1.はじめに
米国発の金融危機があっという間に世界に広がり、とり分け貿易立国を標榜してきた日本にとっての影響は深刻になっています。この状況に堰を切ったように、やれ自然エネルギーだ、電気自動車だと新技術の開発や生活のグリーン化などから社会秩序のあり方までが模索されるようになってきました。
21世紀は正に環境の時代、そうでなければ人類は終わってしまいます。
私は自然農法の立場から、皮肉にも今の経済の落ち込み状況を一番喜んでいるのは自然の「動物や植物」ではないかと思えてならないのです。人間の飽くことを知らない経済の追求はこれらの種を急速に減らし絶えず存在を脅かされてきたからです。
動物が歌い植物が咲き誇る環境でなければ人もまた幸福を得られるはずがあり得ないと考えています。
農業は本来、生産ばかりでなく自然環境はもとより、医療や健康・福祉・教育・文化・地域社会などと密接な関係を持つものです。ところが「経済」という面ばかりが強調されてきた結果、これらの果すべき重要な多面的機能はみなバラバラとなり、ほとんど見えなくなってしまっているのが現在ではないかと思います。
私は40年前から”食”の問題について考えるようになり、その認識の深まりと共に農業の役割が大きく見えてきて、食の生産と環境の保全にあると気づきました。そしてこの仕事は他のどの産業も替わることのできない重要なものと考え、有機農業に取り組み始めたのです。今日、やっと一部の人々が農業の価値に気づき、食と健康と環境と農業がしっかりとつながっていると理解し始めたようです。
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私のポット苗は左、
右はJA育苗センターのもの |
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尺角植え、2本植え |
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田植え後35日の見事な開張型の稲姿 |
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除草機あめんぼう号(株式会社美善) |
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工夫した除草器具。
宮田オリジナルです |
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EM発酵資材の散布 |
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里芋の隣は玉葱収穫後の雑草。
一度ハンマーモアで処理した後、
再生繁茂した状態 |
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ポリフィルムを張ってEM太陽熱消毒 |
実際、自然農法や有機農業は真剣に取り組めば取り組む程、人の健康が支えられ失われた環境が蘇り、人間関係も修復し密になってくるのです。また、直接農業をやらなくともこれらの農産物を食べることにより農業を支援し環境保全活動に参加することとなります。以上を分り易く図1に整理してみました。つまりすべてが経済中心に進行する現代社会は、一見複雑に見えても、生物種の減少が進行しており、生物進化の方向を逆行しているというものです。
2.木村秋則氏のこと、自然農法の心
NHKの番組、プロフェッショナルに出演し、その後「奇跡のリンゴ」の本が出版され一躍名を知られるようになったリンゴの自然農法 青森の木村秋則さんについては既に皆様も御存知の方が多いと思います。
私もつい先日、願いが思わぬ展開から早くやってきて、講演会に参加する機会を得、一時間半の間、多いに感動しました。お話を聞きながら氏を貫くものは自然への絶対信頼と謙虚な心なのだと思った次第です。
「人間はリンゴ一つ作ることなどできない、ただリンゴのお手伝いをするだけ」と強調される言葉にすべてがあるのです。また木が枯れようとする時に一本一本「どうか枯れないでほしい」と声をかけて回ったとの由、木村氏と月とスッポンの私も稲で言えば水回りの早暁、「おはよう!!いい天気で良かったね」と声かけをします。机の上で大まかな作業を組み立てはしますが、今どんな作業が適切かは現場に行ってはじめて悟るように気づく場合が多いのです。
つまり自然は人間にとって豊かな情の対象でもあるのです。
3.私の有機農業(自然農法)の取り組み状況
水田140a、畑120a(主にタマネギ・ヤーコン・ニンジン・里芋・ブロッコリーなど数十種類の少量多品目を作付けています。)他に椎茸(太経木のみ)平飼いのニワトリ200羽、ブドウ15aなど。
自然農法の原理は、生物多様性の力強い生態系を実現させることにあるので、輸作や混作など少量多品目生産となります。
健康や環境に良い有機農法(自然農法)ではありますが、その最大の欠点は土作り(堆肥づくり)と除草の労力が大変大きくなってしまうことです。この作業をできるだけ小さくなるよう工夫していく技術を開発してゆくのが重要です。
@ 水田
1)苗の育成と田植え
健苗の育成と土作りがポイント。ポット成苗の育成中に七回前後ローラー転圧をして自立性の高い苗を作り尺角植えとしました。(写真参照)代掻きの直前にEM活性液を散布、生育中追散布。
2)除草
問題なのはコナギだけ、ところがこれに毎年苦しめられます。何とかコナギの密度を減らすべく二回代掻きを十数年やってきましたが、一向に減らないので今年は止め、株間除草機を購入。
植付け後、一週間位にやると非常に有効
であることがわかりました。それでも残ったものは、工夫した器具を使うと足腰が楽です。
その後の草は浮き草やアオミドロが速やかに覆ってくれればうまくゆくので、EM発酵資材の散布は大切だと考えています。
A 畑
1)雑草パワーの利用
畑の除草については、早めの中耕管理が必要ですが、現在は昔のように一本も生えさせないという完璧主義ではなくなりました。むしろ雑草を積極的に使って土づくりに役立てようと考えて、たとえば冬ネギや馬鈴薯、春のトンネル野菜の後など、秋まで作付けしないので雑草をできるだけ繁茂させ、四回程ハンマーモアで処理、EMボカシやEM活性液を散布し土中堆肥としています。
畑に直接種を播くニンジンや玉葱の苗づくりなどは、約一ヶ月間はビニールを張ったEM太陽熱消毒をすると除草の手間が小さくなり、以前は緑肥作物としてソルゴーやクロタラリアなどを作りましたが、今はとても播く時間さえ無くなってしまい、播種する必要がなく繁殖力旺盛の雑草を自然と利用することとなった次第です。
先の木村氏も「奇跡のリンゴ」を毎年豊かに実らせているのは雑草による土作りのなのです。
2)雑草の働き
雑草は
・7月中に処理すれば種を結ばない
・土壌水分の保持により微生物活動が活発で安定化する
・地上が雑草により複雑に構成されるので地下部も同様となり、土壌病害が発生しにくい構造となる−土壌消毒のような効果
・地上部と地下部(根)の有機物が循環される
などの働きや利点があります。
4.まとめとして
落ち葉や米糖を使って堆肥づくりもしますが、これが全体の1/3、購入堆肥1/3、雑草や作物の茎葉処理をしてEMボカシやEM活性液を散布して耕耘する土中堆肥1/3位です。
ニワトリの飼料はEM発酵なので、鶏糞はボカシ状、主に追肥用とします。これからは、雑草をEM発酵させた葉面散布剤を充実させたい考えです。
既に還暦を過してしまった私は残りの人生、これまで学んだ食の意味を伝え自然の大切さ、生命のいかに大事なのかを伝えるべく、黙っていても自分の思いを強く発することのできる農産物づくりに全力を尽したいと考えています。
喜びが拡大してゆく善循環型社会づくりに一役を担う者でありたいと願っています。
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