特集 生ごみの有効利用とEM

掲載記事:「えむえむ関東52号」より


食物残渣の最新リサイクルシステム
EMネット茨城
池田産業  池田皖字
私はEMを使ったボカシ肥料を平成3年から作っています。10余年前は、虫が発生すると殺虫剤をまき、病気がでると殺菌剤をまき、作物の成長を促進させるため化成肥料の多用をする。ほとんどの農家でそれが当たり前のように行われていました。農薬・化学肥料で汚染された土壌の危険性をどんなに説明しても農家の方にわかってもらうのは大変でした。
農家の経営と汚染された土壌の再生を同時に両立させるのはとても問題が多々ありました。農家にとってもEM栽培に切り替えることは決して容易な決断ではあ
りません。 収量をあげながら栽培方法を転換することができるのか、有機への消費者の理解がいったいどこまで浸透しているのか、輸入野菜におされ値段が上がらないなど、良いとわかっていても不安を抱えている農家もたくさんあります。土壌が再生するまでに収穫量が減少したり、EMの効き方も、土壌の質や汚染の度合い、気候、水、風など、個々の農家でEMの使用法も使用量も違ってきます。
「EMが効くまで使い続けてください」とお願いして、何年も何年も一緒に悩み話し合い試行錯誤しながら、農薬の使用を減らし化学肥料の使用を減らしてきました。これからの課題は、努力して作った農産物を価値あるものとして販路(農業経営)がどう広がっていくかにあると思います。
 EMによる活動で大きな成果を上げている生ごみの堆肥化は、ボランティアの皆さんの力で全国規模で広がり、自治体を動かし環境浄化の大きな柱の一つとなっています。
 現在、私が携わっている生ごみ堆肥化(再資源化)をご紹介致します。
直接EMの活動とはつながりませんが、この事業をされている有限会社アグリクリエイトの斎藤公雄社長は十数年前から、農薬、化学肥料の軽減を訴え、土作りを第一に考え微生物を活用した安全で美味しい農産・畜産を目指し、販路つくり、全国にその輪を広げられ、技術指導をされています。
 斎藤さんと出会ったのは、EMを始めてまもなくのことだったと思います。それから何度か勉強会や講演会でお会いしました。
その土作りに対する情熱は「食べて健康になる」物づくりであり、EMと同じ信念をもつ仲間だと思っています。
 そして今回新しい事業のお話を頂き、食物残渣の再資源化加工の仕事をさせていただくようになりました。
この食品リサイクルシステム事業は、(有)アグリクリエイトを母体とする日本オーガニックネットワークによって、企画開発された画期的なエコロジー・リサイクルシステムです。生ゴミ処理メーカー(乾燥型)と提携し、そのユーザーとなる排出事業所(給食業者、レストラン、社員食堂など)で乾燥・減量処理(1/5)された食物残渣が宅急便で運ばれ加工をおこない、農産・畜産・水産などの生産者に供給され、その生産物が事業所へと供給される循環型リサイクルシステムです。  約66社からペリカン便で届けられる「通い箱」に入った食物乾燥残渣。食品廃棄物でなく20円/箱で買い取られた資源である。
平成13年5月に食品リサイクル法が施行され、年間100トン以上の残渣を発生する事業は20パーセントを再資源化する社会的義務を負いました。生ゴミ処理メーカーは、ユーザーの減量化した再資源(残渣)の受け皿が課題でした。
このシステムによって、残渣が肥料・飼料に再資源化され、これにより生産された農産物が再び排出先(消費者)に届けられるのです。現在66社との提携に拡がっています。
排出事業所は「食物残渣はゴミではなく、原料である」という理解を十分にしてもらい分別を徹底する。また、生産者は安全で美味しい作物を生産し供給することが、このシステムが循環する上で重要となります。また、食物残渣は食油成分と塩分が多いことが欠点となりますが、アグリクリエイトの特殊技術バイオ・イオン・バランス(特殊発酵溶液)により解決されました。より確かな生産物の安全性を確保するため生産者への技術指導もおこなっています。安全でおいしい生産物を事業所へ供給できるのです。
私の工場では、この日本オーガニック・ネットワークリサイクルシステムに参加された企業の社員食堂や学校、役所、レストランなどから出される食物乾燥残渣の分別と加工をしています。
 この事業に参加して4年が過ぎようとしています。始めは10社余りで、数日に10個ほどしかなかった通い箱と呼ばれる20kg入りのプラスチックケースが、今では毎日宅配便で届くようになり、1日に50個以上来ることも珍しくなくなりました。
工場に届く食物乾燥残渣は、まず分別をします。小石以上の大きい塊や異物を手作業で丁寧に取り除きます。作業をする上では、残さがきちんと分別され乾燥ができているため、いやな臭いや液だれなどの問題がまったくありません。むしろ香ばしい臭いで、多少油っぽいのですが焦げ茶色に乾燥されていてとても扱いやすくなっています。分別は事業所ごとに一つ一つ行い、有機肥料としての品質を落とさないよう必ず人の目と手で注意をしながら行う必要があります。
池田産業の有機発酵ミネラルボカシペレット製造施設
分別された残渣は特殊発酵溶液を添加しペレットにして20kg詰めにします。食物乾燥残渣が有機肥料となって(有)アグリクリエイトさんに引き取られるのです。

えさや肥料として販売される有機発酵ミネラルボカシペレット
排出事業所は廃棄物の減量となり、生ゴミ処理メーカーはこのシステムが付加価値となり、生産者は高品質の有機肥料を手軽に安心して使うことができ、そして食品事業者は安全な有機栽培、減農薬栽培の生産物を購入できるため、この循環はどの分野の企業にとってもメリットがあり、経済的にも独立したシステムです。現在では、家庭の食物残渣が、らでぃっしゅぼーや(宅配野菜販売)のエコ・キッチン倶楽部を通じ送られてくるようになりました。家庭での取り組みにも広がっています。
 企業による食品のリサイクル(再資源化)の実例としてご参考になれば幸いです。
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