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国会トピックス

第177回通常国会における代表質問 谷垣禎一総裁

平成23年1月26日

1.はじめに

 私は自由民主党・無所属の会を代表して、一昨日の菅総理の施政方針演説について質問致します。
一昨日、総理より宮崎県の鳥インフルエンザについて言及がありましたが、その後、日本一の養鶏密集地帯である鹿児島県出水市においても発生し、さらに、愛知県でも疑いのある症例があると報じられています。関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。我が党も対策本部を立ち上げましたが、政府におかれましても万全の対策を講じるよう強く求めたいと存じます。

 さて、菅内閣の先般の内閣改造は、昨年の参議院選挙の敗北の責任をとったはずの枝野前幹事長代理が官房長官になり、代わりに仙谷前官房長官が党代表代行に就くなど、民主党の人材の払底ぶりと無反省ぶりには目に余るものがありました。挙句の果てに野党の与謝野議員にまで食指を伸ばし、内閣の要とも言うべき経済財政政策、更には社会保障・税一体改革の担当大臣に起用されるに及んでは、民主党政権の正統性への重大な疑義が生じました。
そこで、まずは菅総理に改めて与謝野大臣起用の意図を伺います。あわせて、これまで与謝野大臣が取り組んできた財政健全化や消費税を含む税制抜本改革について、与謝野大臣の考えが閣内ひいては民主党内で共有されて齟齬はないのか、閣内不一致はないのかを伺います。

 また、与謝野大臣はかねて民主党マニフェストを激しく非難しており、一頃は与謝野大臣と民主党政権の間には埋め難い溝があったはずです。それが今席を同じくしているということは、与謝野大臣が変節したか、民主党政権が国民との契約たるマニフェストの遵守を放棄し、一言のお詫びもなく変節したかのいずれでしか説明できません。そのいずれなのでしょうか、菅総理のご見解を伺います。

 いずれにしても、最も残念なことは、今般の与謝野大臣の入閣によって、国民の政治に対する信頼が失われ、わが国にとって必要な改革の実現が却って遠のくことであります。わが党としては、何より、菅総理や民主党の変節、政権としての正統性の喪失を今後とも明確にえぐり出し、解散総選挙を求めていくとともに、財政健全化や消費税を含む税制抜本改革等については、堂々と国民に訴えてまいります。

 次に、小沢元代表を巡る問題についてお尋ね致します。
菅総理は、小沢元代表を巡る政治とカネの問題についてけじめを付けると宣言しており、このことがいわゆる「小沢斬り」などとしてマスコミに取り上げられております。しかし、具体的な成果は全く見えません。岡田幹事長は、通常国会前とまで表明した小沢元代表の政治倫理審査会への招致議決を断念し、小沢元代表本人も事実上出席を拒否しており、まさに民主党得意のパフォーマンスを繰り広げています。我々は、このような支持率を上げるためだけの「小沢斬りごっこ」に付き合うつもりはありません。本当にけじめを付ける気があるのであれば、直ちに我々が求める証人喚問を実現すべきと考えますが如何でしょうか。菅総理、ご回答ください。

2.23年度予算・民主党マニフェスト

 次に、平成23年度予算審議に向けてお尋ねします。
菅総理が「熟議の国会」を掲げながらも、政府が国会に提出した23年度予算や23年度税制改正法案を素通りしたまま、いまだ姿が見えない消費税を含む税制抜本改革のみを取り上げて与野党協議の必要性を主張されていることは、不思議でなりません。先般の民主党大会では、「野党が積極的に参加しようとしないなら、歴史に対する反逆行為だ」とまで述べられましたが、協議すべき内容も定まっていないまま、仮定に仮定を重ねて野党を抵抗勢力に仕立て上げようというのは、空疎に過ぎて意味不明であります。
また、ばら撒くだけばら撒いておいて、国民に負担をお願いする耳の痛いテーマだけに絞って野党を巻き込もうと協議の参加を迫るということでしたら、単なるご都合主義に過ぎず、バラマキのための財源調達を手伝うわけにはまいりません。
先般の民主党大会での一方的かつ不誠実極まりない発言に対して謝罪・撤回を求めます。

