―今日、シェールガスが低価格であるという楽天主義が蔓延している。たとえば米国の市場では、1000㎥あたりのシェールガスが国内で100ドルという特異な状況が現れた。だが理解せねばならぬ、これは半値まで原価割れした数字だ。米企業の「黒字転化」を助けているのはその他の、高価なガス濃縮液、つまりシェールガス田で作られる副産物の販売なのである。このような状況が長く続いていくことは不可能だ。遅かれ早かれ、米国におけるシェールガスの価格は上昇する。
欧州で最も豊富なシェールガス埋蔵量を誇るのはポーランドである。このことが判明するや、何やら世界の石油・ガス最大手5社が一斉にポーランドに駆け込んだようだ。が、早々に、海外の投資家たちは幻滅に見舞われた。米エクソン・モービルは、ポーランドでのボーリングは赤字必至と認め、完全に撤退してしまった。中国では、オプチミストに言わせれば、国内エネルギー需要を今後10年にわたって満たせるだけのシェールガス埋蔵量が推定されている。しかし大多数はこうした評価に懐疑的である。中国国務院に連なる学術研究所のスン・ユンシャン研究員は以上のように指摘し、次のように続けた。
―シェールガスはどうにかこうにか、従来の天然ガスと競争可能かも知れない。たしかに、世界の特定の地域では、そう大きからぬ補完的役割を演じることは出来るかも知れぬ。しかし、地球規模で見て、シェールガスが伝統的天然ガスにとって代わるものになり得るとは、到底言えぬ。中国でもそうだ。私の見るところでは、シェールガスに将来はない。近い将来もないし、中期的な展望もない。のみか、シェールガスの生産には、深刻なエコロジー上のリスクが伴うのだ。
シェールガスの生産は、実際、エコロジーの観点からリスキーである。それにもかかわらず、開発は進められている。識者の中には、米国が国内産シェールガスの輸出を始めるとき、世界市場におけるロシアの「ガスプロム」支配は落日を迎える、と予言するものもいるが、果してそんなことが起り得るか。中国の専門家、スン・ユンシャン氏は異論を唱える。
―数年後、世界のエネルギー市場に登場する可能性のある米国のシェールガスは、ロシアのエネルギー産業にとっての脅威とはなり得ない。大洋を越えてガスを届けるには、液体状態に変化させなければならないのだし、加えて、輸送に膨大な費用がかかる。シェールガス生産にかかる原価の高さも考慮しないわけにはいかない。総合すると、シェールガスを欧州が購入する場合、ロシアからのガスパイプラインを用いる場合の7倍も高くつくという計算になる。
中国の専門家の考えでは、今後15年、シェールガスが世界のガス生産のバランスに影響を与えることはない。その間も、ロシアのガスプロムはアジアのガス市場に進出を続ける。まさにアジアにおけるエネルギー需要の高まりによって、「空色の燃料(=天然ガス)」の全地球的役割が増大していくことが見込まれるからだ。
アレクサンドル・マミチェフ