「2012年9月に橋下徹を語ること」のリスクを、我々はもっと自覚しなければならない
── さて、今日は橋下徹氏についての盛大な床屋談義が聞けるということで、喜び勇んでやって参りました。よろしくお願いします!
ひがらく なんのことですか。
── ひねりのないおトボケはやめてください。前回のエントリで「次回は橋下徹という男について語り尽くす!」と豪語されたじゃないですか。
ひがらく アホなこと言っちゃいけない。私はそんなこと、ひとことも言ってませんよ。「2012年9月現在、この国で最も加速度的に権力を手中に収めつつある『あの男』について語ることが、何よりもアクチュアルな問題だ」と言っただけであって……
── え、ビビってんすか? 今日9月8日は、橋下氏が初めて正式に維新の国政進出を表明した記念すべき日じゃないですか。党名も「日本維新の会」に正式決定したようですし。
橋下氏「国の根っこ変える」 維新の国政進出表明
地域政党「大阪維新の会」代表の橋下徹大阪市長は8日午後、大阪市内で開いた所属議員らによる全体会合の冒頭あいさつで「国の根っこの部分を変えていく。それが地方の自立につながる」と強調した。その上で、「国政政党に一歩踏み出したい」と述べ、新党を結成しての国政進出を正式表明した。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC0801T_Y2A900C1000000/
橋下氏、国政進出を表明=新党名は「日本維新の会」に
地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)は8日、大阪市内で全体会議を開き、次期衆院選で国政進出し、新党の名称を「日本維新の会」とする方針を正式決定した。橋下氏は「国政政党の設立に向けて力を注いでいきたい」と決意を表明した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2012090800239
ひがらく 君はどうしてそう、すぐ固有名詞を連発してがんじがらめに私を縛り付けようとするのかね?
── しらばっくれるのもいい加減にしてください。貴方、こんなまとめまで作ってるでしょ。ほれ。【日本維新の会】ついに国政進出も、意外に冷たいネットでの反応。
ひがらく ……。
── というか、貴方NAVERまとめで50個も作ってて、半分くらいが橋下氏関連もしくは維新の会関連じゃないですか。さては橋下支持者ですね? 早めに立場を明確にしておいた方が後々ラクですよ。
ひがらく 拒否する! なぜなら、亡くなった祖父さんが 「ひがらくよ……お前はいくら友達との会話でも、いや友達だからこそ、政治の話だけはしてはならぬ。ならぬ……ぞ……」 と言い遺していったんです。
── そんな古典的な一人寸劇やらなくていいです。どうしてそんなに拒否しますかねえ? 震災以降、政治的な話をすることは、引かれるどころかむしろ尊重される傾向にありますよ。いつまでそんな 「ゼロ年代の真っさらな地平」 に立って傍観者決め込んでるんですか!
ひがらく な、なんですかその 「ゼロ年代のなんとか」 とかいうフレーズは。
── 私が今、勝手に思いついただけですよ。さあ早くしてください。
ひがらく いやあ、真面目な話しても別に面白くもなんともないよ?
── 既に面白くないからその点は大丈夫です。
ひがらく 私にとって、橋下徹氏という人間は、正直個人的にあまり受け付けるタイプではないのです。が、今この状況で彼の率いる政党・彼の主張する政策以外に、この国の生き延びる道があるのか? と考えると、わからなくなってしまうのですよ。
── 平たく言うと、一政治家としては苦手だが、政策としては支持できるところが多い、と?
ひがらく そんな週刊誌の見出し風に切り取らないように。
── でも、そうでしょう?
ひがらく まあ、当たらずとも遠からずってところですかね。あ、そうそう、もう開き直りますけどね、さっき君が言ったまとめ作ってるときにね、アンチのもシンパのも公平にツイート読んでたわけですよ。そしたら、アンチ橋下には大きく2種類いるな、と気づいたんです。
まずは、橋下徹に「父性の復権」みたいなものを嗅ぎ取って生理的に受け付けないタイプ。文化人に多いというか、内田樹さんに代表されるあの感じですね。あともう一つは、知性の薄い単なるレイシストね。匿名掲示板でもないのに、よくこういうツイートを、しかも主要なニュースサイトに紐づいた場所で言えるなあ、と感心すらする。もう、びっくりするよ?
── 例えばどんなんですか?
ひがらく この手の言葉、書きたくもないからリンクに留めるけど、これとかこれとか。こういうのが、検索するとわらわら出てくるわけだよ。全部ふぁぼりまくって、壮大な魚拓まとめを作ろうかとも一瞬考えたんだが、あまりに誰得すぎるので止めました。
── まあ、アンチ橋下にもいろんなレイヤーがあるわけで、その一部分を切り取って言ってもねえ……。
ひがらく (話を遮って)あとさあ、今だにヒトラーとか独裁とか言う奴の多いこと多いこと! ほれ。ほれ。橋下徹が私設軍隊を持ってるか? 焚書したり秘密警察つくったりするか? 2012年のこの世界で、ヒトラーみたいな独裁政治家が日本で成立するかっつーの! アメリカが崩壊するとかしない限り、あり得ない! あり得るわけがない!!!
