな成立を求めたいと思います。この点に関する菅総理の考えをお聞かせ下さい。

 次いで、21年度税制改正法附則第104条についてお伺いします。私が本年6月の代表質問でそのスケジュールを遵守されるか伺った際には、23年度末の期限ギリギリになって扱いをどうするか検討するようなことを述べられましたが、すでにこの法律の規定が政府を拘束している中、その誠実な執行の義務を負うべき内閣の総理大臣の答弁としては不適当と考えます。この規定に則って政府が対応するべきということは、わが党の財政責任法の中核的内容でもあり、今後の財政運営について協議していく際の信頼関係の大前提と考えます。改めてこの規定に則って対応するか否かを明確に答弁下さい。

 更に必要なことは、先の総選挙における民主党マニフェスト及びその後の22年度予算編成を始めとするこれまでの民主党の財政運営に対する総括であると考えます。
まず、民主党にはいまだに政治主導で無駄遣いの根絶に取り組めば必要な財源が何兆円も捻出できるという幻想が存在しているようですが、民主党政権になってから1年経ったのですから、できるのであれば実行できる立場にある以上おやりになればよいし、できなければできないと認めるべきだということに尽きます。財源捻出も順調だと参院選では言っていたのに、なぜ急に財源なき場合などと言葉をすり替えるのでしょうか。まずは国民に謝罪すべきでありませんか。総理の見解を求めます。

 具体的に申し上げます。総理の所信表明演説ではいまだに「強力に無駄の削減を徹底」などと記されていますが、民主党は、そもそも先の総選挙のマニフェストで「国の総予算207兆円を全面組み替え」と称して、16.8兆円の財源を生み出す、そのうち9.1兆円は無駄遣いの根絶で生み出す、と主張されました。ところが、あの事業仕分けでさえ達成とされた歳出削減はわずかに1兆円程度であり、国の総予算207兆円なるものは、22年度予算編成で逆に215兆円に膨れ上がったのが実情です。
こうした経験を経て、さすがの民主党の諸君も無駄遣いの根絶・総予算の組み替えといった議論の限界と現実に気付いたのではないかと期待していたのですが、先の代表選になって、小沢元幹事長が「政治主導で予算を組めば、無駄は大いに削れる」という趣旨のご主張を再びなさり、小沢元幹事長を支持する議員の多くが地元や公共の電波で同様の主張を繰り広げたことには正直驚かされ、かつ呆れました。
そこでご提案申し上げます。それは、菅総理が「412人内閣」とおっしゃるからには、概算要求から自ら作った23年度予算編成を言い訳無用のラストチャンスとして、民主党の総力を結集して挙党態勢で無駄遣いの根絶・総予算の組み替えに取り組んでいただき、そのプロセス・結果、更には結果に対する責任を全員で共有していただきたいということです。与党である民主党議員全員が財政の現実を知ることこそが、地に足が付いた議論を行うための前提となると考えます。
ただし、チャンスが1度きりであることは申し上げるまでもありません。我々は、その先にあるのは民主党マニフェストの総括・撤回でしかないと思っておりますが、ここでは3点をお伺いしておくに留めたいと存じます。
まず、今般の代表選で小沢元幹事長の陣営が主張した、無駄排除により何兆円もの財源を捻出できるという主張に対する総理の改めてのご見解と、そうした主張に与する議員が多数存在する民主党の現状について、財政に対する理解度という観点からの評価をお聞かせ下さい。例えるなら、無駄排除による財源捻出といういわば攘夷論の限界を内心悟ったと思われる菅総理は、この攘夷派の主張をいかにお考えか伺いたく存じます。

 次に、特会仕分けを始めとするこの秋の行政刷新会議の事業仕分けではどれだけの歳出削減を見込み、23年度予算ではトータルでどれだけの歳出削減を見込んでいるのか、現段階でのお考えをお聞かせ下さい。併せて、来年度から予定されている基礎年金の国庫負担の2分の1への引上げを先送りすることや、国の会計間の資金移転や赤字の付け替え等の邪道に頼ることなく新規公債発行額を22年度の44.3兆円以下に抑えることも、改めて約束できますでしょうか。

