−−ふざけるな−−
雇用・能力開発機構の闇(4)

いこいの村−32カ所の多数が赤字

閉鎖され、中に入れない伊勢志摩いこいの村大王
閉鎖され、中に入れない伊勢志摩いこいの村大王
◇伊勢志摩はタダ同然!

 「最初は6700万円という提示だったんですわ。それが、10万円5000円まで一気に下がった。施設はまだ使えるし、この額なら買うしかないな、と。何でここまで安くなったのか説明はなかったですがね…」

 苦笑混じりにこう話すのは、三重県大王町の関係者。同町は昨年12月、雇用・能力開発機構から、町内にあるリゾート施設「伊勢志摩いこいの村大王」を購入した。

 同施設は昭和59年4月オープン。真珠の産地として有名な英虞(あご)湾を望む丘の上に、23億6000万円かけて建設された。ホテルや多目的ホール、テニスコートなどを持ち、ピーク時の平成7年度には2万人の宿泊客を集めた。

 だが、不況や近隣に同様の施設ができたことが打撃となり、9年度に赤字転落。10、11年度と1500万円前後の赤字が続き、13年1月以降、営業を停止していた。

 同機構が町に売却話を持ちかけてきたのは、13年秋。赤字垂れ流しの末閉鎖した不良資産に対し、「不動産鑑定士が算定した」(同機構)として、6700万円が提示された。

 これに、町は「金額が大き過ぎるうえ、使い道がない」とバッサリ。逆に、「無償提供をお願いしたい」と要望した。

 「無償では無理」とする同機構と約1年に渡り交渉した結果、再提示された額は10万5000円。一気に、99.8%ダウンという“投げ売り”となった。

 「無償に近い額ですから、昨年8月下旬に提示され、すぐ決断した」(前出の大王町関係者)

 激安で購入したが、町は今、「赤字の出ない使い道」に頭を悩ませている。決まっているのは「採算のとれないホテルは再開しない」ことのみ。「福祉施設への転用などが考えられるが、既にありますし…。いい案はないですかね」(前出の関係者)と、降ってわいた“ハコモノ”を持て余している様子だ。

◇激安で買っても、先は暗い…

 新潟県・佐渡島にある「いこいの村佐渡」の購入を決めた畑野町の悩みはさらに深い。10万5000円という激安ながら、約5000万円の累積赤字を抱える“コブ付き”だからだ。

 建設費や改修費などこれまで約29億円が注ぎ込まれたが、昭和53年のオープン以来、毎年3000万円近い赤字を計上。県と同町が折半で補填してきた。4月以降町の所有になれば、全額が町の負担になってしまう。

 民間ではとても手を出せない物件だが、同町は「観光客が来ることで地域に還元される。町民の交流の場としても利用できる」と説明。ただ、同町幹部の1人は「町も財政は厳しく、『1億円くらい付けてほしい』と言ったんです。機構側は『できません』と苦笑いしていましたが…」と本音を明かす。

 町では3月期補正予算で累積赤字を一掃し、運営を外部に委託するなど体質改善を図る予定だが、決定的な解決策は見いだせないでいる。

 同機構が売却交渉中のリゾート施設「いこいの村」は全国に32カ所。大半は「不便な立地と営業のまずさ」(ホテル関係者)から赤字経営に陥っている。

 ほかに、大都市などにある研修施設「テルサ」(12カ所)も「建設費約75億円の熊本テルサが約5300万円で売却の提示があった」(熊本県)など、“大出血”で売り出されている。

 売却先は土地などを所有する地元自治体。引き受けなければ「解体」となるため、「税金で作ったものを税金で壊すのは忍びない」(中部地方の自治体幹部)と購入の意向を示すところが多い。

 だが、財政難の中、新たな負担が生じることに「国の失敗を押しつけないでほしい」(同)との悲鳴も上がっている。

(竹岡伸晃)=この項、続く


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