'12/9/24
飲酒運転撲滅条例 広島でも制定急ぎたい
福岡県が「飲酒運転撲滅条例」を先週、全面施行した。常習者にアルコール依存症の治療を受けさせることが特色だ。
飲酒運転に関する条例は既に宮城、沖縄など4県にあったが、福岡県はこれまでになく踏み込んだ格好になる。
言うまでもなく飲酒運転防止は全国に共通する問題である。「福岡モデル」として広がっていくことを期待したい。
福岡の条例では、飲酒運転の根絶が進まない理由をこう指摘している。検挙される人の半数は再犯であり、アルコール依存症が疑われる人が多い。よって取り締まりだけでは困難だと。
そうした危機感から盛り込んだのが受診義務だ。飲酒運転で摘発された人が5年以内に再び違反すれば依存症の受診を求める。それに従わなければ5万円以下の過料を科すという。
飲酒運転を繰り返す人たちが抱える問題の根っこに立ち入り、診断と治療で再犯防止を試みる。画期的といえよう。
条例にはもう一つのポイントがある。飲酒運転の違反者に酒を提供した飲食店にも罰則規定を設けたことだ。
客が1年以内に2度摘発された飲食店には、福岡県公安委員会が防止策を指示する。従わなければ、最終的には5万円以下の過料を伴う。
福岡県が全国に先駆けた中身を考えたのはなぜか。福岡市職員が幼児3人を死亡させた2006年の事故があるという。取り締まりを強化したものの、一昨年の飲酒運転事故の件数は全国最悪となった。そこで議員提案で条例が制定された。
課題もあろう。たとえ依存症の受診率を上げても、治療が続かなければ再発防止の実効性は望めない。地域の医療機関や民間団体と連携し、長期的に患者をサポートすることが欠かせない。依存症の「予備軍」にまで広めた対策や、飲食店の姿勢も問われてくる。
そのためにも福岡県だけにとどまらず、全国的な取り組みにしていく必要があろう。
とりわけ広島県は後に続いて条例化を急ぐべきではないか。
福岡県をモデルにした条例制定を求める声は高まっている。広島市内の高校生が飲酒運転の車にはねられて亡くなった事故を受け、両親が5月に広島県や県議会に要望書を提出したことが大きなきっかけとなった。
現時点では、県サイドは「福岡県の効果を見たい」との姿勢にとどまるようだ。とはいえ、いつまでも先例を見守っているわけにはいくまい。
8月末現在の広島県内の飲酒運転による交通事故は、前年同期比よりも29件多い99件。死者は3人増の9人に上る。深刻な事態と言わざるを得ない。
今月になってからは酒気帯び運転の信じがたい不祥事も相次いでいる。広島市立中の校長が現行犯逮捕され、さらに現職の広島市議まで摘発された。
むろん本人たちにとって弁解の余地のない事態ではあるが、飲酒運転の危険性を軽視する風潮がはびこってはいないか。
広島県断酒会連合会の協力で本紙が依存症患者と元患者に実施したアンケートでは、9割近くが飲酒運転の経験があると答えた。うち6割は日常的に繰り返していたという。
もはや今の対策で十分ではないことは明らかである。