いやあ。びっくりした。政治家が言ったもん勝ちになっている今のメディア状況。
どんどん、発言がエスカレートしているのに、テレビも新聞も反論しないじゃないか!
というわけで、しょうがないので、権力も波及力もないけど解説します。
まず、火付け役、何でも言いっぱなしの橋下大阪市長の発言の「間違い」「勘違い」からはじめましょう。8月21日と24日の記者会見はyoutubeにも載っているけれど、wamでは正確さを期すために、書き起こしをウェブに掲載(wam de カフェ資料)していますので、詳しくはそちらをご覧くださいね。
(1)「慰安婦」の強制連行の「証拠」がないという「嘘」
8月24日、橋下(←すでに呼び捨て)は、「2007 年に強制連行を示す、それを裏付けるような、直接示すような記述、直接の証拠はなかったということを安倍内閣のときに閣議決定がされているわけです」と発言し、さらにツイッターでは、「2007年の強制連行を裏付ける証拠はなかったとした閣議決定との整合性はどうなんだ」とまで言ってます。
こんなこと読むと、「そうか、河野談話はすでに覆されているんだ」と思ってしまいそうなアナタ、気をつけましょう。
まず第1のすり替えは、「記述」と「証拠」をごっちゃにしていること。2007年の閣議決定というのは、実は辻元清美議員が提出した質問主意書に対する答弁書(2007年3月16日、内閣衆質一六六第一一〇号)で、質問主意書への答弁は、すべて閣議決定することになってます(ちなみに今年の180国会で出された衆議院の質問主意書は424本!)。それは以下のように書かれています。
「同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」
はい。政府が1993年の河野談話を発表するまでに発見した資料には、「軍や官憲による強制連行を直接示す」「記述」がなかったといっているわけです。防衛庁(当時)やら、外務省やら、厚生労働省から発見された文書にそういうものに、なかった。そして、河野元官房長官、石原信雄元官房副長官が『オーラルヒストリー アジア女性基金』(女性のためのアジア平和国民基金発行)で明らかにしているとおり、軍や官憲が女性たちの意に反して連行したことは、韓国の被害者16人の証言を聞いて、「信頼するに十分足りる」と判断したとかかれています。
なので、賢い官僚に囲まれている野田総理大臣や玄葉外務大臣は、「整合性がない」なんて答弁しません。だって、政府が1993年までに発表した文書に記述がなかっただけだもの。整合性、あるんです。
ここで、みなさん、質問するでしょ?「でも、やっぱり強制連行を示す証拠はなかったんですか?」って。
証拠はあります。被害者の証言は、証拠です(被害者証言を証拠じゃないって思うみなさん、十分に検討された証言が証拠じゃなかったら、争いをどう解決するんでしょう?) さらに、河野談話が発表された1993年以降、オランダ政府はオランダ人の「慰安婦」被害の調査報告書を発表していますし、東京裁判の証拠書類の発掘も進んでいて、「軍や官憲による強制連行」を裏付ける記述は多数あります。1990年代以降の「慰安婦」訴訟の判決のなかで被害認定をしているものも、裏付ける文書といえるでしょう。
じゃ、何がないんでしょうね?
そもそも「軍や官憲による強制連行を直接示す」文書って、どんなものですか?
たぶん、「直接」っていう言葉がキモなのでしょうね。それこそあったら出して欲しい。
「軍は、朝鮮の女性を強制的に連行せよ」っていう命令書ですか?「これらの女性たちを軍は、強制的に連行してきた」という日誌ですか? そんな違法行為をわざわざ軍の文書に残すはず、ないじゃないですか!?
そもそも、日本政府と陸・海軍は、ポツダム宣言受諾決定直後、関係省庁や軍部のすべての機関に対して、重要書類の焼却を通達で出していました。都合の悪いものはガッツリ燃やしちゃったわけです。それでも、「慰安婦」制度を軍が設置し、女性たちを移送し、維持・管理した文書が300件近く見つかった・・・。つまり、「燃やしきれなかった」んですね、あまりに当たり前のことだったので。
河野談話を発表するために、以下の資料を使ったと政府報告には書いてあります。
▽調査対象機関:警察庁、防衛庁、法務省、外務省、文部省、厚生省、労働省、国立公文書館、国立国会図書館、米国国立公文書館
▽関係者からの聞き取り:元従軍慰安婦、元軍人、元朝鮮総督府関係者、元慰安所経営者、慰安所付近の居住者、歴史研究家等
▽参考として国内外の文書及び出版物:韓国政府が作成した調査報告書、韓国挺身隊問題対策協議会、太平洋戦争犠牲者遺族会など関係団体等が作成した元慰安婦の証言集等。
このうち、聞き取りをされた「慰安婦」被害者は韓国の16人です。ほかの国の被害者は聞き取りされていません。フィリピンや中国など、占領地での被害もすさまじいものです。それにこの時点で見つからなくても、中曽根元総理大臣がインドネシアのバリクパパンに設置した慰安所の文書などは、2011年に防衛省の図書館を調査した市民団体が見つけています。
今日はここまで。これからも「説明」と「反論」を続けます。
どんどん、発言がエスカレートしているのに、テレビも新聞も反論しないじゃないか!
