2012年09月11日
背景:
地球上の生物は進化を繰り返すことで複雑な生態系を形成し、ヒトのように高度な知能を持つ生物も生み出した。しかし生物によっては長い間進化をしないで生き延びるものや、一部だけ進化しすぎることで絶滅が早まってしまうものも存在する。
要約:
進化は変異と淘汰を繰り返すことで起こるため、より環境に適応した形態をとる。しかし何十万年、何百万年という時間の中で、環境は刻々と変化しているため必ずしも長く生き延びられるわけではないようだ。
この度、ニューヨーク州立大学バッファロー校のCharles Michell博士らによって、現在海底に生息する半索動物の一種である翼鰓綱エラナシフサカツギ属は、その構造などから3億5000万年前に絶滅したフデイシの祖先であるという研究結果が発表された。
エラナシフサカツギ属についてはよく知られており、海底で貝殻上にコラーゲンから出来たコロニーを形成する。5億年以上前から生息していると考えられているこの動物は、歴史上生態系の重要な位置を占めることはなかったと考えられている。
海底に生まれた動物プランクトンは、すばやく進化し多くの新たな種へと広がっていった。動物プランクトンは進化するにしたがって海面へと広がって いき、新たな生態系において重要な位置を占めるようになったが、海底に残ったエラナシフサカツギ属は進化せずに新たな生態系にも組み込まれることはなかっ た。
Mitchell博士によると、そうして進化していったフデムシは気候変動などによる大絶滅から免れることができず、3億5000万年前に絶滅し てしまった。しかし海底に残ったエラナシフサカツギ属は気候変動の影響をあまり受けず、今日まで生き残ることができたのだという。
これらの事実から、当時の環境に適応する進化というのはハイリスクハイリターンとなり、長期的に見ると必ずしもよい結果になるとは限らないことが 分かる。逆に新たな生態系にも組み込まれずひっそりと生息するローリスクローリターンな方法をとることで、より長期間に渡って種を維持することも可能とな る。
エラナシフサカツギ属が古代のフデムシであるという事実から、これまで研究が困難であったフデムシの生物学的な理解が進むことになり、フデムシがどのような姿をしていたのか、どのように生殖を行っていたのか、何を食べていたのかなどを知ることができる。
エラナシフサカツギ属の一種
元記事:
Ancient, Humble Critter Proves: Newer Isn’t Always Better
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120907111619.htm
参照:
Charles E. Mitchell, Michael J. Melchin, Chris B. Cameron, Jörg Maletz. Phylogenetic analysis reveals that Rhabdopleura is an extant graptolite. Lethaia, 2012; DOI: 10.1111/j.1502-3931.2012.00319.x
地球上の生物は進化を繰り返すことで複雑な生態系を形成し、ヒトのように高度な知能を持つ生物も生み出した。しかし生物によっては長い間進化をしないで生き延びるものや、一部だけ進化しすぎることで絶滅が早まってしまうものも存在する。
要約:
進化は変異と淘汰を繰り返すことで起こるため、より環境に適応した形態をとる。しかし何十万年、何百万年という時間の中で、環境は刻々と変化しているため必ずしも長く生き延びられるわけではないようだ。
この度、ニューヨーク州立大学バッファロー校のCharles Michell博士らによって、現在海底に生息する半索動物の一種である翼鰓綱エラナシフサカツギ属は、その構造などから3億5000万年前に絶滅したフデイシの祖先であるという研究結果が発表された。
エラナシフサカツギ属についてはよく知られており、海底で貝殻上にコラーゲンから出来たコロニーを形成する。5億年以上前から生息していると考えられているこの動物は、歴史上生態系の重要な位置を占めることはなかったと考えられている。
海底に生まれた動物プランクトンは、すばやく進化し多くの新たな種へと広がっていった。動物プランクトンは進化するにしたがって海面へと広がって いき、新たな生態系において重要な位置を占めるようになったが、海底に残ったエラナシフサカツギ属は進化せずに新たな生態系にも組み込まれることはなかっ た。
Mitchell博士によると、そうして進化していったフデムシは気候変動などによる大絶滅から免れることができず、3億5000万年前に絶滅し てしまった。しかし海底に残ったエラナシフサカツギ属は気候変動の影響をあまり受けず、今日まで生き残ることができたのだという。
これらの事実から、当時の環境に適応する進化というのはハイリスクハイリターンとなり、長期的に見ると必ずしもよい結果になるとは限らないことが 分かる。逆に新たな生態系にも組み込まれずひっそりと生息するローリスクローリターンな方法をとることで、より長期間に渡って種を維持することも可能とな る。
エラナシフサカツギ属が古代のフデムシであるという事実から、これまで研究が困難であったフデムシの生物学的な理解が進むことになり、フデムシがどのような姿をしていたのか、どのように生殖を行っていたのか、何を食べていたのかなどを知ることができる。
エラナシフサカツギ属の一種
元記事:
Ancient, Humble Critter Proves: Newer Isn’t Always Better
http://
参照:
Charles E. Mitchell, Michael J. Melchin, Chris B. Cameron, Jörg Maletz. Phylogenetic analysis reveals that Rhabdopleura is an extant graptolite. Lethaia, 2012; DOI: 10.1111/j.1502-3931.2012.00319.x