── なかなかいい感じに荒ぶってきましたね。
ひがらく (取り乱したことを恥じるように、胸ポケからバージニアスリムを取り出しながら)いや、俺は冷静だよ? ただ、アンチ橋下にもいろんなレイヤーがあって、一概に言えるわけじゃないってことなんだ。
── それ、さっき私が言いました。
ひがらく (鼻から煙草の煙を吹き出しながら)そうか。つまりだな、何が言いたいかというと、2012年9月、新党結成直前のこの時期に橋下徹を語ることはとても危険な行為なんだよ。
おそらく、ネットでも見えないくらい世論は今、橋下アンチ/橋下シンパの真っ二つに割れてると思う。昨日までニコニコと楽しく談笑していた旧い付き合いの友達が、あるいは愛を囁き合うカップルが、「橋下徹」の話題で意見が食い違ったその刹那、一気にその関係性は崩壊してしまうのだ!
── そりゃまた極端な。
ひがらく 極端だとは思えないね。しかも、まだ何者なのか正確にはわからないわけじゃないですか、橋下氏って。すごく話題になってるけど、まだ上場前で、実際に株価がいくらになるか読めない銘柄みたいなもんですよ。Facebookみたいにガタ落ちするかもしれないし、往年のYahooのように大化けするかもしれない。評価をどうくだしていいか、まだわからない。「あいつは独裁者!」みたいなフレーズだけが聞こえてくる。彼についての情報が世間に溢れ過ぎていて、フラットに評価することが難しいんじゃないかな。大阪市民、大阪府民以外は特にね。
テレビでの立ち振る舞いがうまいなあ、くらいはだいたいみんな思ってるでしょうよ。でも、「これを『支持する』って友人知人に公言するのは微妙かなあ」みたいに、それぞれ「引き」の自分が突っ込みを入れてると思うわけですよ。
── じゃあその理屈でいくと、Twitterで立場を明言してる人たちはどうなんでしょうね?
ひがらく どうなんだろうね? たぶんTwitterって、基本的には自分と似た意見の人をフォローしたりされたりするわけでしょう? そういう、共通点の多い人たちで自分の周りを固めたら、さっき言ったような葛藤はないのかもね。「橋下は相変わらず信用できませんね」と言ったらすぐに「ですよねー」っていうリプライが返ってくる環境というかね。ま、Twitterって本来そういうもんでしょうけど。
── なるほど。では、過去の首相の話題なら無難なんじゃないですか? 小泉元首相とか。
ひがらく 小泉さんは、どことなく憎めないキャラクターがあるからね。「あの人、変人だし」の一言で波風立てなく話題にできる気楽さがあった。今の橋下氏にはそれがない。そこが一番の違いだよね。
── でも、今でも「格差社会の元凶、小泉許すまじ!」とか「親米ポチ、ワンワン」とか言う人いっぱいいますよ?
ひがらく 確かにね。私なんぞに言わせれば、「格差社会のどこが悪い?」なんだけどね。
── うわぁ……。
ひがらく 大丈夫大丈夫。金持ちがそれ言ったら叩かれるけど、貧民の私が言っても誰も聞いてないっすよ。でも、本気でそれ思うわ。格差社会なんて、太古の昔から連綿と当然のように続いてきてたわけで、「格差がない社会」っていう幻想が抱けたのは「戦後高度成長期の日本」という極めて限定された期間だと思う。だいたいさ、今の若い人たちは知らないんだよ。小泉さんが首相になる前の、「もう、この国は明日にでも終わる! だったら小泉さんに有りガネ全部賭けてみよう!さらに倍!!!」みたいな二択だったのだよ。あの時もし小泉さんが……
── あ、その話長くなりそうです?
ひがらく これから佳境に入らんとするところなんだが、もしかして水を差したいんですか?
── いえいえ、そろそろお時間かなと。数少ない読者さんも、そろそろ飽きてきてます。
ひがらく じゃあ次回は小泉純一郎について語ろうか。「熱狂の政治史」シリーズ第1弾、ということで。
── そんな暑苦しいのは遠慮しときます。では最後に言い残すことはありますか?
ひがらく より良い友人関係・恋人関係・夫婦関係を目指すなら、橋下徹の話題はダメ!絶対! あと、Twitterの小窓で鬱憤晴らしてるそこの君、そういうのやめた方がいいと思うよ。
── といったあたりで、今回はお開きにしたいと思います。
ひがらく みんな、税金払えよ!(「歯磨けよ!」の口調で)
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