 23年度予算の具体的内容についてお伺いします。
23年度予算は、一昨年8月の解散総選挙で民主党がマニフェストの実現を掲げて政権交代を果たしてから2度目であり、概算要求段階から思う存分に腕を揮ったはずの予算編成であります。しかしながら、民主党マニフェストの達成度という観点から評価すれば、惨憺たる内容であります。
まず、民主党マニフェストでは、国の総予算207兆円を全面的に組み替えるということをイの一番に掲げ、その際、マニフェスト実行に必要となる計16.8兆円の財源のうち9.1兆円を歳出削減によって捻出するとされていました。ところが、この総予算207兆円が、今般の23年度予算では220兆円と膨れ上がったのが実情であり、「総予算207兆円の組替え」による財源捻出という仕組みがそもそもフィクションだったことが明白となりました。

 それに加え、23年度予算の段階で実現しているマニフェスト予算は、16.8兆円のうち3.6兆円に留まっています。うち歳出削減による財源確保は、子ども手当に関連する税制改正による増収分を除く2兆円台半ばです。しかし、この程度の額の削減は、わが党が政権の座にあったときにも毎年行っていたものであります。今や政治ショーと化した事業仕分けも、その直接の成果は22年度予算で0.7兆円弱であり、23年度予算とあわせても1兆円程度であります。いずれにしても9.1兆円の約1割に過ぎません。藤井官房副長官はかつて「総予算207兆円の1割から2割くらいは簡単に切れる」と豪語されましたが、何のことはない、政権交代の効果として切れたのは総予算の1割ではなく、目標額の1割に過ぎません。
16.8兆円と言っていたマニフェストの実行が3.6兆円、うち22年度は約3兆で23年度に至っては僅か0.6兆、9.1兆円と言っていた歳出削減において政権交代の効果と言えるのは、その1割程度というのはあんまりじゃありませんか。国家公務員の人件費についても、マニフェストでその2割を削減するとされながら、22・23年度予算で合計3%程度、やはり目標の1割強しか減っていません。総理が、人事院勧告以上の深掘りを行うとされたにもかかわらず、影も形もなく、空約束に終わる気配であります。
いずれも、箱根駅伝で言えば、本来、往路5区でいよいよ「山の神」登場かとなっている場面であるべきところ、1区か2区をいまだとぼとぼと歩いているようなもので、呆れ返るばかりです。「有言実行内閣」はおろか、マニフェストが虚言だったと自ら実証されているだけなのではないでしょうか。菅総理の答弁を求めます。

 マニフェストの不履行について、最近は、仙谷代表代行を始め、税収が落ち込んでいることを言い訳にしようという動きがあります。税収減だからといって無駄排除や予算の組替えが出来なくなる理由はありません。税収が低かったから事業仕分けでの蓮舫大臣の舌鋒が鈍ったとでもおっしゃるのでしょうか。詭弁以外の何者でもありません。原因は、単にできないことを約束していたか、力が及ばなかったのか、そのいずれかだけであります。
マニフェストにおける予算の組替え、施策の不履行と税収の関係についてどのような論理的関係があるのか、菅総理の見解を伺います。

