特集 生ごみの有効利用とEM
掲載記事:「えむえむ関東59号」より
=EMネット神奈川発=
バケツがかなえた生ごみの有効利用
綾瀬市 有限会社 サンシン

サンシン 社長 田墨信幸氏
 神奈川県綾瀬市にある産業廃棄物処分業・運搬業と有機堆肥生産販売・発酵処理剤製造販売業を営む(有)サンシンは、長年企業から出る有機廃棄物を堆肥化する事業を行なってきました。
父親のリヤカー1台から始まった廃棄物業、4人兄弟すべてが廃棄物業者として独立。三男坊の田墨信幸さんが受け継いだのは、(有)田墨商店有機物課でした。
「父親から物を活かすことを骨の髄まで鍛えられました。でも、有機物のリサイクルはとても難しいですよ。ことに生ごみは、運搬や人件費を考えたら燃やすほうが合理的です」 一番やっかいな部門をまかされ、貧乏籤をひいたような気分だった田墨さん。それでも、昭和61年、愛媛県の某飲料メーカーから出るコーヒーカスを堆肥化する事業に成功。排出企業と三浦半島有機物再生利用組合と結んで、もっとも農業者が使いやすく、質のよい肥料をいかに作るか、この課題に取り組んだ経験は、その後の展開に道を開きました。有機物課から独立して(有)サンシンという名前にしたのも、@排出業者A処理業者B農家、この3者が信頼で結ばれなければ、有機物はうまくまわらないという意味だそうです。当たり前ですけれど、まちがったリサイクルをしてはいけないのです。有機物をただ集めて形の違ったごみを作れば、悪循環になるだけです。畑をごみ捨て場にしてはいけないという思いで仕事をしてきました」


企業の0ミッションで食堂の残飯も回収

 
現在、(有)サンシンが取り扱っている堆肥は、チョコレート工場から出るカカオ皮屑と粉砕、腐熟済みのバークをアミノ酸生産工程ででる発酵菌体で培養。商品名は、その名も「カエルの堆肥」。コーヒーカスとカカオ皮、廃珪藻土との組み合わせの「培養コーヒー」も人気商品。月600tを生産し、多くは三浦半島の農地に使われています。これらの堆肥を作るためにさまざまな情報を田墨さんに与えたくれたのが、横須賀市にある長井有機農業研究会(鈴木浩之会長)です。
 「微生物の特徴など、農家の皆さんにいろいろと勉強させてもらいました。自分でも5反の土地で作物を作りました。農家にあった製品を作るのは、自分で体験するしかなかったのです」
 ご存知の通り、長井有機農業研究会は神奈川で初めてEMを導入した農家の集まりです。EMについても、鈴木さんたちから情報をもらっていました。しかし、すでにEMに近い技術をもっていたので、あえて堆肥過程で使う必要はなかったそうです。
 ところが、時代は進み、企業の0ミッション化で、食堂で出る生ごみのリサイクルが急浮上。家庭から出る生ごみと同様、企業の生ごみも、リサイクル化は最終課題でした。企業として、出す方も引き取る方も経済性から考えると手をつけたくない分野だったのです。一番の問題は、いかに生ごみを省力化して堆肥工場まで運ぶかでした。1週間に2回、トラックで運ぶ方法ですと、人件費、燃料費ですでに赤字経営になってしまいました。行政なら、赤字でも許されるが、企業は絶対に赤字になることは許されない。では、どうすればいいか。要するに足が速い生ごみをしばらく保管できるシステムがとれればいいのだ。そうすれば、腐った生ごみを堆肥にする悪循環という心配がなくなるのです。


EMXセラミックス配合バケツが解決
 人のめぐりあいは、おもしろいものです。たまたま、久しぶりに会ったイーエムジャパンの畑部長が、田墨さんにこう囁きました。
「新しいバケツがあるよ。」と。そのバケツが、生ごみを活かすことになろうとは、田墨さんも思っていない展開でした。さっそく、そのバケツを手に入れた田墨さんは、生ごみを入れて、あえて日の当たるに置いてみました。形は今までの密封バケツと同じですが、素材にEMXセラミックスが配合されていると。目には見えないリニュアル版ですから、中の生ごみをよく観察するしかありません。その結果、1ケ月生ごみを入れておいても腐るどころか、乳酸発酵のよい香りがして白い菌糸も張っていました。1年置いておいても、大丈夫と思えるほどでした。このバケツを各企業に使ってもらえば、「回収を半減できる」そう確信できたそうです。さっそく、ソニー、NECなどの企業にこのバケツを買ってもらいました。食堂では、バケツに残飯を入れるだけで、ボカシは入れていません。バケツに入った生ごみを回収するのは、運搬業者の(有)小巻環境。1日70kg出る工業団地を週1回、ドラム缶に回収しています。バケツからドラム缶に生ごみを入れ替える時にEMボカシを1つかみ入れています。
作業員は、「回収が半分になっても、生ごみの状態はとてもよい。生ごみ独特の臭いもなく回収しやすいですよ。」と好評です。


食堂生ごみがよい堆肥に
 堆肥化の方法はいたって簡単です。発酵コーヒー滓と茶葉滓、カカオ皮屑に生ごみを混ぜ、好気性の微生物資材を噴霧。約20日積んでおくだけです。今まで、積み上げてきた有機資源の堆肥化技術が、生ごみ堆肥化にも活かされいます。製品名は、コーヒー堆肥2号。まだ、スタートしたばかりの事業ですが、年間およそ250tを生産。三浦半島ばかりではなく、地元綾瀬市の農家にも普及し始めました。
「環境保全型農業への転換で、農家は土壌消毒などもうできません。では、どうすればいいか、土づくりの知恵がないので、野菜を作れない農家が出てきているのですね。」コーヒー堆肥2号を大量に土に入れたら、根コブ病もなくなったという農家も出て、評判も上々。生ごみが活かされる道ができれば、企業の食堂生ごみを積極的に受け入れることもできます。堆肥の値段は、1t4,000円(送料込)なんとか、成算ペースにも乗ったとのことです。
 排出業者(食堂生ごみを出す企業)と産業廃棄物処理業者(食堂生ごみを受け入れる業者)は、厳正なマニュフェストで管理されています。簡単に言えば、生ごみは適正に処理されたかが、排出業者の責任範囲であるわけです。田墨さんは、堆肥を使って育った美味しい野菜を各企業に届けています。「おたくから出た生ごみは、適正に処理されて、この野菜になりました。これ以上の事業報告書が、他にあるでしょうか。」確かにありませんね。

処理工程フロー図

製品として主に「三浦半島有機物再生利用組合」の契約農家・畜産家に出荷
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