
写真1 総会後の懇親会でEM野菜を味わう家庭菜園の会 |
EM家庭菜園の会基礎データ
・会員数:100名
・圃場の所在地:埼玉県坂戸市石井
・圃場周辺の環境:住宅地
・圃場の形態:家庭菜園(面積:10000u)
・圃場の条件:
土質 埴土(黒色でサラサラしている)
日当たり 良好
水はけ 良好(一部やや不良)
家庭菜園に取り組んだ動機とその経過・成果 自治会の環境委員会で「私たちが出すごみを少しでも減量出来ないか」と討議したことがあった。そのとき私が「生ごみをリサイクルして花づくりや野菜づくりに活用できます」と提案した。そして自治会として農家から休耕地を100坪借りて平成7年に4人の会員でスタートした。
人との「縁」という言葉がある。私達の会はEM活用の菜園をやっていた人、減農薬で野菜栽培をしていた人、環境改善や地域の仲間作りに関心があった人達が自治会活動で知り合い、自治会環境委員会で提案し「生ごみ対策分科会」という形の中から始まった。幹事役は現在9人であるが誠に絶妙なスタッフである。
S氏が関東EM普及協会やEM関連の本等からEMの情報を導入する。Y氏は畑作業の経験が豊富で会の運営に細かく気を配り、人の和を上手にまとめる。
SY氏は計画が緻密で会計一切を取り仕切る。 SA氏はパソコンを駆使して資料作成を一手に引き入れている。

写真2 坂戸市EM家庭菜園 |
実力派のM、K、Uの各氏。リタイア5人、現職者4人で幹事会と称する集まりを頻繁に開き、夜7時から10時過ぎ迄、話し合うこともあり、それをあまり苦労と考えていないようである。楽しい会にしたいというのが暗黙の骨格になっていると思われる。しかし、環境改善、生ごみリサイクルも行動が伴わなければ意味がない。楽しみながら行動することは長続きする。この辺りにこの会のポイントがあると思う。
総会、即売会、勉強会、EMボカシづくり(春、夏の共同作業で毎回300kgを超える量で計4回実施)、親睦を兼ねたEMの味を楽しむ小旅行等の行事に参加することで楽しみながら「得」をする。例えば野菜作りの情報や種や苗の無料配布、調理方法の資料を貰える等、情報収集ができること、一杯の缶ビール、ジュースで仲間が出来て日常気易く挨拶が交わせるような人間関係が得られること等である。
このように幹事9人の和から100名を越える「EM家庭菜園の会」が運営されているが、少しずつ生ごみリサイクルの輪が広がりを見せており、私たちの夢は先ず我が自治会の家庭から生ごみをすべて、ごみとして出さずに土に戻すようにしたい。そして地域社会全体に拡がり、少しでも環境が良くなる日を期待している。

写真3 みんなでEMボカシづくり |
最初は家庭から出る生ごみをEMボカシで処理して、畑に入れEMの効果を確かめながらの活動だった。平成8年に坂戸市の環境衛生課がEMを使った「生ごみリサイクルのモニター」を募集。このときには仲間7人と参加して、生ごみを土に返すEMの効果を確かめた。こうして毎日のように楽しげ゙に畑に通い、有機野菜を収穫して帰ってくる会員の活動は、次第に団地でも話題となり、年を追うごとに参加者が増え、現在では全970戸の住民のうち100人が参加。休耕地が多い地域ということも幸いし、会員の増加に平行して畑も広がり、現在では団地から自転車で数分の距離に7ヶ所の土地を借り、会員それぞれが工夫をこらした野菜作りを通してごみの減量化に取り組んでいる。また平成10年「EM家庭菜園の会」が発足、会の活動内容は以下の通りで、数多くの成果や課題などが得られた。

写真4 会員自慢の畑 ナスがいっぱい! |
グループ内においての活動
@環境マガジン「エコピュア特集」にて紹介、全会員 に配布
A市に働き掛けていた生ごみ処理器補助制度が他地域にも拡がり170件を越える申請。
B自治会の夏祭りにEM野菜の即売。
会員から自慢の品々の提供があり、皆から喜ばれて定期的実施を望まれている。
CEMブドウ園(山梨県勝沼町、高野 武治氏)への視察旅行や梨狩りとEM新米を食べる会(千葉ネット催事)に参加。EM育ちのブドウ、梨、新米の味を再認識した。
D自然農法種子(関東EM普及協会)の頒布。キュウリ、カボチャ、レタス、人参が好評だった。特にキュウリはうどん粉病の発生が少なく、目をみはる成果があり、自家採種をやる会員も増えた。
E健康野菜「ヤーコン」の苗と資料を配布し、作付けを普及。勉強の成果が上がり、品評会にも出品されて話題となり、家庭料理への取り入れが話題となってきた。
F草生栽培についての勉強をした。自然農法の考え方として理解し、EMブドウ園見学でその実際を見て驚いた。しかし現実的には家庭菜園は狭いので、作物生長時の雑草の活用と、収穫後の残潰をマルチとして利用している。
G植付けのジャガイモ(品種:出島)を共同購入。年間を通して新鮮なジャガイモを食べようと呼び掛け、200kgを超えるほどの量を購入。最高の味と新鮮さが喜ばれている。
H家庭菜園通信の発行。
勉強会、EMボカシ作り、健康野菜の調理法、EM情報等を必要の都度発行している。さらに会の目的の一つである会員の健康増進のため「食と健康」の講演会の開催を自治会に呼びかけ実施、好評を得ている。
定期総会の実施。
活動報告、会計報告、来年度活動報告の提案をした。また、出品された自慢の品を全員投票により品評。そして自身の野菜で作った豚汁やおにぎり、自家用に作った漬物に舌づつみを打ち、ビールで元気をつけ、自慢話や苦労話をし、果ては生き甲斐についてや子供達の教育論まで飛び出す程の熱気に包まれた会となった。
外部との交流