 マニフェストの2番目の柱とされたのは子ども手当ですが、1人当たり月2万6,000円という公約は未だ果たされておりません。23年度予算においては、3歳未満までの支給額を1万3,000円から7,000円上積みしておりますが、聞くに堪えない内容であります。
すなわち、3歳未満の子どもに対しては、我々が政権与党にあった時代にも中低所得者層には、1人当たり月1万円の児童手当が支給されておりました。そこから子ども手当になって一見3,000円支給額が増えたようですが、ご家庭によっては、22年度税制改正による所得税・住民税の年少扶養控除の廃止の影響をあわせれば、逆に負担増となってしまうということが判明し、慌てて上積みしたということが今回の対応の背景の1つです。
つまり、今回の上積みは、制度設計のミスを取り繕う弥縫策に過ぎません。しかも、上積み財源として、自ら税制抜本改革の一環と説明されている給与所得控除や成年扶養控除の見直しによる増収を充てることとされており、税制の大きな改正をやって見当違いの財源漁りに終始したという荒唐無稽な構図になっております。こんなマッチポンプのために一部の給与所得者や成年の扶養者が増税されるということでは、とばっちりもいいところであります。バラマキという政策内容も問題ながら、その手法まで拙劣で右往左往している姿が曝け出されたのが今回の子ども手当の上積みであると認識しますが、総理のご見解を伺います。なお、兆単位という巨額の財源を要するこの施策を、財源確保に四苦八苦するがゆえに単年度立法で講じていく、いわば綱渡り的な政策運営を行っていることは、民主党政権の無責任体質の表れであると申し添えておきます。

 また、23年度税制改正全体で見れば法人税減税を行うことでネット減税となっている以上、給与所得控除や成年扶養控除の見直しで多少の上積み財源を確保したところで、底に穴が空いたバケツに一旦水を入れたと主張しているようなもので、財源論として意味がありません。むしろ、総理の裁断により閣議決定のペイ・アズ・ユー・ゴー原則を覆して恒久財源が確保されないまま減税に踏み切った法人税の実効税率引下げや、経済活性化予備費の減額を財源とした科学技術予算の増額の方が、形だけは見合い財源の確保を図った子ども手当よりも政策的優先度が高いと判断されたように見えなくもありません。総選挙においては何よりも、家計への直接給付による「成長戦略」を訴えていたはずであります。
この他にも、23年度予算においては、歳出削減の多くがマニフェスト実施以外の社会保障の自然増や新成長戦略の実施への対応に充てられるなど、マニフェストをやりたいのか、他のことをやりたいのかよく分からない支離滅裂な状況になっております。23年度予算における総理の政策の優先度は何処にあるのか、改めてご教示下さい。

 ちなみに、民主党マニフェストの3番目の柱は、月7万円の最低保障年金制度の創設を始めとする年金制度改革でした。これについては、先日、枝野官房長官から現行制度とは「本質的なところに大きな違いはない」、こういう信じ難い発言がありました。しかしながら、わが党は保険料を中心とした自助と共助を尊重する制度を掲げていた一方で、民主党がかつて主張した全額税方式は、皆で納める税金で皆を助ける、いわば公助の制度という違いが存在したはずです。かつて自公政権で現行制度への改革を行った際に、民主党はこれを小手先の改革と非難し、抜本改革の必要性を叫んでいました。
年金制度改革は民主党の政策の金看板でしたが、現行制度と大差がないというのなら、これまでのご主張はすべて針小棒大であったことになります。まさに長妻議員もびっくりの「消えた年金改革」であり、国民の安心を支える年金制度を徒に政争の具としてきたことの責任が改めて問われなければなりません。年金制度を殊更に選挙の争点とあげつらったことを国民に謝罪し、年金制度に関する今般のマニフェストを撤回すべきと考えますが如何でしょうか。さらには、政府・与党が今春に作る社会保障の改革案には、当然、具体的な年金改革案が含まれ、その内容が従来主張してきた内容と異なれば、その点の総括・謝罪が盛り込まれていると考えてよいか、総理に伺います。

 民主党マニフェストの柱の1つとして、地方向け補助金の一括交付金化も挙げられています。これについては、23年度予算では鳴り物入りで一括交付金が0.5兆円計上されておりますが、先の民主党代表選で、小沢元代表が、一括交付金化により3割から4割の削減を期待できると強調され、菅総理も、相当程度の削減は可能と応酬しておられたことは記憶に新しいところであります。先程のマニフェストにおける9.1兆円の歳出削減のうち6.1兆円の削減もこの補助金改革等で成し遂げることとされておりました。蓋を開けたら0.5兆円の一括交付金ということでありますが、これによる補助金等の削減額は幾らだったのでしょうか。数値をお答えください。そして、そのなけなしの歳出削減効果も、補助金等全体が社会保障の自然増などで相当伸びたことにより、雲散霧消してしまったのではないでしょうか。まさにこの分野こそ総予算207兆円の組替えという壮大なだまし絵の中核部分だったのではないでしょうか。菅総理の回答を求めます。

