特集 EMと自然農法 紹介

掲載記事:「えむえむ関東49号」より

EMで環境保全型農業を推進

宮前クリーン農業研究会代表 織茂耕治

  私の住む川崎市宮前区東有馬は、富士山の火山灰が堆積した関東ローム層が広がる丘陵地で、東名高速川崎インターから10分程入った東京、横浜、川崎にまたがる典型的な都市型農業地域です。農家もまだ多く残っていて後継者の就農率は、日本で最も高い地域と言われています。畑の周囲はほとんど住宅地化されていますが、雑木林や竹林など自然も多く都会の喧噪を忘れさせます。
平成5年にEM技術を知り、半信半疑で、まずトマトの苗の濯水から始めました。圃場を3区に分けて試験もしました。EMボカシU型100kg/10a区、牛糞堆肥1t/I0a+EMボカシU型100kg/10a区、牛糞堆肥1t/I0a十配合肥料200kg/10a区。結果は、収量、品質共に良く、病害虫の発生も一番遅くなりました。また、直売のお客様からも味が良くなったといわれ、これらのことから本格的にEMを使うようになりました。  織茂耕治さん一家
自然農法に取り組み始めましたが、一人では寂しいのでJA川崎青壮年部の仲間に声を掛けたところ、面白そうだからやってみようと言うことになり翌年4月、宮前EM研究会(現宮前クリーン農業研究会)をメンバー9人で結成しました。その後、川崎市農政課から環境保全型農業モデル事業の委託を受け、貸与された生ごみ乾燥機で近隣レストランから回収した生ごみでEM発酵肥料を作り、慣行農法とEM自然農法の比較栽培を小松菜と里芋で行うなどをしました。2年で終了した事業でしたがEM技術の農業利用に意を強くしました。現在はNEC玉川事業所から出る乾燥生ごみを始め、地元の事業所が廃棄するコーヒー粕やウーロン茶粕などを利用した堆肥を作り、EM自然農法栽培を続けています。

事業所からの乾燥生ゴミ等でつくる堆肥
1へクタールの農地で年間の作付け品種は、トマト、キュウリ、ジャガイモ、タマネギ、枝豆、かぼちゃ、里芋、大根、白菜、さつまいも、人参、ネギ、ほうれん草などです。肥料はEMボカシ(米ぬか、もみ殻、カニ殻、油粕、乾燥生ごみ)と、堆肥(コーヒー粕、ウーロン茶粕、みかんのしぼり粕、牛乳のしぼり粕などを混ぜ合わせる)の他、貝化石、グアノ、
天然苦土、海藻、酢、木酢などで、ポリタンクで糖蜜多めのEM活性液を仕込んでいます。作付けの方法は移行錯誤の末、現在は浅めの耕運で、土を細かく砕きすぎないようにトラクターの爪の先端を切り取って短くしています。耕運と同時、もしくは耕運後に鎮圧(踏み固める)して、播種定植をします。こうすると根が強く張り、病害虫に強く、味も良いように思います。また、毛管水が断ち切れていないので土壌水分が安定しているようです。
このような私なりの工夫の結果、葉物では窒素の濃い緑色が薄くなり、きれいな艶のある色に変わってきました。また、全体に日持ちがするようになりました。味については、お客様から「以前よりずっと美味しくなった」「野菜嫌いの子どもがよく食べてくれるようになった」などと言われます。
農産物の販路は、私を含めグループの4人が直売方式で、他のメンバーは大手スーパーや市場にも出荷していますが、何れも好評で完売します。幾つかの環境を考えるグループとの交流や小学生の農場見学を受け入れていますが、皆さん安全で安心な農産物の情報を求めていることを痛感します。
なかでも、EM生ごみ発酵肥料の活用に関心が高く、請われて拙宅で生ごみリサイクル勉強会を開いたり、講習会の講師として出向くことがあります。これからの展開や課題では、この度、NEC玉川事業所から野菜の出荷を打診されました。運搬方法やコストの点でまだまだ検討しなければならないことが多いのですが、生ごみ減量と環境に良い循環型農業の連携を地域活動へと展開させていくキッカケに成るのではと前向きに考えています。
生ごみリサイクル勉強会
 地元の福祉作業所でのEMボカシづくりの支援も含めてやることはいっぱいあります。よい情報に耳を傾け、実践し、根気よく取り組んでいきます。
農場見学を受け入れトマト、キュウリ、ジャガイモ、タマネギ、枝豆、かぼちゃ、里芋など年間約20品目を栽培。
又、直売所では織茂オリジナル病害虫対策用ハーブ、唐辛子、マザータッチ入り活性液等も販売しています。

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