 最後に、私の提案のとおり、23年度予算編成では「412人内閣」の総力を挙げて無駄排除に取り組んでいただく代わりに、23年度予算編成におけるその成果をもって、無駄遣いの根絶による財源捻出という民主党マニフェストのシナリオそのものに区切りを付け、実現できなかった部分があれば潔く謝罪・撤回するという作業に入っていただきたい。これは解散総選挙に値することでもありますが、そうしたプロセスを設けることを約束いただきたいのですが如何でしょうか。

 なお、代表選でマニフェストの着実な履行を求める小沢元幹事長の陣営を菅総理の陣営が打ち破ったことを契機にして、なし崩し的にマニフェストの見直し・修正が図られていくとすれば、国民との契約を破棄する際の取扱いとしてはあまりにぞんざいに過ぎます。国民との約束である以上、その総括・見直しこそ、目に見える公開のプロセスで第三者を交えて大いに議論を行う必要があると考えています。マニフェスト施策こそ事業仕分けや政策コンテストの対象にして、その是非を検証すべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 また、これに関連して地方向けの補助金改革について伺います。
民主党政権になって国の総予算は膨らみましたが、これを検証していくと、マニフェストでは歳出削減の主力分野とも言える補助金が、それとは逆に21年度の49.0兆円から22年度の53.7兆円へと4.7兆円も膨れ上がっていることが目立ちます。小沢元幹事長は、先の代表選ではこの分野の改革を強く主張し、ひも付き補助金の一括交付金化により3割から4割の削減を期待できると言われていました。菅総理も、減額すべきとの指示を閣僚に出されたと伺っています。節約すると言ったものが逆に増えたのですから、マニフェストとの関係では元に戻す以上の削減が必要となるのでしょうが、総理としては23年度にどの程度削減することをお考えなのでしょうか。また、地方団体は削減の方針に必ずしも前向きではないと聞いていますが、どのように説得されていかれるのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 最後に、所信表明演説では、公務員制度改革にも言及されております。
民主党マニフェストでは、公務員人件費については2割削減で1.1兆円を節約とされておりましたが、相変わらず達成の道筋が見えません。菅総理は代表選で、「国家公務員人件費の2割削減に向け、人事院勧告を超えた削減を目指す」と主張され、片山総務大臣もこうした深掘りに前向きと伺っています。
問題としたいのは、その際の地方公務員の取扱いです。わが党は、政権担当時も地方公務員の人件費の削減の方針を示し、地方財政措置への国民負担の軽減を通じて、広く国民に還元してまいりました。先の参院選で民主党に対しては、「自治労などから支援を受ける民主党では、その既得権益を一掃する行革はできない」と批判いたしました。今回の深掘りは、民主党が支援労組の意向にかかわらず、国家公務員ひいては地方公務員の人件費削減に踏み切れるかの試金石と考えます。改めて今回の国家公務員人件費の深掘りとその地方公務員人件費への反映について方針を伺います。

4.おわりに

 イタリアの政治思想家、ニコロ・マキアヴェッリはその著書「政略論」においてこう述べています。「宗教でも国家でも、それを長く維持していくには、多くの場合本来の姿に回帰することが必要である」。それは「その創設期には必ず、何か優れたところが存在したはずだからである。そのような長所があったからこそ、今日の隆盛を達成できた」と。しかしながら「時が経つにつれて、当初にはあった長所も、次第にあせてくるものである」とも述べています。
日本が今後世界の中でどう生き抜いていくのか。その為には戦後不死鳥のごとく蘇ったわが国の原点を考える必要があるのでしょう。ひいてはわが国の長い歴史を見つめ、その根源的な長所や美徳を把握し、それを礎として裏付けられたものこそ、今後のわが国の進むべき道ではないでしょうか。
衆参の与野党逆転が生じた今、この国を導く国会のあり方が問われています。与党・野党、お互いの果たすべき役割は何なのか。国民のために何をなすべきか。議員各位は、なぜ国会議員になったのか。自らの原点に立ち返り、その時に抱いた志に恥じることが無いよう全力で職責を果たし合う。それこそが、まさしく今国民から必要とされている国会のあり方だと考えます。そのためには、総理、まず、あなたが、司法や官房長官などの他の閣僚、野党に責任を押し付けるのではなく、一国の総理、官邸の主として、指導力を発揮し、真実を国民に伝えなければ協力の仕様がありません。不毛な責任転嫁や権謀術数は不要です。私は、正々堂々、自らの信念に殉じ、本来自らに与えられた責務を果たすことによってのみ国民の負託にこたえてまいることを誓い、質問を終わります。

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