というわけで、しょうがないので、権力も波及力もないけど解説します。
まず、火付け役、何でも言いっぱなしの橋下大阪市長の発言の「間違い」「勘違い」からはじめましょう。8月21日と24日の記者会見はyoutubeにも載っているけれど、wamでは正確さを期すために、書き起こしをウェブに掲載(wam de カフェ資料)していますので、詳しくはそちらをご覧くださいね。
(1)「慰安婦」の強制連行の「証拠」がないという「嘘」
8月24日、橋下(←すでに呼び捨て)は、「2007 年に強制連行を示す、それを裏付けるような、直接示すような記述、直接の証拠はなかったということを安倍内閣のときに閣議決定がされているわけです」と発言し、さらにツイッターでは、「2007年の強制連行を裏付ける証拠はなかったとした閣議決定との整合性はどうなんだ」とまで言ってます。
こんなこと読むと、「そうか、河野談話はすでに覆されているんだ」と思ってしまいそうなアナタ、気をつけましょう。
まず第1のすり替えは、「記述」と「証拠」をごっちゃにしていること。2007年の閣議決定というのは、実は辻元清美議員が提出した質問主意書に対する答弁書(2007年3月16日、内閣衆質一六六第一一〇号)で、質問主意書への答弁は、すべて閣議決定することになってます(ちなみに今年の180国会で出された衆議院の質問主意書は424本!)。それは以下のように書かれています。
「同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」
はい。政府が1993年の河野談話を発表するまでに発見した資料には、「軍や官憲による強制連行を直接示す」「記述」がなかったといっているわけです。防衛庁(当時)やら、外務省やら、厚生労働省から発見された文書にそういうものに、なかった。そして、河野元官房長官、石原信雄元官房副長官が『オーラルヒストリー アジア女性基金』(女性のためのアジア平和国民基金発行)で明らかにしているとおり、軍や官憲が女性たちの意に反して連行したことは、韓国の被害者16人の証言を聞いて、「信頼するに十分足りる」と判断したとかかれています。
なので、賢い官僚に囲まれている野田総理大臣や玄葉外務大臣は、「整合性がない」なんて答弁しません。だって、政府が1993年までに発表した文書に記述がなかっただけだもの。整合性、あるんです。
ここで、みなさん、質問するでしょ?「でも、やっぱり強制連行を示す証拠はなかったんですか?」って。
証拠はあります。被害者の証言は、証拠です(被害者証言を証拠じゃないって思うみなさん、十分に検討された証言が証拠じゃなかったら、争いをどう解決するんでしょう?) さらに、河野談話が発表された1993年以降、オランダ政府はオランダ人の「慰安婦」被害の調査報告書を発表していますし、東京裁判の証拠書類の発掘も進んでいて、「軍や官憲による強制連行」を裏付ける記述は多数あります。1990年代以降の「慰安婦」訴訟の判決のなかで被害認定をしているものも、裏付ける文書といえるでしょう。
じゃ、何がないんでしょうね?
そもそも「軍や官憲による強制連行を直接示す」文書って、どんなものですか?
たぶん、「直接」っていう言葉がキモなのでしょうね。それこそあったら出して欲しい。
「軍は、朝鮮の女性を強制的に連行せよ」っていう命令書ですか?「これらの女性たちを軍は、強制的に連行してきた」という日誌ですか? そんな違法行為をわざわざ軍の文書に残すはず、ないじゃないですか!?
そもそも、日本政府と陸・海軍は、ポツダム宣言受諾決定直後、関係省庁や軍部のすべての機関に対して、重要書類の焼却を通達で出していました。都合の悪いものはガッツリ燃やしちゃったわけです。それでも、「慰安婦」制度を軍が設置し、女性たちを移送し、維持・管理した文書が300件近く見つかった・・・。つまり、「燃やしきれなかった」んですね、あまりに当たり前のことだったので。
河野談話を発表するために、以下の資料を使ったと政府報告には書いてあります。
▽調査対象機関:警察庁、防衛庁、法務省、外務省、文部省、厚生省、労働省、国立公文書館、国立国会図書館、米国国立公文書館
▽関係者からの聞き取り:元従軍慰安婦、元軍人、元朝鮮総督府関係者、元慰安所経営者、慰安所付近の居住者、歴史研究家等
▽参考として国内外の文書及び出版物:韓国政府が作成した調査報告書、韓国挺身隊問題対策協議会、太平洋戦争犠牲者遺族会など関係団体等が作成した元慰安婦の証言集等。
このうち、聞き取りをされた「慰安婦」被害者は韓国の16人です。ほかの国の被害者は聞き取りされていません。フィリピンや中国など、占領地での被害もすさまじいものです。それにこの時点で見つからなくても、中曽根元総理大臣がインドネシアのバリクパパンに設置した慰安所の文書などは、2011年に防衛省の図書館を調査した市民団体が見つけています。
今日はここまで。これからも「説明」と「反論」を続けます。
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