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“ネット検索で同名字の医師探した”
9月24日 20時35分

東京・板橋区の病院で、医師の資格がないのに、実在の医師に成り済まして病院に勤務し、報酬をだまし取ったとして、東京の43歳の無職の男が、詐欺や医師法違反などの疑いで逮捕されました。
男は、インターネットで検索して、自分と同じ名字の医師を見つけ出していたということで、警視庁は詳しい経緯を調べています。

東京・世田谷区の無職、黒木雅容疑者(43)は、おととしから去年にかけて、東京・板橋区の民間病院「高島平中央総合病院」に、実在の医師に成り済まして勤務し、住民の健康診断を行い、260万円余りの報酬をだまし取ったとして、詐欺や医師法違反などの疑いで警視庁に逮捕されました。
病院によりますと、黒木容疑者は区民2300人余りの健康診断を担当し、問診や胸部のレントゲンの診断のほか、採血などを行っていたということです。
黒木容疑者は、インターネットで自分と同じ名字の医師がいないか検索し、関東地方に実在する医師を見つけ出していたことが、警視庁への取材で分かりました。
警視庁によりますと、調べに対して「独学で医療の知識を得て、健康診断ならできると思った。生活費が欲しかった」と供述しているということです。
警視庁は、ほかの複数の医療機関でも医師を名乗っていた疑いがあるとみて、裏付けを進めることにしています。

病院など医師免許証原本の提出求めず

厚生労働省は、医療機関に対し、これまでの通達などで、医師を採用する際には、医師免許証と大学の卒業証書をいずれも原本で確認するよう求めています。
また、戸籍謄本などの提出を受けて、無資格の人物が医療行為に携わることがないよう指導してきたということです。
しかし、今回の事件では、健康診断を行った病院も、男を病院に紹介した会社も、医師免許証の原本の提出を男に求めていませんでした。
病院も紹介会社も、偽造された医師免許証のコピーを男から受け取り、厚生労働省のホームページでコピーにあった実在する医師の名前を確認しただけで、採用していたということです。

免許証や検索HPにも顔写真などなし

医師免許証は国が交付するもので、厚生労働大臣の署名があり、医師本人の名前や生年月日などが記されています。
さらに医師1人1人に割り当てられた「医籍登録番号」があるほか、原本の偽造を防ぐために全面に透かしが入っています。
ただ、医師免許証に本人の顔写真などはなく、医療機関にコピーを提出する場合、免許証だけでは本人確認が十分にできないおそれがあります。
医師免許証は紙製でB4サイズの大きさがありますが、海外では顔写真や生年月日を入れてICカード化している国もあります。
このため厚生労働省は、数年前、国内でもICカード化することを検討しましたが、予算が認められず、現在は検討していないということです。
また、厚生労働省は、ホームページで名前を入力すると、その名前の医師がいるかどうか確認できる検索システムを設けていて、このシステムも活用するよう呼びかけています。
ホームぺージでは、医師の名前や性別、それに医師免許証を登録した年が閲覧できるようになっています。
しかし、個人情報を守る趣旨から、医師の顔写真や1人1人に割り当てられている医籍登録番号などは表示されておらず、医療機関などがこのシステムだけで資格の有無を確認することは十分とは言えません。

“原本確認は1度だけ”

現役の医師で医療ジャーナリストの森田豊さんは、20年余りの間、およそ40の医療機関で勤務医などをしてきました。
しかし、医師免許証の原本の確認を求められたのは1度だけで、それ以外はコピーでの確認だったということです。
森田さんは「免許証の原本は、ふだんは額に入れて押入れに保管しているため、持ち運ぶのは不便だ」と話しています。
医師の確認が不十分となる原因については、「医師不足のなか、健康診断の時期にはさらに人材の確保が難しくなる。前日に医師が決まるケースもあるので、手間がかかる原本の確認ではなく、コピーなどで済ませているのではないか」と指摘しています。
そして、「外国の医師免許証は小さな写真付きのIDカードになっている。日本も、病院や患者の求める提示にすぐに応えられるような免許証に改善すべきだ」と話しています。

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