 また、農家の戸別所得補償については、民主党は当初、「作ってさえいれば価格差補填で所得補償する」と訴えていました。ところが、最近の総理は、TPP、農政改革に力点を置いており、「国内の環境整備を早急に進める」旨を閣議決定していますが、農業政策の一貫性、方向性が判然としません。
持続的な強い農業のために必要なものは農地と担い手であります。この2つに対して民主党政権はあまりにも無策です。戸別所得補償を優先するため、土地改良などの基盤整備事業がカットされるとともに、担い手支援・育成施策も不十分であります。さらに言えば、2年にわたる公共事業費の大幅な削減で、本来は地産・地消を育むべき地域経済は収縮の一途であります。
マニフェストの施策を転換し、わが党が掲げる担い手支援や農地の利用集積の促進等に取り組まなければ、強い農業は実現できません。23年度予算には、水田・畑を対象とした規模拡大加算措置等が計上されていますが、これはまさにその政策転換の萌芽なのでしょうか。総理、その立場を明確にし、農政の方向性をお答えください。

 ここまでマニフェスト実現の状況が惨憺たるものであり、政策の優先度も見失われている状況ですと、民主党マニフェストがだまし絵であるとか、選挙用の毛鉤であると非難してきた与謝野大臣の従来の指摘は、極めて的を射たものでありました。憲政史上最大の確信犯的な公約違反とも言え、有権者を著しく冒涜しております。こうしたマニフェストの上に成り立っている民主党の現在の議席ひいては民主党政権の正統性そのものがもはや崩壊したと言わざるをえません。このマニフェスト策定の中心にあったのは小沢元代表でありますが、党の要職にありながらこれに異を唱えなかった菅総理もまたその責任を免れえません。国民に幻想を振り撒いて政権を簒奪することが正当化されれば、わが国の民主制は瓦解します。苦しい言い訳に終始するのではなく、潔くマニフェストの過ちを認め、これを撤回し、有権者にお詫びしたうえで信を問い直すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

3.税制

 次に、税制についてお伺い致します。
まず、消費税を含む税制抜本改革についてお尋ね致します。 21年度税制改正法附則第104条で定められた「23年度までに法制上の措置を講じる」という消費税を含む税制抜本改革の道筋を遵守すべきことについては、ようやく閣僚間で共通の認識が芽生え始めているようでありますが、法律である以上政府がこれに従うことは当然のことであります。他方で、その具体的解釈については閣僚間で齟齬があるようであります。この規定は、政府に対して、経済状況云々といった留保条件を特段付けることなく、23年度までに消費税を含む税制抜本改革の具体的内容を定める法案を提出する義務を課すものであります。
菅内閣の方針として、この規定に従って24年3月末までに消費税を含む税制抜本改革の具体的内容を定める法案を提出するということでよろしいか、総理に改めて確認致します。その際、通常の予算審議、税制改正を抱える来年通常国会ではなく、今秋の臨時国会に提出されるのが自然と考えますが、それでよろしいでしょうか。

 また、菅総理は、消費税を含む税制抜本改革について、強い調子で与野党協議を呼び掛けられていますが、率直に申し上げて総理自身がどこまで本気かつ誠実にこの問題を捉えられているのか甚だ疑問であります。総理自身の覚悟のほどといつまでに具体的に何をするのかということが明確でなければ、わが党としても協議に応じようがありませんので、そこを確かめさせていただきます。
そもそも菅総理は、就任当初の昨年6月、民主党の参院選マニフェストの発表記者会見において、消費税の取扱いについて「22年度内にあるべき税率や逆進性対策を含む改革案の取りまとめを目指す」との方針を示されました。更には、当面の消費税率について「自民党が提案している10%を1つの参考にする」とまで述べられました。ところが、参院選で敗北を喫するや、打って変わって「期限を切っての議論をしない」とダンマリを決め込まれました。考えが一々ぶれるのであれば協議のしようがありません。この間の経緯について、きちんと説明いただきたいと存じます。すなわち、税制抜本改革のスケジュールや消費税率に関して昨年6月に示されたお考えは撤回されたのか、それとも一旦撤回したけれども今はまた元に戻ったのか、一時的にでも撤回したとしたらどのような理由によるのかお答を頂きたいと存じます。

