NHKがビジネスホテルチェーン「東横イン」を相手に受信料計約5億5210万円の支払いを求めた訴訟が波紋を広げている。受信料徴収をめぐっては、一般庶民に対しても裁判を乱発。強引な取り立てまであるのが実情だ。10月からの「受信料値下げ」をテレビを使い大アピールするその裏側で“大増収”に突っ走っているNHKに、非難の声が上がっている。
9月10日に東京地裁で開かれた第1回口頭弁論で、NHK側は「ホテルの受信料は主に客室単位で計算する。テレビが設置されているのに未契約の約3万3700件分がある」と主張した。一方、東横イン側は「空室やテレビを見ない人のことを考えておらず、納得できない」と徹底抗戦する構えを見せる。NHKは東横インとは別のホテル事業者2社に対しても同様の訴訟を起こしている。
2010年からは全国で不払いを続ける世帯に受信料の“強制執行の勧告”という実力行使に突入。8月末で、125人が通知を受け、そのうち90人に強制執行の手続きが申し立てられている。
あるNHK職員は「受信料に関しては営業セクションなので、局全体にはトラブルの情報は入らない。その分、受信料裁判で勝訴の話ばかり聞くので、職員のほとんどは“払って当たり前”の雰囲気になってますね」と明かす。
それにしてもNHKの“受信料”への強硬姿勢は何か腑に落ちない。
元NHK職員で、ネット上の「ひとり放送局」でNHK問題を告発している立花孝志氏も「もう横暴さを許すわけにはいかない。これはヤクザまがいの行為」と憤る。
「そもそもホテルへの徴収ですが、ホテルで見る人は宿泊客。その宿泊客は自分たちの家でも受信料を払っていますよね。つまり、家でも払って、宿泊先のホテルでも払うことになる。二重徴収にならないでしょうか?」
さらに、立花氏はNHKが受信契約や受信料徴収を委託している業者の“暴走”を危惧する。
「委託業者は契約させればNHKから金が入る。しつこく訪問したり、脅して契約させてしまうこともある。私も勝手に家に上がり込んで、契約させられた女性からの相談も受けています」
5月にはNHK鹿児島放送局の委託業者が、鹿児島県霧島市に住む男性の衛星放送受信契約書を偽造。男性の口座から受信料5440円が引き落とされたことが判明した。
NHKの“強制執行の勧告”は今後も続くとみられる。しかも、テレビの契約だけでは終わらない可能性もあるのだ。
「昨年7月に放送法の受信料に関する旧第32条が新第64条に変わったんですけど、新たに加えられた第4項が問題です」
第4項とは「協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をするものについても適用する」という規定。
受信するものはすべて受信料を徴収できるということだ。つまりワンセグケータイやカーナビ、パソコンまで徴収対象にする構えだというから恐ろしい。
実際に業者がテレビのない家庭に対し「ワンセグ見れるなら払わないといけない」と徴収する例は後を絶たない。
小さなケータイ画面と大画面でテレビを見る人が同じ受信料とは納得いかない気がするが…。
立花氏は「裁判で勝ったことはニュースでバンバン流すのに、ヤクザまがいの徴収の仕方が問題になっても、流れることはない。もちろんそうした徴収の仕方を問題視する番組を作るわけはないし、ひきょうです。私はこれからもNHKの問題点を訴えていきますよ」と熱っぽく語った。