活動状況

食の自然循環モデルを目指す駒ヶ根のEM活動
〜食・農・いのちをつなげる生ごみリサイクル〜
 EMの基本技術に地元の酵素等を活用した生ごみリサイクル事業は、長野県諏訪地域で着々と確実に進展している。この事業で成果を上げている(有)ドミソ環境の兄弟会社である(株)ドミソが運営する駒ヶ根市の「生ゴミ堆肥化施設」を訪ねた。

 駒ヶ根市では市の施策として生ごみの資源化(堆肥化)を積極的に進めている。従来からの事業系・公共施設から排出される生ごみの堆肥化に続き、今年9月からモデル地域を設定しての第1陣500世帯の一般家庭を対象に生ごみ回収からの堆肥化事業を実施する。これに関係する(株)ドミソ社長の牧野勝・幸子さんご夫婦と、U-ネット長野県リーダーである諏訪明子さんの環境団体等を巻き込んで進める、食・農・いのちをつなげる生ごみリサイクルをレポートする。

駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設と左から(株)ドミソ社長牧野勝・幸子さんご夫婦、U-ネット長野県リーダー諏訪明子さん
駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設と左から
(株)ドミソ社長牧野勝・幸子さんご夫婦、
U-ネット長野県リーダー諏訪明子さん
−平成9年から循環型まちづくりに取り組む−
 駒ヶ根市は長野県の南部に位置し、東に南アルプス、西に駒ケ岳をはじめ中央アルプスの峰々、その裾野に広がる駒ヶ根高原といった有名な観光地があり、稲作・果樹園芸・野菜・畜産などバラエティーに富んだ農業にも恵まれた人口約35,000人の観光と農業がよくバランスのとれた田園都市だ。
 また、EMによる循環型のまちづくりにも早くから取り組んできた。平成9年から、市や県の公共施設や商店街施設から排出される生ごみのリサイクルを、地元営農組合の協力を得ながら進めてきている。現在、駒ヶ根市から委託を受けこれを推進する事業主体が(株)セイビ社と(株)ドミソだ。(株)ドミソ社長の牧野勝氏は下諏訪町、岡谷市、辰野町で公共施設や一般家庭の生ごみリサイクルを受託している。出来た堆肥は地域の農家で長年にわたり使用され、農産物となって自然循環型農業が推進されている。ここで培ったノウハウも駒ヶ根市で生かされるのだ。

駒ヶ根市の一般家庭用EMバケツ
駒ヶ根市の一般家庭用EMバケツ
−生ごみが300分の1に減容するシステム−
 ドミソ式生ごみリサイクルは、3つの鉄則に基づき進めている。@自然環境に負荷を与えない、A良質な堆肥を作る、B食の完全自然循環を確立する、である。手順としては、家庭や事業所などから生ごみの入ったバケツを回収する。その生ごみを有機物減容再生機(微生物と酵素による生ごみ処理機)に投入して一次処理をする。
バケツ回収した生ごみを再生機で処理する(駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設内部)
バケツ回収した生ごみを
再生機で処理する
(駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設内部)
 この再生機には、モミガラと戻し堆肥、それにEMスーパーセラ発酵Cが投入されている。特徴としては、水分調整材として大量のモミガラを用い中温発酵で一次処理していることだ。二次処理は屋根付の堆肥置き場で3ヶ月以上熟成させる。この期間、消臭や堆肥の質を上げるため定期的に50倍に薄めたEM活性液を噴霧している。そして何よりこの処理システムの大きな特長は、生ごみが体積で約300分の1に減容することだ。

−「酵素ドミソくん」堆肥はひっぱりだこ−
 熟成された堆肥は黒く砂のようにサラサラで、「酵素ドミソくん((有)ドミソ環境で堆肥化した商品名)」と名づけられ、有機栽培農家などにわれ先と引き取られていく。この堆肥には有用な酵素のほか珪酸が8パーセントも入っている。珪酸は植物にとって人間のカルシウムにあたるので、成長に不可欠で丈夫に育つのだそうだ。
 高品質な有機堆肥なので、生産者である農家にとっては増収になり食味も向上し安心で安全な農作物が栽培できるので、よく売れる。この農作物を食べる消費者には美味しくて安心安全なので大いに喜ばれる。また、消費者の出す野菜の調理くず等生ごみがリサイクルされるので食の完全自然循環が確立される。
 駒ヶ根市の農地は17年度調べで1,545ヘクタールあり、農家も1,989世帯もある。食の完全自然循環モデルを目指す要素が駒ヶ根市にはあると思われる。食糧自給率確保という日本の命題があることからも、数年後の展開が楽しみである。
 最後に、牧野さんの次の一言が印象的であった。それは、「生ごみリサイクル以前に、生ごみを台所や食卓から出さない食習慣にすることです」と。


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