 その後、昨年末当たりから、菅総理は、税制抜本改革の問題について再びアクセル全開モードに急変されたように感じます。6月までに消費税を含む税制抜本改革の成案を得ることを決められ、このことに「政治生命を懸ける」とまで明言されました。
そこでお尋ねします。まず、期限についてですが、民主党政権における期限設定というと、鳩山前総理が、普天間移設問題の政府案の決定を当初は昨年3月中とおっしゃっていたところ「法的に決まっているわけじゃない」として一旦5月までに延期された上、5月末になっても結局何も得られず辞職されたことを思い起こします。今回は閣議決定において本年半ばと明確に期限を付され、年頭の記者会見などでも6月とおっしゃった以上、よもや延期されることはないと思いますが、念のため6月という期限に対する本気度を、総理に伺います。なお、この6月までに「成案」を得ることは閣議決定されておりますので、当然自見大臣を入閣させている国民新党の合意も得たものと理解してよろしいでしょうか。

 次に、昨年末の閣議決定における「成案」という言葉が、施政方針演説では「消費税を含む税制抜本改革の基本方針」と言い換えられていますが、早々と後退された感が否めません。「成案」とおっしゃる以上、具体的な出来上がりの案であり、消費税の引上げ幅や引上げ時期を含むものであることは勿論のこと、具体性、完成度の観点から法案の一歩手前といったレベルのものが示されて然るべきと考えますが、総理はどのようなお考えでしょうか。特に消費税の引上げ幅や引上げ時期を具体的に盛り込むかを明確にお答え下さい。また、その「成案」は、議院内閣制である以上、当然与党の合意を得たものと理解してよろしいでしょうか。

 更に、「政治生命を懸ける」という言葉の意味ですが、約束の期限どおりに物事をなし得なかった場合には辞職する、もしくは信を問うために解散するということを指すことと受け止めるのが通常と考えますが、それでよろしいでしょうか。そこまでのお覚悟があって我々に協議を求めているのか明確な回答を求めます。

 いずれにせよ、21年度税制改正法附則第104条は、一義的には政府に対して法案提出の義務を課しており、法案の前段階である成案を示すのも政府の当然の義務と考えます。しかしながら、そもそも、その案はマニフェスト破りになることは必至です。「無駄排除で財源はいくらでも出てくる、消費税の引上げは必要ない」とした先の総選挙の主張と大きくかい離したことに取り組まれるからには、まずは引上げ自体について国民に信を問い直すことこそ、「成案」の取りまとめのためには必要な手続きであり、本件に関して混乱している与党内の現状をみるに、最短距離ではないかと存じます。同時に、昨今マニフェスト見直しの議論についても仄聞しますが、撤回もなされてしかるべきです。それらの点について具体的にどのような整理をし、けじめをつけられるのか、総理のお考えを伺います。そのプロセスなくして、自らの案も無く与野党協議に臨もうとするのは、マニフェストの違背をうやむやにして責任を回避する姑息な政治的戦術に過ぎません。

 わが党は、自公政権下において、将来にわたって安心できる持続可能な社会保障制度の構築とその安定財源の確保を図る「中期プログラム」を策定し、税制抜本改革の道筋と方向性を附則第104条で法制化しました。また、バラマキの阻止、財政健全化の道程や税制抜本改革の実現、与野党協議を明記した財政責任法を昨年3月より国会に提出しております。さらには、昨年の参院選では、消費税率やその使途についても、国民に真摯に訴えました。野党転落以降も、累次にわたって予算や税制改正に対する基本的考え方を示してきております。わが党に比べれば、民主党政権の取組はようやくスタート地点に立ったところであり、しかるべきけじめをつけたうえで、わが党の議論までぜひ追い付いていただきたいものであります。

