EMの蘇生力に惹かれボランティアの環境改善活動を愉しむ
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緑の会の仲間たち
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茨城県取手市は都心への通勤圏として発展してきたが、市の南側には利根川が流れ各所に田畑が残る自然に恵まれた街である。しかし自然が豊なこの街も、人口の増加や人々の生活様式の変化とともに、家庭の生ごみや生活排水に起因する環境汚染が深刻な問題となっていた。 今回ご紹介するところのメ主婦たちによる実践活動モは、「地球を救う大変革」(著・比嘉照夫琉球大学教授)という1冊の本との出会いから始まったと言う。同書は、平成5年秋、船井幸雄氏の紹介によってマスコミに大々的に取り上げられ、ビジネスマンを中心に大きな反響を呼んでいたが、中心メンバーの恒川敏江さんに言わせれば「環境問題に関心を持つ主婦層にも大きな感動を与え、環境改善への期待を持たせる本」でもあった。特に「家庭から出る生ごみは、EMを活用すれば容易にリサイクル出来る」という記述が主婦たちの関心を呼び、「自らの手で生ごみリサイクルを、という主婦たちの実践活動を起す引き金になった」と言う。そして「家庭から出る生ごみをEMで発酵させ、肥料として家庭菜園に活用する」という「NPO緑の会」発足へとつながっていったのである。
生ごみの回収もボランティアで
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堆肥化作業
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平成6年に始まった「自らの手で生ごみリサイクルを」の実践活動は、主婦たちによる普及活動により、今では日本全国で盛り上りを見せている。また、ごみ減量作戦の一環として、EM発酵用バケツ購入費の半額補助という積極的な行政支援も各地で報告されている。しかしながら「最初のうちは、この普及活動も次々と難問に突き当たったのですよ」と恒川さんは言う。最初の難問は「協力したいが、生ごみを従来通り市の回収車に出すのでは意味が無い。」というマンション住民の意見であった。そして普通の主婦グループならここでメ参加できない人は諦めようモと判断しそうなところだが彼女たちは違った。なんと「それなら自分たちで生ごみを回収しよう」と決め、恒川さんがご主人を説得し自家営業用の車を使って生ごみ回収作業(週一回)を始めてしまったというから、まさに行政活動も顔負けの行動力である。その後も、「EM発酵に失敗した生ごみが放つ悪臭苦情への対応」や「雨の日、雪の日の回収作業」、「集まりすぎた生ごみの処理問題」等など、次々と発生する問題を持ち前の行動力で解決しているうちにメ生ごみの堆肥化モが軌道に乗ってきた。恒川さん夫妻を中心とした仲間たちは、「いつしか、生ごみ回収のとりこになっていました」と、皆が笑う。
主婦達の多彩な活躍
主婦を中心とする緑の会の仲間たちは、月一回の例会を持ちながら、実に様々な活動に取り組んでいる。例えば、「アンデス原産の健康野菜・ヤーコン栽培」もその一つ。この係の責任者・唐沢光江さんは、自営の店を切り盛りしながら、ヤーコンの特性や栽培技術などを初歩から勉強し、実践を重ね、今では仲間たちから「ヤーコン博士」とまで呼ばれている。そして彼女はメ料理教室を通してヤーコンの普及に努めるモと共に、「バイタリティ溢れる行動力を生かして、地元の老舗工場に働き掛け、お茶と漬物の製造販売を実現、ボランティア活動の貴重な資金も稼ぎ出しているのです」と、会計責任者が披瀝してくれた。その会計責任者・若林正子さんも「主婦の手習い」と称してパソコン教室に通い、イロハから勉強してついに会計ソフトまでマスターして皆を驚かせたと言う。
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ヤーコンの健康効果を説明する唐沢さん(左)
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また、会のなかでは古参に入る只野恵子さんは、主に学校向けの環境教育の普及モに、大塚アツ子さんはメ米のとぎ汁EM発酵液の普及活動モを通して自宅周りの生活排水浄化に取り組んでいる。この他、「定例会メンバーの皆さんは、会としてのお愉しみ会や各種行事にも積極的に参加してくれています。」と、恒川さんが教えてくれた。まさに、実践家揃いの主婦グループである。
取手市のリサイクルモデル事業に指定
主婦たちを中心にしながら足掛け8年に及ぶ「生ごみリサイクルのボランティア活動」は、取手市長の注目するところとなり、平成12年度にモデル事業化の検討に着手、13年度からは「取手市の循環型社会づくり重点施策の一つ」としてモデル事業に指定され、予算措置も講じられた。また、この「1,000世帯・生ごみリサイクルモデル事業」は、ボランティアの仲間たちに加え、取手市福祉施設の子供たち、取手市シルバー人材センターの仲間たちが参加する協働作業となっており、その活動の様子に、日本全国の自治体やボランティア団体からの視察・見学者が殺到している。
次世代につないでいく活動
ここにみる主婦たちは、既に自分たちのメ現役時代が過ぎ去ろうとしているにも拘わらず、後に続く子供たちの幸せを願い「地球を救う大変革」の著者・比嘉照夫教授が提唱している<成功するまで続けよう>を合い言葉にしながら、身近な環境問題の解決に日々挑戦を続けている。そんな主婦たちの素晴らしい活躍振りを目の当たりにして、こうした活動が全国各地に広がっていけば、この主婦たちの最初の願いでもあるメ幼かった頃の自然を取り戻すことモも、きっといつか、かなうに違いない、と実感した次第である。
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