[少年法厳罰化諮問]多面的な議論が必要だ

2012年9月24日 09時17分
(33時間4分前に更新)

 滝実法相は少年法改正案を法制審議会に諮問した。現行の刑罰を厳しくした改正案である。来年の通常国会への提出を目指している。

 犯行時に18歳未満だった少年に無期刑を言い渡す場合、10~15年の有期刑に軽くできるとする規定があるが、改正案では上限を15年から20年に引き上げる。

 判決時に20歳未満の少年に3年以上の有期刑を言い渡す場合は、「○年以上、○年以下」と不定期刑としているが、改正案では短期の上限を5年から10年に、長期の上限を10年から15年に引き上げる。

 背景には、少年法に疑問を呈する裁判員裁判の判決や、加害少年に比べ犯罪被害者がないがしろにされているとの家族の切実な感情がある。「成人とのギャップがありすぎるのではないか」(滝法相)というのも理由だ。

 大阪地裁堺支部の裁判員裁判は昨年2月の判決で、殺人罪に問われた少年に対し、求刑通り懲役5年以上、10年以下の不定期刑を言い渡したが、裁判長は少年法の改正に言及。「10年の懲役刑でも十分ではない。少年法は狭い範囲の不定期刑しか認めておらず、今回を機に適切な改正が望まれる」と指摘した。一般市民が加わった裁判員の意見が入れられた判決である。

 無期懲役ならば10~15年の有期刑を科すことができるが、少年は犯行当時17歳で、広汎性発達障害の影響があったとして「無期刑の選択はちゅうちょせざるをえない」と判断した上で、少年法の改正を求めた。異例である。

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 少年犯罪に対する厳罰化の流れは止まらない。

 2000年の改正では刑罰の適用年齢を「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げた。07年の改正では少年院送致を「14歳以上」から「おおむね12歳以上」に同じく引き下げた。

 厳罰化の目的は何か。犯罪抑止のためか。被害者の応報感情に沿うためか。

 少年犯罪は実際は減少傾向にある。一般刑法犯で摘発された少年は10年に約10万3千人で、ピーク時の1983年の4割にも満たない。

 少年法は、少年の更生に主眼を置いている。

 少年を長期的に拘束するよりも立ち直りを重視したのが少年法特有の不定期刑である。厳罰化と少年法の理念の関係を整理し直す必要があるのではないか。

 厳罰化は米国の新自由主義の流れにつらなっているようにみえる。自己責任論の下で、犯罪から社会を防衛するためには少年であっても「厳罰化やむなし」とする考えである。

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 加害少年への厳罰化と、犯罪被害者へのきめ細かな政策は分けて考えるべきではないのだろうか。

 民法の成年年齢引き下げの是非が議論になっている。少年法改正に当たっては、社会の変化に対する目配りも欠かせない。

 厳罰化か更生かの二者択一的議論に終始するのでなく、多面的な視点から論じていくことが重要だ。法曹界だけの問題にとどめず、幅広く意見を聞いてほしい。そのためには時間をかける必要がある。

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