 次いで、23年度税制改正関連法案についてお尋ねします。
同じく「ねじれ国会」だった3年前の今頃、当時野党の民主党の諸君が、ガソリン値下げ隊なるものまで結成して、ガソリン税率の水準維持を含む20年度税制改正関連法案に徹底して反対されたことを思い起こします。そのガソリン値下げ隊の結団式で、ガソリン税率の引下げを求めて声を張り上げておられたのが菅現総理です。
そして、民主党の諸君は、両院議長のあっせんを反故にしてまで、ガソリン税率を期限切れに追い込み、1ヶ月ほど一時的にガソリン税率が下がることとなったため、結果として、ガソリンスタンド、消費者、減収が生じた地方自治体などに甚大な迷惑が掛かることとなりました。
菅総理は、このように税制改正法案を人質にして国民生活を混乱に陥れるという悪しき前例を作られたわけですが、こうした自らの行動について適切なものであったとお考えなのでしょうか。現在のお考えを伺います。
しかも、その後政権交代を実現し、総理にまでなられた菅総理が、当時の主張どおりにガソリン税率の値下げを目指された形跡は全くありません。これもまた国民に対する裏切りです。まさに当時の野党民主党が政局のためだけに国民生活を混乱に陥れたことがあからさまになっておりますが、ガソリン税率の引下げという主張は一体全体どうされたのか。これも与謝野大臣が言うだまし絵、毛鉤だったのか、菅総理に伺います。

 当時の野党民主党は、更に税制関連法案について、1つ1つの措置毎に1本1本税法を分けろといったご無体な要求をされていたことも思い起こされますが、政権与党になった今回は、何ら野党に相談することなく、唐突に全体を一本化した法律案を提出されました。
ただし、政府は、23年度税制改正関連法案について、税制改正大綱に明記されたとおり、全体として税制抜本改革の一環をなす法案であると説明されており、それゆえに法案を一本化されているものと忖度致します。確かに、そこに含まれている所得税の給与所得控除の見直しは、かつてですと「サラリーマン増税」との批判を受けかねない大改正ですし、相続税の税率構造の見直し、法人税率引下げ、国税通則法の見直しどれ1つをとっても近年稀に見る大改正と言えます。しかもこれらの内容は、具体的な改正の是非は別として、テーマ自体は、21年度税制改正法附則第104条第3項においてわが党が定めた消費税を含む税制抜本改革の検討の方向性とも一見軌を一にしています。
しかし、であればこそ、問いたいことがあります。総理は昨年8月の予算委員会で、私が、「消費税を含む税制抜本改革の前に信を問う、それはそれでよろしいですか。」とお尋ねしたときに、「例えば消費税を大きく引き上げるとか、あるいは別の税金でもそうかもしれませんが、大きな税制改正を行うときには、やはり国民の皆さんに判断をいただく、そういうことが必要だろう、その考え方は変わっておりません。」と答えられております。すなわち、消費税以外の税制であっても、大きな税制改正を行うときには国民に信を問うという考え方を述べられております。この答弁に従えば、所得税、法人税、資産税、更には国税通則法の大改正、まして税制抜本改革の一環として説明される内容を盛り込んだ法案を提出し、かつ、年度内成立・4月施行を目指される以上、直ちに衆議院を解散すべきことになるはずですが、いかがでしょうか。事柄は、予算委員会で総理大臣が野党第一党党首に対しての発言に関わりますので、この点を明確にお答えいただきたいと存じます。

