加藤嘉一「日本の若者は、なぜ旅をしないのか」

[2011年06月27日]


卒業してすぐ〝就職〟に違和感あり。

人材を育成する新制度を大提案!

若者にとっての国民の義務とはなんでしょうか? そう急に問われても明確な答えは出しづらいと思います。これが例えば韓国や台湾、シンガポールなどであれば、「徴兵制度」ということになるでしょう。北京大学にいるとそうした国の学生たちと出会うことが少なくありません。

彼らは徴兵制度について「最初はイヤだったけど、肉体はもちろん〝心の筋肉〟もついたから行ってよかった」と答えます。そして国家とは何か、国民の義務とは何かを、兵役を経ることで初めて実感するわけです。

しかし日本にはそのような制度はありません。だから尖閣諸島で問題が起こっても遠い場所での出来事だと感じ、また総理大臣が1年ごとにコロコロ変わり、世界から奇異な目で見られていることも実感できないでいるんです。

思うに、国民としての義務が明確にされていないから、国家を鑑みることができない。まさに引きこもりニッポン、孤立ニッポン。今後さらにグローバル化が進んでいくことを考えれば、これは日本の未来にとってとても危険なことだと思います。

そこでぼくからひとつ提案があります。それは大学を卒業して社会に出る前に世界30ヵ国を目標に半年間で回ることを義務化するんです。もちろん義務ですから国が補助金を出します。若者にあるのは時間、気合い、ヤル気、体力、そして好奇心。ないのはお金だけですからね。

ぼくは日本という環境にうまくなじめず海外に飛び出した人間だからわかるのですが、日本を離れて初めて日本という国家を冷静に見つめることができるといえると思います。初めて国外に身を置くことで、自分はこの国でどう生きていくべきなのか、“心の軸足”というものが定まるはずです。

国も補助金を出す以上、ただ行かせるというわけにはいきません。世界各地を旅し帰国した者はレポートを必ず提出する。それを持って就職活動に活いかすんです。

少子高齢化が進んでいく日本の企業は今後、海外に拠点を置くなり、労働力を外国から確保することになっていくことでしょう。そこで企業には国際的な視野を持つ人材が必要になってきます。外国人の文化や生活習慣を体感的に知っていなければ、効率的な仕事はできません。

日本の常識とは異なる他国の価値観を自然に吸収できるのは若いうちしかありません。

世界で戦う企業になるためには、若い人たちの学力だけではなく、彼らならではの人間力と突破力、そしてインテリジェンス(情報収集力)がキーになってくるはずです。

インテリジェンスとは、与えられた情報を単に鵜呑みにするのではなく、付随する別情報を自分でさらに集め、裏を取り、検証することです。正しい情報を得るためには、そこまでしなければなりません。

中国は口コミ文化なので、モノをひとつ買うにも裏を取る作業は小さいときから誰でもしています。加えて情報を発信しない人間には情報は集まりません。ガイドブックといういかにも日本的なフレームワークに頼ることなく、バックパックをかつぎアウェーで積極的に情報を得る力を身につけ、目的を達成することができれば、若者は大きく成長を遂げるはずです。

それを感じられるプラットフォームは旅しかないと思います。

旅の義務化は、世界から孤立していくだろう日本を救うための最強のプランになるかもしれません。

こんな豪華で即戦力を生む国民の義務がダメだという人がいるなら、何が有効なのか逆に教えて!!

今週のひと言

この島国がいかに温室であるか、海外を旅して客観視しましょう

中国国内での取材回数は年間300本オーバー! 中国で一番有名な日本人

■加藤嘉一(かとう・よしかず)

1984年4月28日生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。中国国内では年間300本以上の取材を受け、著書も多数持つコラムニスト。

詳しくは公式HP【h t t p : / / k a t o y o s h ikazu.com/】まで

(構成/石塚 隆)

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