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石川家畜市場閉鎖へ 子牛出荷頭数減 原発事故追い打ち 今年度限り、本宮に集約

閉鎖の見通しとなった石川郡畜産農協の子牛競り市=12日
閉鎖の見通しとなった石川郡畜産農協の子牛競り市=12日

 石川、東白川、いわき各地方などの子牛を販売するため、福島県石川町の石川家畜市場で毎月競り市を開催している石川郡畜産農協が、今年度限りで市場を閉鎖する見通しとなった。東日本大震災前から出荷頭数が減り市場維持が危ぶまれていた中、東京電力福島第一原発事故で減少に拍車が掛かり、追い打ちをかけられた格好だ。同市場に出荷している農家は本宮市で行われる全農県本部の競り市に出荷することになる。出荷場所が遠くなるため閉鎖を機に廃業する小規模農家が出るとの見方も出ている。

■収入減で経営難
 「組合員に不安を与えない方向で受け入れをお願いしたい」。石川郡畜産農協の渡辺一雄組合長は14日、石川町で開いた畜協と市場閉鎖後の業務を引き継ぐJAあぶくま石川による組織・事業統合に向けた協議会の初会合の席上求めた。高原喜国JAあぶくま石川組合長は「畜協とJAの組合員は同じ顔触れ。組合員が生産した物を販売するのはわれわれの業務」と述べ、農家がスムーズに本宮市での競り市に参加できるよう協議を進めることを確認した。
 農家を支えるためには本宮市に子牛を運ぶ体制を確立し、JAあぶくま石川内に子牛生産業務に対応できる職員を配置することなどが必要になる。畜協が財産や残務を整理した後の最終的な存廃方法も議論になる。
 一方、閉鎖を打ち出したのは、子牛入場頭数が大きく減少したことが背景にある。
 原発事故後の昨年は子牛の価格が大幅に下落したことなどで廃業や規模を縮小する農家が目立ち、競り市の入場頭数が減ってきた。頭数が減ると畜協の仲介手数料収入も減少し、経営が苦しくなる。最近の入場頭数は二百数十頭で推移しており、畜協が市場が成立しなくなる目安としている200頭割れが目前に迫っている。
 年間の売り上げ頭数は平成元年度は3744頭だったが、昨年度は前年度比159頭減の2621頭と近年にない減少幅となった。

■廃業の懸念
 農家や購買者からは市場閉鎖の影響を懸念する声が上がる。
 石川地方の場合、農家から市場に子牛を運ぶ運搬車は現在は市場が近いため複数回往復できるが、本宮市は遠方になるため時間の都合でどの程度運べるか未知数だ。平田村の畜産農家男性(60)は「小規模に子牛を生産している高齢者は遠路で市場に行けないのではないか。閉鎖を機に農家をやめざるを得ないという声が出ている」と打ち明ける。
 石川家畜市場で子牛を買って育てている矢吹町の肥育農家男性(64)は「石川より遠くなるが閉鎖後は本宮に行く」という。「ただ、県内ほとんどの子牛が一つの市場に集中すると、資金力のある県外の購買者が質の良い牛を買い占めてしまう恐れがある」と不安を口にする。

■一極集中
 来年4月以降に県内で実働する和牛子牛市場は、全農県本部の競り市と、県家畜商業協同組合が矢吹町で運営している子牛を含めた多彩な家畜を扱う市場だけになる。全農県本部の競り市は年間8000頭以上、石川家畜市場は約二千数百頭の売買を扱っており、今後は全農県本部の競り市に県内ほとんどの子牛が集まることになる。
 ただ、全農の市場は手狭で老朽化しているため、安定的な競り市の運営には市場の改修や新築、移転などを視野に入れる必要がある。全農県本部は「農家、購買者が安心して市場を利用できるようにしたい」として受け入れ態勢整備を進める。

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