 繰り返し申し上げます。消費税を含む税制抜本改革は、無駄排除の財源確保を基本構造とするマニフェスト、国民との契約条件を根底から覆す一大政策転換である以上、解散して国民に信を問い直さなければなりません。それに加え、今般の23年度税制改正関連法案について税制抜本改革の一環と説明し、かつ、「6月までに消費税を含む税制抜本改革の成案を得る」「政治生命を懸ける」「税制の抜本的改革に当たっては、国民の信を問う」とまで述べられておきながら、「私の念頭には、解散のかの字もない」と言う事では通用しません。23年度税制改正関連法案を施行し、消費税の成案を得る前に解散すべきであります。それが、総理が民主党代表選時の公約や先ほどの答弁だけでなくあらゆる機会において、繰り返し「税制抜本的改革に当たっては、国民の信を問う」と述べられてきたことの当然の帰結です。
仮に本当に解散のお考えがないということでしたら、「政治生命を懸ける」という言葉の意味は「政権にしがみつくための口実として消費税を利用する」「政治延命を図る」という意味であったということになり、総理のこれまでの一連の発言はすべて信頼に足らないということになります。協議相手どころか、国会で議論する相手としても適性を疑わざるを得ず、今までの公の場で軽々しく虚言を弄してきたことに対する責任を問わざるを得ません。
しかし、我々が望んでいることはそのような事態ではありません。菅総理が「歴史」を重んじられるのであれば、自らの言葉を裏切り税制抜本改革を口実にして政権にしがみついて結局何も出来なかった総理として歴史に汚点を残すより、消費税を含む税制抜本改革の成案を仕上げるという歴史的事業を成し遂げんがために、自らの言葉に従って国民にも信を問うた潔い総理として歴史に名前を残されることを選択されるべきだと考えます。
わが党は、「覚悟のかの字もない」総理とは協議できません。国民に信を問うことをもって、菅総理の「覚悟」と受け止め、税制抜本改革の与野党協議に真摯かつ積極的に参加させていただきたいと存じます。いかがでしょうか、総理。逃げも隠れもしない、堂々たる答弁を求めます。

4.終わりに

 菅総理は、昨年6月以降、消費税を含む税制抜本改革について、急発進、急ブレーキ、バックと慌しい動きを見せ、そのまま居眠りされているのかと思ったら、再びアクセル全開になり、先日は教習本を購入し、周りには早く進めと派手にクラクションまで鳴らされていますが、車はあまり動いていないように見えます。
ご自身は昨年末、総理として仮免許から本免許になったとおっしゃられましたが、このたびの改造で与謝野大臣や藤井官房副長官という指導教官を迎えて、どうしても路上教習に出たいという思いのようです。我々としてもまずはお手並みを拝見させていただきたいと存じます。
ただし、我々が協議に応じる前提として、菅総理の覚悟を求めました。端的に申し上げれば、国民に信を問うことです。それが菅総理のこれまでのお言葉に従った対応です。
この解散には、もう1つ重要な意味合いがあります。すなわち、小沢元代表が民主党にもたらした問題は「政治とカネ」に留まるものではありません。小沢元代表に作られた偽りのマニフェストを基盤とし、小沢元代表の選挙の手腕によって得られた砂上の楼閣が如き多数の議席を清算することなくして、「小沢斬り」は貫徹し得ません。一昨年の夏、民主党マニフェストを片手に国民に幻想を振り撒いた全員が胸に手を当てて、国民への嘘で政権を簒奪したことへのけじめをいったん付け、新たなスタートをきることこそが、わが国が健全な民主主義を取り戻す唯一の途と考えます。
わが党は、国益をまったく考慮せず国会審議をいたずらに混乱させるだけの卑怯な野党にはなりません。民主党政権の失政を徹底的に追及しつつ、自民党の政策ビジョンを国民の前に堂々と示し、政権に代わり得る選択肢となる所存であります。
国家財政の一事を見るに、2年連続で借金が税収を上回るという異常な事態が続いています。我々政治が、このような国家的危機に対する認識を一にしたうえで国民の信を問えば、その後あらためて共にその危機を乗り越えていくことは可能であると考えます。私はその覚悟を胸に、消費税を含む税制抜本改革をはじめ、わが国の未来を切り開く改革を実現する為の解散総選挙を菅政権に強く求め、歴史を大きく前に進めて行きます。

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