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屋敷林除染 線量低減に効果 飯舘村の住民、自宅で実験

小型ショベルカーで屋敷林の表土をはぎ取る菅野さん=9月8日、福島県飯舘村比曽

 福島県飯舘村の住民が、民家と接する屋敷林で研究者と除染実験を行い、空間線量を4分の1以下に減らした。枝切りと林床の土のはぎ取りを組み合わせた方法を試行。「道半ばだが、家と屋敷林を一体にした除染こそ必要と、国に示したい」と話している。

 実験を行ったのは、同村比曽地区の前区長で農業菅野啓一さん(57)。
 87世帯の比曽は比較的線量が高く、今は居住制限区域。避難生活を送る住民が線量を測り続け、研究者らによるNPO法人「ふくしま再生の会」(田尾陽一代表)と組んで全域の土壌測定も行った。
 今回の実験も「住民自らが帰村への希望を模索する活動の一環」として、菅野さんが自宅を除染実験の場に提供。つくば市の研究機関の放射線専門家岩〓広さん(37)ら再生の会の協力メンバーと8月から取り組んだ。
 菅野さんらは、屋根の除染の後も2階の部屋の線量が減らないことから、裏の屋敷林からの影響に注目。高さ30メートル近い杉の枝々に「福島第1原発事故で飛来した放射性物質が多く付着した」(岩〓さん)とみて、はしごが届く8メートルほどの高さまで枝切り作業を行った。
 実験範囲は、家の周囲と、境を接する屋敷林の奥行き約20メートル。林床に積もった落ち葉を除去し、小型ショベルカーを入れ、表土から十数センチの土をはぎ取った。廃土や落ち葉は、深さ約1メートルの粘土層まで穴を掘って埋め、きれいな土で覆った。
 実験前後の線量の変化を測った結果、家と屋敷林の境の計測地点では、地表面が20.5マイクロシーベルトから1.8マイクロシーベルトに減り、地上1メートルの線量も9マイクロシーベルトから2マイクロシーベルトに減った。
 家の周囲、屋敷林の計23地点で、実験後の計測値は1〜3マイクロシーベルト(いずれも地上1メートル)と低く、生活圏を一体にした除染の効果が確かめられた。
 菅野さんは「高所の枝切り、急斜面の場所での作業などに課題はあるが、実際にここまでやれると分かったことは希望だ。各地区の除染を行う国にデータを示し、住民の提案を採り入れてもらいたい」と話している。


(注)〓は瀬の頁が貝の上に刀


2012年09月24日月曜日


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