【社説】ソウル市の50年間被ばく調査は無意味

 ソウル市蘆原区月渓洞の路上で昨年11月に放射性物質のセシウムが検出された問題で、ソウル市は現地の住民1万人を対象に、今後50年かけて被ばくの影響を調べる追跡調査を行うと発表した。最初は2年から5年ごと、その後は10年ごとに、健康保険公団の医療機関の診療記録を確認する方法で、50年かけて調査を行うという。この追跡調査には毎年1億―2億ウォン約700万―1400万円)の予算が投入される。ソウル市は昨年11月、月渓洞の住宅街の路上で放射線の数値が高まったという住民からの通報を受けて調査に乗り出し、アスファルトに微量のセシウムが含まれていることを確認。問題のアスファルトを全て撤去・回収した。

 ソウル市はこれまで月渓洞住民1万631人を対象に「問題の道路を通った頻度」などを尋ねるアンケート調査を行い、路上にいた時間を推測した上で、これに地表から出る放射線量を掛け算して計算する方法を用い、住民の累計被ばく量を計算した。調査の結果、1回でも問題の道路を通った人は5598人で、その平均被ばく量は0.393ミリシーベルトと推定された。この数値は飛行機で米国まで2往復する際、宇宙から飛来する放射線を浴びる量と同程度にすぎない。そのため今回のやり方を採用するのであれば、飛行機で長距離のフライトを2回以上した経験のある数十万人から数百万人の国民全員を対象に、追跡調査を実施しなければならないことになる。

 同地域周辺の住民1万人の中で、5年間の平均被ばく量が年間1ミリシーベルトを超過したと推測される「多量被ばく者」は102人いたという。韓国人の年平均自然放射線被ばく量は平均3ミリシーベルトだが、CTスキャンなどの医療機器で検査を1回受けると、被曝量は6.9ミリシーベルトに達する。これにソウル市による今回の基準を適用すると、7年に1回CTスキャンの検査を受けるだけで、特別管理対象となってしまう。50年といえば、その間に任期がわずか4年のソウル市長は12回も交代するが、その中のいったい誰がこの追跡調査に責任を持つというのだろうか。

 韓国人1万人を対象に行った死亡原因の調査結果によると、2500人は放射線以外のたばこ、食事、化学物質、ストレスなどさまざまな原因によるがんで死亡していた。その2500人の中で、一体誰がアスファルトから出る放射線の影響でがんにかかったと判断できるのだろうか。要するにソウル市が計画している50年の追跡調査というのは、住民の不安とストレスを増大させる以外は何の結果ももたらさないということだ。

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