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スマホ大手・台湾HTCが犯した4つのミス、「傲慢」批判が集中

東洋経済オンライン 9月21日(金)11時52分配信

スマホ大手・台湾HTCが犯した4つのミス、「傲慢」批判が集中
一時の勢いは失われたHTC

 1年前、台湾のスマートフォンメーカー、宏達国際電子(HTC)は消費者に感動を与えていた。いまやその感動は失われ、存在するのは傲慢だけだ。

 昨年は主力製品がヒットし業績は絶好調だった。海外のブランド調査会社は、HTCを世界のブランドトップ100にランクインさせ、そのブランド価値を36億ドルと評価した。これはイタリアのフェラーリ社を上回る。HTCはまさに天国にあった。スマートフォンの世界シェアは10%に上昇した。

 だが、今年になるとシェアは5%台に低下。中国の中興通訊(ZTE)にすら0・5ポイント差に迫られている。天国と地獄は紙一重である。

 今年2月、王雪紅会長と周永明CEOは、スペインに飛んだ。バルセロナで開催される携帯通信関連の見本市に参加するためだ。HTCは最新の設計、最先端の技術を駆使した「One」シリーズを出展した。そして高い評価を得た。

 ところがこれが逆に作用する。HTCの第一の誤りは、成功が早すぎて崩壊に気づかなかったことだ。

 周CEOは、Oneシリーズがバルセロナで高い評価を得たことを伝えるメールを社員全員に送った。「ここでの出展は、われわれにとって創業以来の最高のものだ。社員の努力の結果である」。

 その1カ月後、ディスプレーの不具合、製品内部で使われているチップの性能への疑問、米国税関での米輸入差し止めといった問題が相次いで発生した。ついには米国のAT&TがHTC製品を在庫品処分のため半額で販売した。

 バークレイズ証券のアナリストは、「1年間は儲けたが、成功が早すぎてアンドロイドが糖衣に包まれた毒薬だったことに気づかなかった」と指摘する。

 スマートフォン市場で、HTCの参入は早かった。アンドロイドの出現で、HTCは天国を味わった。しかし危機が近づいてきたとき、王会長と周CEOは、自分は正しいのだと信じることを選択してしまった。

 第二の誤りは、誤りを認めずに信頼を失ったことだ。

 「ライバル(アイフォーン4S)の実力を低く見すぎていた。しかし調整を経て、HTCは正しい方向に向かっている」。これは今年の第1四半期の機関投資家向け説明会で周CEOが語った言葉だ。それまでの多機種戦略を捨て、Oneシリーズへの集約を進めた。だが、思いもよらず、旗艦機種となったOneシリーズが売れなかった。

 Oneシリーズへの消費者の期待は高かった。そこに発生したのが、ディスプレーの不具合とチップ性能の問題である。HTCの企業姿勢に対して消費者の不信感が生まれ、ブランドに対する信頼が揺らいだ。

 中国で売られているタイプには最新のチップが使われているが、これを使っても台湾の通信環境ではその機能が発揮されない。HTCはきちんとそう説明すればよかったが、説明は極めてあいまいだった。それが消費者からの信頼を失墜させた。

 同時に、米国で特許権訴訟が発生し、HTCの新製品が税関で差し止められる事態が発生した。

■台湾企業は製造に没頭しすぎ

 第三の誤り。高価格に固執しチャンスを逃した。HTCは、ローエンドの製品に見向きもしなかった。その結果、ローエンド市場で惨敗し、ハイエンド市場でもアップルとサムスンに勝てなかった。

 そして第四の誤り。M&Aの効果が上がらず投資家からの信頼を失った。HTCはハイエンド志向が強く、製品ラインナップを広げる他社との提携に後ろ向きだ。他方で昨年、米国の有力イヤホンメーカーに資本参加したが、今年になって株式を譲渡している。この投資にまったく効果がなかったことを示している。

 昨年の株主総会では、威盛電子の子会社を買収したことに、株主から大きな不満が示された。

 世博国際商務法律事務所の周延鵬首席顧問は、「台湾企業は態度と方法を変えるべきだ。台湾企業はいつもチャンスをつかんで利益を上げるが、市場が成熟すると多くの難題が浮上してくる」と指摘する。

 ブランドは高度なリソースの統合が必要であり、製品技術が必要であるばかりでなく、特許が整っていなければならない。しかし、台湾企業は製品の生産に没頭するだけだ。HTCは特許があまりに少ない。そのため、特許権訴訟になれば、受け身になるしかない。

 「台湾企業は優れた製品を作りさえすれば消費者に受け入れられると考えているが、ブランドは技術、デザイン、セールスプロモーション、特許の高度な統合であり、どれか一つが欠けても駄目だ」と周氏は話す。

 HTCの教訓は、台湾ブランドが国際的に発展するうえでの貴重な経験となった。この教訓を受けて、王会長と周CEOは劣勢を挽回できるだろうか。

(台湾『今周刊』No.816 ライ筱凡、翁書テイ、鄭韵臻記者 =週刊東洋経済2012年9月15日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

最終更新:9月21日(金)11時52分

東洋経済オンライン

 

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