特集 EM生ごみの有効利用
掲載記事:「えむえむ関東52号」より
=EMネット千葉発=
EM生ゴミ堆肥を活用した「むそう塾」の有機農法の野菜づくり

「むそう塾」の紹介


写真-1 
むそう塾農場にて開設者の玉根さんと筆者の山崎さん。
廃物利用のドラム缶でEM処理した生ごみを熟成



写真-2
11月1日いも煮会を開催。ボカシ作りや共同栽培、手打ちうどんの会や新米試食会などを通じて、塾生のふれあいも盛ん。
 「むそう塾」はEM関連の出版物にも取り上げられたことがある我孫子市の専業農家、玉根康徳さんが市農政課などの指導により、平成14年度から開設した「伝習農場」言わば農業塾です。
 この塾では有機農業を20年以上続けてきた玉根さんが、毎週土曜日に、年間20数種類の無農薬・無化学肥料による野菜の栽培管理の方法などについて、ビニールハウス(遮光ネット付)内での講義と畑での実地指導を行っています。
 また、4人一組で取り組んだEMボカシ作りなどの他、手打ちうどんの会、新米試食会、いも煮会など、いろいろな機会を通じて利用者(以下、本稿において塾生と記します)間の「ふれあい」が行われています。
 平成15年度には定員(20名)を超える応募があり、現在28区画が使用されています。
 今年度の入塾生は、20代から60代と幅広く、家庭菜園の経験者は53%でしたが、生ごみをEM処理したことのある塾生は20%でした。なお、入塾後は全塾生が生ごみのボカシ和えに取り組んでいます。

他の「ふれあい農園」との違い

 我孫子市が開設した「ふれあい市民農園」(2ヶ所)6軒の農家が開設した「ふれあい体験農園」は、いずれも農地を借りるだけで栽培方法の指導や農園利用者間の「ふれあい」は行われていません。
 また、農機具や農業資材(一部は塾生が費用負担)、種や苗、肥料や堆肥などを開設者の玉根さんが用意している点も他の「ふれあい農園」との大きな違いです。

EM生ごみ堆肥を肥料として活用
 野菜づくりに用いられる肥料は、後記の方法で作られたEM生ごみ堆肥のみで、購入肥料は使われていません。元肥や追肥として使用されるEM生ごみ堆肥の分量は、私たち素人から見ますと意外と少ないという気がします。肥料を施さない場合もあります。どうやら、私たち素人は肥料にたよりがちですが、良質の堆肥や微生物などによって良い土を育て、その土で野菜を健やかに育てることが大切のようです。
 玉根さんは生産した野菜や米を、生産者と消費者を直結した産消提携の「つちの会」の会員に毎週配達しており、その際にEM処理している会員の生ごみを回収しています。
 今年度も当初は玉根さんが用意したEM生ごみ堆肥を使っていましたが、現在では塾生がEM処理した生ごみを持ち寄り、ドラム缶に入れて平均約3ヶ月間熟成させ【ドラム缶に入れる時にEMボカシを振りかけて、EMの援軍を増やします】、粉砕機にかけた後で再びドラム缶に入れて更に3ヶ月程度熟成させています。【粉砕機にかける際に水分調整のため「もみ殻燻炭」を混ぜ(容積比はおよそ生ごみ1に対して燻炭3)、EMの援軍を更に増やすために今一度EMボカシを振りかけます。】玉根さんの話では、農閑期を利用して今年度もEM生ごみ堆肥の粉砕作業を実習し、今後はこの塾で使う「肥料」を塾生の手で作っていく方針とのこと。
 もみ殻燻炭は、もみ殻専用のビニール袋16〜17袋分を一度に焼けるように玉根さんが考案した大きな円筒形の釜(直径約1.2m・高さ約1.6m)で作られます。今年度も塾生がもみ殻燻炭作りの実習をする機会があるものと思います。
 EM生ごみ堆肥の熟成や燻炭の保存に使用されるドラム缶(200L入り)は、塗料の空き缶ですが、知人から無償で入手できるそうで、それが有効利用されています。

もみ殻燻炭の効用

写真-3
玉根さんの創意工夫が随所に見られる燻炭釜



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農場には玉根さんが塾生等と「かずさ掘り」で掘った井戸も完備

 EM生ごみ堆肥を粉砕する際に「水分調整」材として混ぜられているもみ殻燻炭には、次のような利点もあるようです。
・燻炭が微生物のすみかとなる。
・炭は他の有機物と違って分解されずいつまでも土の中に残っている性質があるので、毎年繰り返し施用することによって、pHの調整・土の物理性の改善・養分の貯蔵と供給などに寄与すると考えられる。
・もみ殻を野焼きしている農家もあり、材料が無償で入手できる。

堆肥作り
 この塾で使っている堆肥も、今年度の当初は玉根さんが作ったものを使用していましたが、堆肥作りの実習も終えましたので、今後は塾生が関わって作られた堆肥が使われることになります。
 堆肥の材料としては、庭木の剪定くずや収穫残渣を粉砕したもの・畑周辺の刈り草・もみがら・切りワラなどで、野積みして3回ほど切り返しを行っています。野菜の誘引や結束に用いられる「ひも」も、ビニールひもは避けて麻のひもが使用されています。収穫残渣と一緒に処分できるし、回収し忘れたりしても土に還るように配慮されています。
 なお、EMボカシも当初は玉根さんが用意したものを使っていましたが、実習で夏場にドラム缶10本分を仕込みましたので、今後はこれが利用されることになります。

堆肥の活用、EM液肥の利用、害虫対策ほか
 堆肥は土づくりの他に、土の表面に施して乾燥防止や雑草抑止にも用いられています。刈り取った雑草は畑から持ち出さず、地表面に置いて敷き草にし、葉もの野菜の根などは土の中にできるだけ残すようにしています。それらの有機物はいずれ土に還されます。
 EM生ごみ発酵液や米のとぎ汁EM発酵液をこまめに散布している塾生もいます。
 害虫には、その状況に応じて、防虫ネット・ストチュウ・捕殺などで対処しています。

 11月初め市農政課から玉根さんに、他のふれあい農園において、年数回、無農薬・無化学肥料による野菜づくりを指導してもらえないだろうかとの打診があったそうです。また、同じ頃、環境保全型農業に対しては「農林水産省が環境保全型の農家を優遇する仕組みを導入する方針を固めた」との報道もありました。農薬・化学肥料に頼る農法を改める気運が高まることを消費者の一人として切望して止みません。

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