写真5 自治会夏まつりでのEM野菜即売会 |
@埼玉県北本市の「ごみ減量市民会議」との交流会。エコピュア(家庭菜園特集)が縁で開催。自治会レベルの当会と行政が働いている北本市とのそれぞれの特色が分かり、意見交換が行われこれからの運営の参考となった。
「行政が何もやってくれない」というより住民活動が逆に行政サイドを動かしていく様な努力と仕組みがこれからの課題。
A生ごみリサイクル埼玉大会(狭山市主催)に参加。写真やパネル、野菜出品等を通して生ごみリサイクルと家庭菜園の効果について訴えた。
B日高市、川島町の「生ごみリサイクルの会」との交流。健康野菜「ヤーコン」の苗と資料の配布と情報交換を行った。日高市のグループは食生活改善を柱としている会で家庭料理に定着する調理を研究してもらっており、レシピを期待している。
C東村山市の「花と野菜の会」との交流。
市の主導によりスタートした生ごみリサイクルの仲間達。意見交換や畑の実態をみてもらうなど で生ごみの家庭菜園の価値を確認し、今後の組織運営や技術の交流を深めていく約束が出来た 。
DEMネット埼京主催の家庭菜園勉強会に協力。
会員の菜園の現地でナスの根の状況や畝間のとり方、マルチの施し方等の講義を受け、非常に参考になったと好評であった。100人もの参加者の現地移動などに気を配ったが無事終了した。
今後の運営や課題について
会の活動を通し、会員メンバーからは以下の感想や今後の課題の案があがった。
@感想
・野菜を作ることと仲間が集まることが楽しい。
・畑の作物作りが夫婦の共同作業になり共通の話題が増え夫婦仲が良くなった。
・近所との付き合いが濃くなり朝と夕の挨拶ができるようになった。
・粗大ごみにならず「生き生き」とした毎日となり、生活に張りが出てきた。
・気がつくと健康な生活となっている。
・陽光に当たり身体を動かすことの楽しさや爽快さを知った。
・EMの深さが少しずつ分かってきたのでさらに勉強をし、活用をすすめたい。
・EM栽培による、ブドウ、モモの味に驚き、他の果物なども味わってみたい。
・小学生の子供や孫達が「生ごみは捨てるものではなく、きちんと分別して畑の土に返す大事なもの」と意識するようになり「教育」について考えさせられた。
A今後の課題
・健康野菜(ヤーコン等)をごくありふれた家庭料理として利用したい。
・地域の人達にEM野菜を食べてもらい、生ごみリサイクル菜園の価値を理解していただくため定期的に即売会や朝市を開いたらどうか。
・虫の発生や臭い関係で生ごみリサイクルを中断することもあるが、これを徹底し、隣近所の生ごみも集めて土に戻すことは出来ないだろうか。
以上が会員の皆から上がった感想と今後の課題である。行政からの呼びかけではなく、会員の 自発的な発想、行動により自治会組織として発展してきた「EM家庭菜園の会」の運営をより地域 に根付かせることが必要であると痛感している。
高齢化社会となる21世紀を考えると健康で元気な高齢者の存在が健全な社会のキーポイントになると思われる。また、個々の高齢者にとっても、生き甲斐、社会参加による存在価値を意識できるものが必要になるのではないだろうか。総会や勉強会で仲間達と話しているとこれからの運営の夢が広がってくる。
EMを活かした資材とその作り方・使い方(効果・感想)EMを生かした資材
1)EMボカシ、EM生ごみ堆肥
2)使い方
EMボカシは生ごみ堆肥を作るために使用し、EM生ごみ堆肥は土づくりに活用する。
3)効果・感想
農薬や化学肥料を使わずに、花も野菜も素晴らしいものが栽培できる。
作物栽培について 1)土づくりについて
主にEM生ごみ堆肥を土に混入。
2)栽培した作物で印象に残っているもの
サトイモや京イモは5〜6年連作しているが、連作障害は起きずに生育もよい。キュウリはうどん粉病の発生が少ない。またカボチャは冬まで貯蔵が出来て好評である。
人参(筑摩野五寸)は冬の人参として定着している。その他、ヤーコンの苗を会員に配り栽培したが、その形などが物珍しく、皆の印象に残った。
(1)その栽培方法・工夫点
EM生ごみ堆肥で土づくりをする。キュウリ、カボチャは自然農法センター育成の品種(上高地、ふゆうまか)を使用している
(2)病害虫・雑草対策等(その考え方)
EM5号の散布と防虫ネットの併用
(3)連作障害対策
作付計画を重点に行い、特別なことはしていない。
収穫した野菜・花の活用方法
自家消費したり、自治会の祭りの時に即売したり、地域の「ウオークラリー大会」での豚汁に用いる野菜を提供。
また12月は総会を開催し、出来た作物の品評会や手作りの作物で料理をして仲間と一緒に食べるなどして会員の「和」を拡げている。
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